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旅の名言 「金がないなどと……」

私は旅に出て以来、ことあるごとに「金がない」と言いつづけてきたような気がする。だが、私には少なくとも千数百ドルの現金があった。これから先の長い旅を思えば大した金ではないが、この国の普通の人々にとっては大金というに値する額であるかもしれない。私は決して「金がない」などと大見得を切れる筋合いの者ではなかったのだ。


『深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール』 沢木 耕太郎 新潮文庫 より
この本の紹介記事

これはバックパッカー旅行記の名作『深夜特急』の、タイでのエピソードです。いわゆる開発途上国を旅する人なら誰もが直面するジレンマを直截に表現しています。

『深夜特急』の旅は1970年代のことで、沢木氏の旅の資金である千数百ドルを現在の価値に直せばけっこうな金額になるでしょう。それでも彼が計画していた長い旅の期間や、最終的にヨーロッパの旅でかなりの金を使うことを考えれば、アジアの旅では支出をできるかぎり切り詰める必要がありました。

旅人の立場からすれば、宿代と貧しい食事に充てるだけで精一杯です。余計な遊びに金を使う余裕など一切ないわけで、その意味で自らに対して「金がない」というのは正しいのです。

しかし、現地の人からすれば、バックパッカーというのは仕事もしないで好きなことをして暮らしていて、ぜいたくにも飛行機に乗ってやってきて、毎日ブラブラと遊んでいる「金持ち」にしか見えないかもしれません。

しかも、これはバックパッカーに共通していえることでしょうが、彼らの姿を先入観なしに観察したとしても、若くて人生経験もあまりなさそうで、旅のはっきりした目的があるようにも感じられない、何とも宙ぶらりんな雰囲気を漂わせているように見えるはずです。

要するに「いい若いもんが、何にもしないでブラブラしている」ようにしか見えないかもしれないのです。、現地の、特に同世代の若い人が、先進国の「お坊ちゃま」「お嬢ちゃま」に対して反感を抱くかもしれないとは容易に想像できるし、私も現地の人から、もしも面と向かってこのような非難をされたら、どう答えていいか、言葉に詰まってしまうのではないかと思います。

理屈の上で、いわゆる南北問題を持ち出したり、国際経済の用語を並べ立てたりしても、目の前に存在する厳然たる富の格差は何も解決しないし、いくら言葉で説明しても、自分の立場を正当化できるようには到底思えないのです。

自分としては自らを金持ちだと思ってもいないし、ケチケチとした毎日を送っているのに、周りからは金持ちに思われてしまう、そして場合によっては、金持ちらしい豪勢なふるまいを期待されてしまう、という状況はつらいものです。

しかし、言うまでもないことですが、開発途上国を旅するにあたって、為替レートの関係で安く旅ができるということは、旅の魅力の一つです。むしろこれが旅の一番の動機になっているかもしれません。そういうことを充分に承知した上で旅の予算を組んでいる以上、我々は経済格差を利用しているのであって、この問題に対しては確信犯的なところがあるのです。

いくら旅先でケチケチしてみても、現地の人から、しょせんは「金持ちの貧乏ごっこ」にすぎないと言われたら、私には返す言葉がありません。

この問題に対して、私にはこれといった解決は思いつきませんが、かといって、非難を恐れて旅を自粛しようとも思いません。私としては、沢木氏の言うように、金がないなどと大見得を切れる筋合いの者ではないことを自覚し、ジレンマを抱えながら旅を続けることしかできないように思います。

皆様は、いかがお考えでしょうか?


『深夜特急』の名言

at 20:01, 浪人, 旅の名言〜衣食住と金

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