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青海チベット鉄道(青蔵鉄道)の光と影

1月2日夜9時からのTV番組、NHK総合「青海チベット鉄道〜世界の屋根2000キロをゆく〜」を見ました。

確か、以前にテレビ朝日の「報道ステーション」でも青蔵鉄道の特集があって、断片的な映像を見た記憶がありますが、今回の番組は、青海省の西寧を夜出発し、翌日夜にラサに到着するまでの約26時間の鉄道の旅を、沿線上の見どころと共に順を追って紹介するものです。

正月のゴールデンタイムに、青蔵鉄道の話題のみで一時間半もの時間をとるのは破格の扱いです。どんな凄い取材内容なのかと気になりました。また、私はゴルムド〜ラサ間のルートを旅したことがないので、どんな沿線風景なのか知りたいということもあって、見てみることにしたのです。

列車ダイヤの都合上、西寧〜ゴルムドの区間と、終着駅ラサまでの数時間は車窓が夜の闇に包まれてしまうので、観光的な見どころとしてはゴルムドを出発してから日没までの間ということになります。番組では鉄道建設や客車のハイテク技術の話題も織り込みながら、崑崙山脈の5000メートル級の峠越え、ココシリ自然保護区の野生動物、長江源流、車窓から見える湖、遊牧風景などを紹介していました。

ちなみに、この鉄道の旅については、風の旅行社のウェブサイトに写真家の長岡洋幸氏による詳細なレポートが載っているので、TVで見逃した方はそちらをご覧下さい。

鉄道ファンや旅好きの人にとってはそれなりに楽しめる内容だったと思うのですが、残念なのは、チベット高原の荒涼として雄大な風景のパノラマ感が、TVの画面では到底表現しきれないことと、冷たく薄い大気が体に作用する独特の感覚がないので、チベットを旅しているという臨場感が伝わってこなかったことでした。しかし、これはもちろんNHKの責任ではありません。

私が引っかかったのは、この番組では、青蔵鉄道のテクノロジーや自然環境への配慮、旅の素晴らしさの紹介に全ての焦点が絞られてしまっていて、そもそもなぜ西寧〜ラサに鉄道が敷かれたのか、その政治的な意味や、チベット人がこの鉄道をどう見ているかについて、ほとんど全く触れられていなかったことでした。

以前にこのブログの記事「中国のチベット旅行ブーム」にも書きましたが、私は個人的にはチベット人に同情的なので、NHKの番組では(あえて?)触れられていない、この鉄道のもつ別の側面がどうしても気になってしまうのです。

もちろん、そういう観点を持ち込めば、いわゆる紀行番組の枠組みを外れることになるでしょう。また、取材に全面的に協力してくれたであろう中国当局への配慮もあったはずです。そのような事情は分からなくもないのですが、1時間半もの時間をかけて青蔵鉄道を丁寧に紹介しているだけに、チベットの現代史やこの鉄道がもつ意味について、もう少しつっ込んだ内容があってもよかったのではないでしょうか。

ただ、一方で、私の個人的な思い入れから、いわゆる「チベット問題」に言及するとき、少数民族であるチベット人の立場に立つ傾向があることは自覚しているつもりです。そうした視点からこの鉄道について考えていると、つい善悪や被害者・加害者の二元論で判断してしまいがちになりますが、それも行き過ぎれば現実を見誤ることになるでしょう。

番組では、この鉄道を利用して新しいビジネスを始めようとする、漢人やチベット人の姿が紹介されていました。また、小さなビニール袋一つだけを持ってチベットに働きにやって来たという少年の姿も印象に残りました。

人々は国家の思惑と同じ方向で動くこともありますが、時にはそういう思惑を超えて、国家が作りあげたインフラを、自分たちのために利用し尽くそうとするしたたかさも持っています。チベット人も、もしかすると、この鉄道によって一方的に北京からコントロールされる立場になるわけではないかもしれません。中にはこれを一つのチャンスと見てうまく立ち回り、しぶとく生き延びていく人物も現れるのではないでしょうか。

NHKの番組を通じて、西寧〜ラサの旅が具体的にどんな感じであるかは、知識として十分に伝わってきました。個人的には風景の美しさや旅の情報以外のことも気になるので、この鉄道がチベットをどう変えていくのか、それはそこに生きる人々の幸せにつながるのか、これからも注意深く見ていたいと思います。

at 19:09, 浪人, 地上の旅〜チベット

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