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インドにもついにスーパーマーケットが……

1月29日夜のNHK総合「NHKスペシャル インドの衝撃 第2回 11億の消費パワー」を見ました。インドの社会は、かつてはごく少数の富裕層と圧倒的多数の貧困層で構成されていたのですが、現在「中間層」と呼ばれる消費の担い手が激増しつつあり、彼らをターゲットにした欧米諸国からの消費文化がインドを席巻しようとしています。

番組では、中間層の人々の暮らしぶりや、インド全土に出店攻勢をかけるスーパーマーケット・チェーン、韓国メーカー優位のエアコン市場に食い込もうとする日本の家電メーカーの動きなどが紹介されていました。

内容的には、ここ数年、経済番組などで断片的に紹介されていた「次の巨大市場はインドだ!」的な話題を集大成したもので、特に目新しさはないのですが、インドの地方都市に開店したスーパーに地元のインド人が怒涛のように押し寄せる映像を見ていると、「ついにインド中にスーパーが出店するような時代になったのか」と、非常に感慨深いものがありました。

数年前、私がインドを旅していた頃は、東南アジアとは違って、スーパーマーケットを見かけませんでした。もちろん大都市には、日本の地下街の照明をさらに暗くしたような雰囲気のショッピング・モールはあったのですが、それぞれの店舗は個人経営で品揃えも少なく、価格は交渉で決まる部分も大きかったし、何よりも、外国人の私の眼で見て、欲しいと思うようなモノがありませんでした。

またある時、知り合いの人にニューデリーの新興住宅地域を案内してもらい、当時は非常に目新しかった「スーパーマーケットもどき」のような店で日本メーカーのカップラーメンを買った経験もあるのですが、何だか店の中が薄暗くて、スーパーというより雑貨屋のような感じでした。

バックパッカーとして旅をしていると、歴史のある古い町につい足が向きがちになるし、町ではダウンタウンに位置する安宿街に泊まることになるのですが、そういう地域では昔ながらの生活の雰囲気がそのまま残っていて、コンビニはおろか、スーパーなど見かけることすらありませんでした。

「インド人は商売上手なはずなのに、なぜ欧米の商売をマネしないのだろう? スーパーがあれば、外国人旅行者だけではなくて、インド人にとっても便利なはずなのに」と、旅行中何度も不思議に思いましたが、一方で私自身が、むしろそういうものの存在しない「インドらしさ」を求めて、不便そのものを楽しむような旅をしていたことも事実です。

しかし、当時すでに衛星放送を通じて、欧米流の派手な消費文化が流れ込みつつあるのは充分に感じていました。インド中の屋根にパラボラアンテナが林立し、何億人ものインド人が、テレビを通じて毎日提供される華やかな生活スタイルに触れていたのです。

その映像は、インドの旅暮らしに慣れてしまった私の眼には挑発的と映るくらいで、文字どおり手を替え品を替え、モノを所有する欲望を刺激的に煽っていました。もっとも、地方都市に住む人々にとっては、最近までそうした生活スタイルの実物に出会うことはほとんどなかったでしょうが、頭の中では豊かな生活の具体的なイメージを毎日反芻していたに違いありません。

地方都市のスーパーに押し寄せる人たちにとって、明るくて清潔なスーパーマーケットの出現は、テレビを通じて何年もひたすら反芻し続けてきた豊かさのイメージが、今まさに現実化しつつあることの象徴なのでしょう。スーパーの商品の海の中を泳ぎまわれば、今までは漠然としていた「豊かさ」という概念が、自らの手で触れたり所有したりすることのできるモノとして、すぐ手の届く範囲にあるのです。

一方で、そういう消費社会到来の喜びの時期を通過して久しく、消費社会の光も影も見てきた人間の一人として、私個人としては、番組を見ながら「インドよ、お前もか……」という気持ちになったことも事実です。

何だか非常に虫のいい話ですが、中国はともかく、あのガンジーを生んだインドだけは、私たちとは異なる、もっとまっとうな社会への道を歩むのではないか、という変な期待も心のどこかにあったからです。それが、結局こうしてアメリカや日本と同じような道を歩みつつあることに、何となく幻滅を感じているのです。

番組の中でも、インド人の間に、ガンジー思想をもう一度見直そうという動きがあると紹介されていました。しかし彼らは少数派であり、考えるまでもなく、インド人の圧倒的多数はもっと豊かになりたいのです。そのためにインド自体が変わっていくのは当然だし、消費社会化が進む動きも止められないでしょう。いわゆる先進国の人間が、自分たちの今までの行状を棚に上げて、インドだけに禁欲的で堅実な文明を期待するなら身勝手な話です。

最後に、これは番組のテーマからして仕方がないのかもしれませんが、インドの経済発展の見通しを語るアナリストたちの鼻息の荒さも少し気になりました。少し考えてみるだけでも、インドがこれから経済的に発展していく上で、カースト制度とそれに伴う職業意識のギャップ、役所の官僚主義や腐敗、ヒンズー教とイスラム教の対立を始めとする宗教・言語・文化のギャップ、巨大な貧富の差とそれに伴う識字率の低さなどが大きな障害となる可能性があります。

アナリストがそれらを考慮に入れていないことなどあり得ないと思いますが、彼らの強気の見通しは、あくまで予測の一つにすぎません。インドの人々が前途に待ち受けるハードルをうまく乗り越えていけるかどうかは、その時が来るまでよく分からないのです。

インド好きの一旅行者として勝手なことを言わせてもらえるなら、これからインドの経済発展がどうなるにせよ、強烈で、ゴチャゴチャしていて、変な人物やガンコな人間が伸び伸びと生きていて、牛や野良犬が街中を歩いていて、みんなお節介でおしゃべりな、旅人をワクワクさせるワンダーランドとしての「インドらしさ」だけは、いつまでも失わないでいてほしいと思うのですが……。

at 18:57, 浪人, テレビの旅

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専門家や海外ジャーナリストのブログネットワーク【MediaSabor メディアサボール 】, 2007/11/08 9:37 AM

<記事要約>  インドの都市部では、近年、スーパーマーケットの進出がめざましい...