このブログ内を検索
新しい記事
記事のカテゴリー
                
smtwtfs
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< July 2017 >>
過去の記事
プロフィール
            
コメント
トラックバック
sponsored links
携帯
qrcode
その他
無料ブログ作成サービス JUGEM

『宇宙からの帰還』

宇宙からの帰還
宇宙からの帰還
立花 隆

評価 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です

この本を読むのは、これで確か三度目になります。もう20年以上も前に書かれた本なのに、今でも読むたびに新鮮な刺激と感動があります。この本には、「宇宙体験」をした人々からの重要なメッセージが数多く盛り込まれているので、ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。

現在でも同じことがいえますが、アポロ計画をはじめとするアメリカの有人宇宙飛行は、これまで多くの人にとって、人類の科学技術力の勝利という文脈で受け止められてきたし、巨大プロジェクトのオペレーションやロケット技術など、いわゆる「理系」の視点から報道・解説されることがほとんどです。

しかし、立花氏のこの著作によって改めて気づかされるのですが、有人宇宙飛行や月面着陸とは、生身の人間が地球環境を離れて宇宙に出るということであり、それは人類にとって歴史上初めての体験です。全く未知の環境にじかに接することになった宇宙飛行士は、物理的環境のインパクトはもちろん、精神的にも大きなインパクトを受けたはずです。

立花氏が本書で指摘しているように、NASAは技術者中心の社会で、宇宙飛行士にしても、軍のテストパイロットや科学者の中から選ばれた、「メカニカルなことにしか関心がない技術者タイプ」の人間集団だったそうです。いわゆる「文系」の文化に関しては、知識も関心も薄い人がほとんどでした。

そういう意味では、彼らは技術的な訓練の面では完璧であっても、人間が宇宙に出るということの内面的な意味についてはほとんど何の準備もないままに、いきなり宇宙に放り出されたといってもよいかもしれません。

宇宙飛行士としての多忙な任務のわずかな合間に、宇宙船の窓から、あるいは月面に立って、あるいは宇宙服を着て船外に浮かびながら、彼らは宇宙を見、地球を眺めていました。宇宙飛行士としてやるべきことを忠実に果たす一方で、役割を離れ、一人の人間として宇宙をじかに感じた体験は、帰還後、彼らに様々な形での内省を迫ったに違いありません。

彼らのうち、ある者はキリスト教ファンダメンタリストの伝道者となり、ある者は精神を病み、ある者は精神世界の研究者となり、ある者は政治家となり、多くの者は実業界に転身していきました。

 宇宙体験の内的インパクトは、何人かの宇宙飛行士の人生を根底から変えてしまうほど大きなものがあった。宇宙体験のどこが、なぜ、それほど大きなインパクトを与えたのか。宇宙体験は人間の意識をどう変えるのか。
 そこのところを宇宙飛行士たちから直接聞いてみようと、一九八一年の八月から九月にかけてアメリカ各地をまわり、さまざまの生活を送っている元宇宙飛行士たち十二人に取材してきた結果をまとめたのがこのレポートである。


立花氏の周到な準備と鋭い質問によって、宇宙飛行士たちが今まで同僚にも語ってこなかったような、深い内的体験が初めて語られます。

例えば、ジム・アーウィン氏(アポロ15号)は、月面で自分のすぐ脇に神が臨在しているのを感じたといい、エド・ミッチェル氏(アポロ14号)は月から地球に向かう宇宙船の中で、瞬間的に真理を把握する体験をしたといいます。

それが具体的にどのようなものであったかについては、ぜひ本書を読んでいただきたいのですが、もちろん、一口に宇宙体験といっても、それぞれの人物にとってその解釈は異なり、意識の上での変化も同じではありません。しかし、具体的に彼らの発言を追っていくうちに、やがて共通点のようなものも浮かび上がってきます。

重なる部分、似た部分に着目してならべていくと、彼らの世界観によって一種のスペクトルを作れそうな気がする。そして、その中から、地球人たることの自己認識、調和(ハーモニー)が内在している宇宙、地球上での政治、宗教、思想上の対立抗争の愚しさなどなど、幾つかの共通認識を取り出すこともできそうである。


もっとも、立花氏も述べているように、宇宙に実際に行ったことのない私たちは、宇宙飛行士たちの発言を理論的に総括してしまうよりも、「人間の想像力をはるかに越えた、実体験した人のみがそれについて語りうるような体験」として、個々のインタビューをじっくりと味わうべきなのでしょう。

いつも思うことですが、本書でも立花氏は、宇宙飛行という「理系」の込み入った話を実にわかりやすく、要点をおさえて解説してくれています。また、宇宙飛行士にまつわる周辺事情もくわしく紹介されていて、宇宙飛行士の「内的体験」という本来のテーマ以外に関しても、興味深く読むことができます。

知的興奮を覚えるとともに、これからの人類について考えずにはいられない、非常にスケールの大きな本です。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします


at 20:25, 浪人, 本の旅〜宇宙

comments(0), trackbacks(0)