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『深夜特急〈3〉インド・ネパール』

深夜特急〈3〉インド・ネパール
深夜特急〈3〉インド・ネパール
沢木 耕太郎

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

『深夜特急』の第3巻は、カルカッタからデリーまでの旅を描いています。

バンコクでデリー行きの航空券を書き換えてもらった沢木氏は、カルカッタに飛びますが、偶然出会った日本人に導かれるままに、インド1日目にしてインド世界の衝撃的な洗礼を受けることになります。

その後、カルカッタの混沌に魅せられて街をうろついたり、ブッダガヤ近郊のアシュラムでアウトカーストの子供たちと農作業をともにしたり、長雨のカトマンズで無為に過ごしたり、聖地ベナレスでは焼かれていく死体を見つめたりと、沢木氏の旅のエピソードがぎっしりと詰め込まれているのですが、最もスリリングなのは、ベナレスからデリーまで、旅に病み、半死半生の状態で駆け抜けるところでしょう。

沢木氏は本文中で、自らの病の原因についていろいろと分析していますが、私はこのエピソードが、旅人の中の二つの気持ちの葛藤を象徴しているように思いました。

旅人の心の中では、旅を続けて見知らぬ土地をこの目でもっと見てみたいという前のめりな気持ちと、どこかにしばらくとどまって、その土地をもっとよく知りたいという「沈没」欲求がいつでもせめぎあっているものです。

沢木氏の場合も、酔狂と自分では言いつつも、デリーを出発点としてロンドンまで乗り合いバスで駆け抜けるという最初の計画に結構こだわっていて、早く「スタート地点」に立ちたいという気持ちが彼を西へ西へと強引に引っぱっていく反面、どこかに落ち着いてゆっくりとその街を味わいたいという気持ちもあちこちで顔を出してきます。

最初の経由地である香港で長逗留し、バンコクからシンガポールまで往復し、デリー行きの航空券をわざわざ変更して手前のカルカッタに向かい、カトマンズまで往復したりと、沢木氏はそれを「風に吹かれ、水に流され、偶然に身を委ねて旅する」と称しているものの、別の見方をすれば、それはスタート地点であるデリーに到着することを回避している、あるいは時間かせぎをしているように見えなくもありません。

旅人は誰でもそうなのだと思いますが、あるときは憑かれたように旅を急ぎ、あるときはズルズルと根を生やしたように沈滞し、ギクシャクとしながらも、旅行資金の残りを気にしながら少しずつ前へ進んでいくような、葛藤を抱えながらの旅が、この第3巻ではうまく表現されているように思います。

しかしベナレスで、焼かれ、河に流されていく死体を眺め、「おびただしい死に取り囲まれた」ことで、心の中で何かのスイッチが入ったように、氏はデリーに向けて猛然と前進を始めるのです。

それはまるで、ベナレスに象徴されるインド的な何かから逃げるようでもありました。そして病は、まるで沢木氏を前に進ませまいとするかのようですが、それを命がけで振り切るようにして、氏はようやくデリーにたどり着くのです。

インドやネパールが舞台であるこの巻でも、いわゆる宗教的な匂いやヒッピー的な要素は希薄です。1970年代半ばという時代背景を考えると意外なことですが、本文中や巻末の対談でも触れられているように、沢木氏はそういうものに対しては一線を画したいという気持ちがあったようです。そしてそれがこの本を、多くの人にとって受け入れやすいものにしていることは確かです。

『深夜特急〈1〉香港・マカオ』の紹介記事
『深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール』の紹介記事
『深夜特急〈4〉シルクロード』の紹介記事
『深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海』の紹介記事
『深夜特急〈6〉南ヨーロッパ・ロンドン』の紹介記事


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 20:03, 浪人, 本の旅〜インド・南アジア

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