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『龍と蛇(ナーガ)―権威の象徴と豊かな水の神』

龍と蛇(ナーガ)―権威の象徴と豊かな水の神
龍と蛇(ナーガ)―権威の象徴と豊かな水の神
那谷 敏郎, 大村 次郷

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

これはなかなか異色の写真集です。

中国から東南アジアを経てインドにいたるまで、各国の多彩な民族文化の底流には、水の神としての蛇という共通したモチーフがあります。中国文化圏ではそこから竜(龍)のイメージが派生し、インドのドラヴィダ系文化圏ではナーガ(蛇神)となったと考えられているのですが、それらは国境や文化を越えて大きく広がり、両者が重なり合っているところもあります。

中国の皇帝の権威を象徴する故宮の龍の文様、香港やラオスにおける竜船競漕、ロケット花火の黒煙を昇竜に見立てたラオスの雨乞いの儀礼、ナーガのイメージに埋め尽くされたアンコールの遺跡群、ナーガの首飾りをつけたネパールの生神クマリなど、大村次郷氏による美しい写真と、那谷敏郎氏の簡潔な解説によって、各地のカラフルな民族文化が紹介されています。

この一冊で、インド以東のアジア全域の「蛇文化」を俯瞰することができます。そしてそこに、この地域に共通する「水と蛇」というモチーフが、くっきりと浮かび上がってくるのです。

巻末では、インド以西の中近東からヨーロッパ、また新大陸や日本において、竜と蛇のイメージが神話や物語にどのように表れているかが概観されていて、こちらも非常に参考になります。

有名なところでは、旧約聖書の楽園の奸悪な蛇や悪竜レヴィアタン、新約聖書の黙示録に登場する竜、ギリシャ神話では、凶悪なテュポン竜、頭髪がすべて蛇のメドゥーサ、自分の口で尾をくわえ円環となるラドン蛇(ウロボロス)、ゲルマン人には「ジークフリートの悪竜退治」の物語などがあり、西欧では全般的に竜・蛇に関してのネガティブなイメージが多いのですが、ギリシャ神ヘルメスの杖に巻きつく蛇が「素早さ」や「知恵」を象徴するようなケースもあります。

また新大陸でも、アステカの翼蛇神ケツァルコアトルをはじめ、神々の体系の中に多くの蛇が表れてきます。そして日本においても、神話中のヤマタノオロチをはじめ、蛇のイメージには事欠きません。有名な能楽の「道成寺」でも、僧侶に調伏される鬼女は蛇体をしています。

本文とこの巻末の解説を合わせると、世界各地の民族文化に表れた蛇のイメージをひととおり網羅していることになり、「世界の蛇文化」を一望するのに大変便利です。

私は非常に興味深く読んだのですが、一般的には「アジアにおける蛇」というテーマに興味を持つ人はあまりいないと思うので、かなり地味でマニアックな趣向の本だと思います。これは大村次郷氏の写真による「アジアをゆく」というシリーズ中の一冊で、美しい写真と丁寧なつくりの本なので、この分野に関心のある人にはおすすめしたいと思います。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 19:28, 浪人, 本の旅〜世界各国

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