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『マンゴーが空から降ってくる―タイの田舎に暮らすということ』

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

アジアの辺境を旅していると、ときどき居心地のいい小さな町に「沈没」してしまうことがあります。何をするでもなく過ごしながらずるずると長居し、旅人同士のおしゃべりを楽しんだり、近所を散歩したり、おいしい食堂や食べ物を探してみたりという毎日を送るのですが、そんな時ふと戯れに、その町に住みついた自分の姿を想像してみることもあります。

私の場合はいつも想像してみるだけで、実際に住むところまではいきませんでしたが、この本の著者である水野潮氏は、二十代の初めに一年ほどヨーロッパを旅した後、たまたま立ち寄ったタイのチェンマイにハマり、何度か通ううちにタイ人と結婚して、タイ最北部の町チェンライ郊外の農村に住むようになりました。

バンコクやタイの地方都市ならともかく、農村に住むという選択をした日本人はとてもめずらしいのではないでしょうか。彼は実際にそこに十数年にわたって住み続け、本書では、タイ北部農村の生活を定住者の視点から描いています。

この本の内容は多彩です。隣の家のダメ息子の行状、モノノケに憑かれた隣の婆さん、加持祈祷師によるまじない療法(パオ)の様子、村で起きた事件など、近所に住む「濃い」キャラクターの村人たちが織りなす日常生活のエピソードに始まって、食べものの話、気候の話、動物の話、タイ庶民の行動パターンや人生観、庶民の結婚事情や医療事情、宝クジ・バクチ・密造酒などの村の「娯楽」にまつわる話、日本でも有名な水かけ祭り(ソンクラーン)や、ロケット花火と爆竹が炸裂する火の祭り(ローイカトン)の様子や伝統行事など、水野氏の心に留まったありとあらゆる話題が綴られています。

水野氏をとりまく村の人々は、金もなく、学問もなく、ギリギリの生活をしている庶民ばかりで、偉大な人物や人格者などはこの本には出てきません。描かれている寒村の生活は桃源郷などとは程遠く、生活上の困難や事件に満ちた、ある意味では自然の脅威と赤裸々な欲望だらけの世界でもあるのですが、水野氏は、そんな村の生活を必要以上に賞讃することも批判することもなく、年齢の割にどこか達観した感じさえ漂う、簡潔でひょうひょうとした、味のある文章で表現しています。

読んでいると、何か日本の昔話でも聞いているような感じさえしてきます。タイ人と日本人の考え方や人生観の違い、農村の雰囲気の違いもこの本では触れられているのですが、それにもかかわらず、どこか懐かしさも覚えるのです。ひょっとして、私たちがなんとなく抱いている日本の農村のイメージというのは最近出来上がったもので、それ以前は日本にも、チェンライの村人みたいな人々が沢山いたのではないかという気もします。

しかし一方で、水野氏がタイに在住していた時期は、タイ社会の激変期でもありました。

 一九八〇年から九〇年というのはタイの歴史の中でも相当変化の激しかった時期であろう。八〇年頃までは全体に物も職もなく、そのかわり、それほどお金を必要とすることもなく、人々は太古とたいして変わりない生活をのんびりと送っていたが、この十数年で地価が一〇〇倍にも高騰し、物はあふれ、人手不足という贅沢な悩みを抱えるようにすらなった。そして農村からは若者が消え、みな忙しく生活に追われるようになってきた。


つまり、この本に書かれたタイ農村の日常風景は、今や失われつつあり、この本自体がもう既に、過去のタイ人の風習を書きとめた歴史資料みたいになりつつあるのです。かつての日本のように、現在のタイも急速に変わりつつあります。昔は良かったなどと言うつもりはありませんが、金を持たなくても何となくのんびり生きられた世界が、地上から急速になくなっていくのを知って、一抹の寂しさを感じるのも事実です。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 18:59, 浪人, 本の旅〜東南アジア

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