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『旅で眠りたい』

旅で眠りたい
旅で眠りたい
蔵前 仁一

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

この本は、バックパッカー向けの雑誌「旅行人」の主宰者である蔵前氏が、1989年から2年半にわたって、夫婦でアジアとアフリカを巡った長い旅の前半部分、東京から南下して沖縄へ向かい、台湾、香港、タイ、インド、パキスタン、イランと移動し、トルコのイスタンブールにたどり着くまでを描いています。

今までに私が読んだ蔵前氏の本は、旅先で出会った面白い人々や、ちょっとした事件などを、2〜3ページの文章でユーモラスにまとめ、独特のホンワカとしたイラストを添えているというものでした。

いわば旅のスナップ写真という感じのものですが、軽いタッチの文章でありながら、旅の恐ろしいところもさりげなく表現されていて、書き手の旅人としての経験の厚さをうかがわせるものがありました。

私も旅をしたことがあるので、蔵前氏が実際にどういう旅をしているのか、その舞台裏をもっと知りたいと思っていたのですが、氏の他の本のような、旅の断片的なエピソードを読むだけではわからないことも多くありました。

この本では、旅に出かける前の段階から始まって、約1年の旅の日々を順を追って描いているので、例えば、旅のルートをどのように決めていくのか、それぞれの町にどのくらいの期間滞在しているのか、旅先での「事件」はどのくらいの頻度で起きているものなのか、といったことがよくわかります。

内容的には、いわゆる「アジア横断もの」ということになるのでしょうが、一昔前のような、長い旅に出るにあたってそれなりの大義名分を必要とした時代と違って、その気になれば誰でも海外旅行ができるようになった1980年代以降の雰囲気を反映しているのか、あまり肩ひじ張らず、気軽に旅を楽しんでいます。

氏は遺跡が好きということで、観光名所もそれなりに丁寧に周っているのですが、読んでいても、「どうしてもここは見ておきたい!」という執着心のようなものは感じられません。体調や状況次第では、有名どころの名所もあっさりあきらめてしまったりします。

この本から浮かび上がってくるのは、そういう観光的な旅よりも、旅先の町で「沈没」し、特に目的もなく街をブラブラしたり、旅先で会った人たちと情報交換や世間話を楽しみ、のんびりと旅の日々を楽しんでいる、いわばバックパッカーたちの日常生活です。

それは本文にもあるように、いつも平穏無事なわけではありません。長距離の移動で疲れ果てたり、不潔な宿で一夜を明かす羽目になったり、時には病気で安宿のベッドから動けなくなったりすることもあります。

しかし、そうした苦痛もすべてひっくるめて、蔵前氏が旅の日々を味わい、それぞれの国に住む人たちや旅行者との出会いを楽しみに旅を続けていることが、しみじみと伝わってくるのです。

有名な沢木耕太郎氏の『深夜特急』と比べると、約1年という旅の期間も、移動した国々も似ていますが、沢木氏の旅行記がドラマティックな展開や疾走感、人生と旅を結びつける独特の思索にあふれているのに対し、蔵前氏のこの本は、劇的展開というよりは日常感にあふれ、まったりと停滞し、何気ない旅先の風景や人々との会話からかもしだされる旅の実感をじっくりと味わっているような感じがします。

ただ、旅の描写が同じような雰囲気で淡々と進んでいくので、旅行記というものに冒険的なエピソードや、衝撃的な異文化の発見や人間ドラマのようなものを求める人は、読んでいて盛り上がりに欠けると感じるかも知れません。

「沈没系」の旅人や長旅の経験のある人、実際にアジア横断の旅をした人、あるいはバックパッカーたちが海外でどんな暮らしをしているのか知りたいという人にはお勧めできる本です。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 20:13, 浪人, 本の旅〜世界各国

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