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『雪豹』

雪豹
雪豹
ピーター マシーセン, Peter Matthiessen, 芹沢 高志

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

数年前、私がカトマンズに滞在していた頃、タメル地区の本屋の店頭には、この本の原書“THE SNOW LEOPARD”がズラッと並べられていたものです。欧米のトレッカーや旅行者の間ではかなりの人気作品なのでしょう。それから何となく気になっていたのですが、今回ようやく読むことができました。

1973年の9月、著者のマシーセン氏は動物学者のジョージ・シャラー氏とヒマラヤアオヒツジの生態を調査するため、ネパール西部の秘境、ドルポ地方に向かいました。彼らには、「大型のネコ科のなかでももっとも希少で、もっとも美しい」、神秘に包まれた動物である雪豹を一目見たいという動機もありました。

ネパールの秘境といえば、NHKの「やらせ事件」で有名になったムスタンを思い浮かべますが、ドルポはそのさらに西に位置します。2人は、シェルパ数名と多数のポーターからなるキャラバンを組んで、ポカラから徒歩でヒマラヤ山脈を越え、チベット高原の聖地、クリスタル・マウンテンを目指します。

途中、一行は、断崖に細々と続く危険な悪路や、苦しい峠越えはもちろんのこと、モンスーンの雨やポーターの確保という問題にも振り回されます。

本文は旅日誌のスタイルで書かれており、数々の障害に悩まされながらも、彼らが一日一日着実に、じりじりと目的地に近づいていく様子が克明に描かれています。同時に、マシーセン氏自身の長年にわたるスピリチュアルな探求と妻の死について語られ、この旅が彼にとって、動物の生態調査にとどまらない、いわば巡礼の旅とも呼ぶべきものであることが、少しずつ明らかになっていきます。

クリスタル・マウンテンで2人が雪豹を見ることができたのか、ここではあえて書かないでおきます。しかし、マシーセン氏にとってもっと重要だったのは、この困難な旅のさなかに出会った不思議な人々でした。その深い意味は、2カ月にわたる旅も終わり近くなってようやく明らかになり、最後は不思議な余韻を残して終わっています。

希少な野生動物の生態記や、秘境の探険記のようなものを期待して読むと、期待はずれに終わるかもしれません。この旅の本質は「巡礼」であり、いわゆるニューエイジや宗教に関する記述にあふれているので、その方面に興味のある人でないと、この本を読み通すのは苦しいでしょうし、微妙な形で示される最後の「オチ」も味わえないかもしれません。

一方で、いわゆるスピリチュアルな方面に関心のある人にとっても、本文を読んでいると、ところどころ首をかしげるような箇所が見受けられるかもしれません。これについては、この本がいわゆる宗教の専門書ではなく、魂の旅を続けるひとりの人間による内面の記録であり、ある時点における個人的な理解や内面の葛藤を、正直につづったものだと解釈するべきだと思います。

30年前の1970年代という時代を考えると、チベット仏教や禅について、きちんとした形で語られること自体がまれであり、現在のように文献による知識や「修行」の機会にも恵まれていなかったことを思えば、マシーセン氏が当時、このような構成の著作を世に問うたこと自体が、冒険的試みだったはずです。そういう意味で、この作品は70年代当時の記念碑的な著作といえるでしょう。

ヒマラヤの風景の具体的で細密な描写は、読んでいると目の前にその光景が広がってくるようです。ドルポ、ヒマラヤに対する、著者の深い思いが感じられる作品です。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします


at 21:23, 浪人, 本の旅〜チベット

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