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『深夜特急〈4〉シルクロード』

深夜特急〈4〉シルクロード
深夜特急〈4〉シルクロード
沢木 耕太郎

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

『深夜特急』の第4巻は、インドのデリーからイランのイスファハンまでの旅を描いています。インドから、パキスタン、アフガニスタン、イランへとまたたく間に駆け抜けていく、疾走感あふれる巻となっています。

ちなみに、パキスタンのペシャワールからカイバル峠を越えてアフガニスタンのカブールへ、そこからカンダハル、ヘラートを経由してイランのメシェッドに抜けていくルートは、現在では通常の旅行者の通れない危険地帯になってしまいました。

沢木氏の旅した1970年代当時は、このルートがヨーロッパとインドを陸路で結ぶヒッピーたちの幹線ルートになっており、シルクロードならぬ「ヒッピーロード」と化していたことが、本書を読むとよくわかります。そして「ヒッピーロード」自体は、アフガニスタンが通行できなくなった今でも、インド、パキスタン、イランを直接結ぶルートや旧ソ連の中央アジア諸国を経由するという形で健在のようです。

『深夜特急』の一応のテーマは、デリーから乗り合いバスでロンドンまで行く、ということなので、第4巻にしてようやく本題にはいったわけです。一旦ヨーロッパ諸国に入ってしまうと、金の問題を別にすれば、旅の困難度はかなり軽減されるはずですから、乗り合いバスの旅で一番面白い部分はインドからトルコあたりまででしょう。

そう考えるとこの第4巻が、旅の一番のハイライトとなるはずなのですが、読んでみるとどうもあまりパッとしない感じがします。

確かにデリーからペシャワールまで、カブールからテヘランまでの、ひたすらバスを乗り継いでの連日の疾走ぶりは、『深夜特急』というタイトルにふさわしいものですし、ペシャワールの映画館で思わぬ災難に遭った話や、イランに入ってからテヘランまで乗った「ヒッピー・バス」での奇妙な連帯感など、面白いエピソードも随所にちりばめられているのですが、今一つ盛り上がりに欠けるような感じがするのです。

それは、沢木氏自身がところどころで述べているように、旅のテクニックに慣れてそれが当たり前になり、感動もすり切れ始め、いわゆる「旅ズレ」してきたことによるのかもしれないし、出発から半年以上が経って、旅の疲労が蓄積してきたこともあるのかもしれません。

これは私の個人的な解釈ですが、沢木氏が日本にいるときは、誰もやらないような酔狂な発想だと思っていたデリーからロンドンまでの乗り合いバスの旅が、実際に始めてみると欧米人のヒッピーにとってはそれほどめずらしくもない、「常識的ルート」であったことも原因の一つかもしれないという気がします。

もちろん旅立ちの個人的な動機としては、沢木氏もそれぞれのヒッピーも色々と違う理由をもっていたのでしょうが、実際の行動となると、結局多くの旅人がヨーロッパとインドを結ぶ「ヒッピーロード」に殺到してくるわけです。

沢木氏としては、一線を画したい気持ちのヒッピーたちと宿でもバスの中でも毎日のように顔を合わせるのは、少々憂鬱だったかもしれません。そして、そう思いながらも結局は同じようなスタイルの旅を続け、自分自身が少しずつヒッピーと化し始めていることに、自己嫌悪を感じたのではないでしょうか。

もちろん、カブールでの「沈没」体験やヒッピー・バスでのエピソードなどを読むと、沢木氏もヒッピー的なものに対し、全くの嫌悪感を持っているわけではないことがわかります。彼らの生き方に対し、多少の共感は感じつつも、自分もまた同じように「崩れ」ていくことに対しては恐れを感じていたということなのかもしれません。

そして、彼らヒッピーにとって「楽しい旅の終わり」と「重い現実の日々の再開」を意味するヨーロッパへの帰還が、自由を求める沢木氏にとっての旅の目的地であったというのも、何か皮肉なものを感じさせます。

この巻には、ロンドンに向けての新たなる出発という意味合いとは裏腹に、旅の疲れが濃厚に漂っています。その雰囲気は読んでいて決して楽しいものではありませんが、長旅の経験者ならそのリアリティに深くうなずけるものがあると思います。

『深夜特急〈1〉香港・マカオ』の紹介記事
『深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール』の紹介記事
『深夜特急〈3〉インド・ネパール』の紹介記事
『深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海』の紹介記事
『深夜特急〈6〉南ヨーロッパ・ロンドン』の紹介記事


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 20:30, 浪人, 本の旅〜ヨーロッパ・中東

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