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旅の名言 「やがてこの旅にも……」

 旅がもし本当に人生に似ているものなら、旅には旅の生涯というものがあるのかもしれない。人の一生に幼年期があり、少年期があり、青年期があり、壮年期があり、老年期があるように、長い旅にもそれに似た移り変わりがあるのかもしれない。私の旅はたぶん青年期を終えつつあるのだ。何を経験しても新鮮で、どんな些細なことでも心を震わせていた時期はすでに終わっていたのだ。 (中略)
 私の旅がいま壮年期に入っているのか、すでに老年期に入っているのかはわからない。しかし、いずれにしても、やがてこの旅にも終わりがくる。その終わりがどのようなものになるのか。果たして、ロンドンで《ワレ到着セリ》と電報を打てば終わるものなのだろうか。あるいは、期日もルートも決まっていないこのような旅においては、どのように旅を終わらせるか、その汐どきを自分で見つけなくてはならないのだろうか……。
 この時、私は初めて、旅の終わりをどのようにするかを考えるようになったといえるのかもしれなかった。


『深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海』 沢木 耕太郎 新潮文庫 より
この本の紹介記事

またまた『深夜特急』からの名言です。

既にバックパッカーのバイブルとなった感のある『深夜特急』ですが、この本は「旅の名言」の宝庫でもあります。

沢木耕太郎氏は、1970年代にユーラシア大陸を乗り合いバスで駆け抜けた自らの旅を振り返り、そのディテールを丹念に追いながらも、同時に、旅そのものについても思考を展開しています。

文庫版『深夜特急』の5巻目では、旅の舞台がヨーロッパに移り、旅の終わりが見えてきたせいか、内容はさらに内省的になっていきます。執筆にじっくりと時間をかけながら、旅の本質を端的に言葉で表現しようとする沢木氏の挑戦が、私たちの心に響く名言の数々を生み出したといえるのではないでしょうか。

旅を人生に例えることは昔からの「定番」で、つい先日も某サッカー・プレイヤーが「人生とは旅であり、旅とは人生である」とネット上で発言して大きな話題になりました。

沢木氏の場合、旅に出た当初は「旅を人生になぞらえるような物言いには滑稽さしか感じなかったはず」でした。言葉というものに特に敏感な人間として、伝統的に繰り返されてきた表現や定番の物言いに、何か腐臭のようなものを感じてしまうのでしょう。

しかし、自らの長い旅を通して、彼もまた、改めて先人の言葉の意味するところをしみじみと感じたのではないでしょうか。

旅と人生を結びつけるとき、共通の特徴として見えてくることの一つは、ともに初めと終わりがあり、その間の限られた時間の中で、ものごとが次第に変化し、成熟していくということです。人生と同じように、旅も壮年期・老年期を迎え、やがて終わりがやってきますが、生活のすべてを巻き込んだ長い旅の終わりは、その場の思いつきで簡単に決められるような単純なものではなくなっています。

人生における「死」がそうであるように、本当に深く自らの旅を考えるなら、旅そのものの成り行きに従いつつも、それをいつどんな形で終えるかという「汐どき」を、心の底から納得できるような形で見い出さなければならないのです。そしてそれは、旅の資金も残り少なくなった時、大変な難問となって沢木氏にのしかかってきたのでした。

彼がその難問をどう乗り越えたのか、その結末は第6巻に書かれています。もちろんそれは、彼自身の旅に対するオリジナルの解決であって、状況の異なる他の人がそのままマネできるものではないし、そうする意味もないと思います。

しかし、旅と人生を重ね合わせ、自らの心にほんとうの気持ちを尋ねながら、旅の終わりにふさわしい時と場所を真剣に探求する沢木氏の姿勢に、旅の先達として、私は尊敬の念を覚えます。

『深夜特急』を読んでいると、心の中にある冒険心をくすぐられますが、この本は子供の頃にワクワクしながら読んだ冒険物語にも似て、どこか神話的な懐かしさを漂わせています。現実の旅はもっとゴチャゴチャと混乱しているし、それほどドラマチックでもなかったりするのですが、この本は旅の一つの理想形を描いたものとして、これからも若い人々の「旅の手本」であり続けるような気がします。


『深夜特急』の名言

at 19:40, 浪人, 旅の名言〜旅の終わり・帰還

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