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『ダンボールハウス』

ダンボールハウス
ダンボールハウス
長嶋 千聡

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

これは、いわゆる「ダンボールハウス」、つまりホームレスの人々が雨露をしのぐために、手近にある材料を使って短時間で作り上げた小屋について、建築という観点から詳細に調査した異色な本です。

大学で建築学を専攻していた長嶋千聡氏は、名古屋市の中心部でホームレスの人々が建てていたダンボールハウスに興味を抱き、卒業論文のテーマとして研究することにしました。

彼らとあいさつを交わすところから始め、ゆっくりと人間関係を築いた上で、どうやって家を建てるのか、どこから材料を手に入れているのか、限られた空間でどう暮らすのかといった点を直接インタビューし、家の撮影・スケッチ・採寸を行なうなど、詳細な調査を行なっています。

本書は3年近い年月をかけ、延べ70軒のダンボールハウスを調査した結果で、38軒分のスケッチとそれぞれの家の紹介、家主のキャラクターや生活などが簡潔に記されています。

「ダンボールハウス」という言葉からは、地下街などで時々見かける、純粋にダンボールだけを用いて作られたその場しのぎのシェルターを想像してしまいますが、実際にこの本で取り上げられているのは、土台にはパレットを、骨組みには角材を用い、壁や屋根としてベニヤやビニールシートを使った、かなり本格的な「家」です。調査報告を読むと、手入れをしながらそうした家に数年以上住んでいる人もいることがわかります。

そして、何十軒ものダンボールハウスのスケッチを見ていくうちに、それぞれが「顔」ともいうべき独自の形と表情をもっていることに気づかされます。基本的な材料と構造は共通であることが多いのですが、手に入れられる資材の制約、地形上の制約、周囲の環境、家主の生活スタイルや考え方によって、外観も内部も個性的に「進化」した跡がうかがわれます。

また、夏になって蒸し暑ければ、カッターで壁をくりぬいて窓を作ったり、スペースが足りなくなれば、壁や天井に収納場所を作り出したり、家自体を「増築」してしまったりと、家主の工夫によって、家の各部分が日々変貌していくのです。

それはギリギリの条件の中で、少しでも居住環境を向上させようとする住人の知恵の結果なのですが、環境に促されるようにして日々変化していくその姿は、まるで生き物のようです。

この本を読んでいると、何だか不思議にワクワクしてきます。不謹慎かもしれませんが、子どものころ夢中になった「秘密基地ごっこ」を思い出します。もちろん、子どもの遊びなら、無邪気に遊んだあとは、温かい食事と家族の待つ快適な家に帰れるのですが、ダンボールハウスしかない人々の現実は、そんな生易しいものではありません。

それでも、人々が限られた材料と知識を駆使して、まずは雨露をしのぎ、湿気や暑さ・寒さ、蚊の襲撃などに悩まされながらも、少しずつ自分好みの家にカスタマイズしていく様子を見ていると、人間のたくましさと、生きることのささやかな喜びが伝わってきて、何だかエネルギーをもらったような気がするのです。

愛知万博の開催を控えた2004年、名古屋の公園のダンボールハウスは次々に撤去されてしまい、本書に登場する家々は、もはやこの本のスケッチの中でしか見ることはできません。皮肉なことではありますが、ホームレスのおじさんたちによる個性的な建築の数々は、この本を通じて末永く記憶されることになったのでした。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします


at 20:19, 浪人, 本の旅〜住まい

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