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旅の名言 「金がなくなり……」

 日本にいるときの私は、浪費家というのではなかったが、決して吝嗇家ではなかった。ポケットにあるだけの金はいつも気持よく使い切っていた。ところが、この旅に出てからというもの、倹約が第二の習性になってしまったかのように、あらゆることにつましくなってしまった。しかも、その傾向は日が経つにつれてますますひどくなっていく。金がなくなり、これ以上旅を続けられないということになったら、そこで切り上げればいい。そう思ってはいるのだが、旅を終えなければならなくなることへの恐怖が、金を使うことに関して私を必要以上に臆病にさせていた。


『深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海』 沢木 耕太郎 新潮文庫 より
この本の紹介記事

この気持ちは、バックパッカーならとてもよくわかるのではないかと思います。

旅をしながら現地でアルバイトをしたり、アクセサリーなどを作って路上で売りながら延々と旅を続けるケースもないわけではありませんが、普通、金を稼ぎながら旅をする人は少ないと思います。

収入がなければ、旅に出た瞬間から、「軍資金」は一方的に減っていきます。旅人に出来るのは、それが減るスピードをある程度調節することだけです。

いわゆる開発途上国では、バックパッカー・スタイルなら一日1,000円前後の予算で旅することが可能だし、国や地域によっては一日数百円で済むこともあります。円が強いおかげで、日本である程度金を稼いでおけば、驚くほど長い旅を続けることも不可能ではありません。しかし、これらの費用の大半は宿代と食事代なので、節約するにも限度があり、観光や遊びに金を使わなくても、ほぼ一定の額が毎日手許から消えていくことになります。

旅に慣れ、自分の旅のスタイルに見合った平均的な費用が把握できるようになると、このまま旅を続ければいつ資金がゼロになるのか、簡単に計算できるようになります。出発時にどれだけ資金を用意したか、どのような国々を旅するかによって、それが3カ月後なのか、半年後なのかといった違いは出てくるでしょうが、いずれにしても金がなくなればそれ以上旅を続けることはできません。

あらかじめ帰国する日が決まっているのなら、それまでの間、なんとか資金のやり繰りをすることだけ考えればいいのですが、『深夜特急』の沢木耕太郎氏のように、あらかじめ予定を決めずに、風まかせの旅に出た者にとっては、金がなくなるまでの間に、自分なりに旅への決着をつけられるか、旅の終わりをうまく見い出せるのかということが、非常に重大な問題になってきます。

限られた金しか持たない旅人は、まさか永久に旅を続けられると思ってはいないでしょうが、少なくとも自分なりに旅に満足し、これで終わりにしようという実感を得るまでは旅を続けたいと思っているはずです。

まだ旅を続けたいのに、資金が尽きたという理由だけで旅が中断してしまうとしたら、それはとても悔しいことです。それはまるで、夢中になって見ている映画のクライマックスで、いきなり映画館から追い払われるようなものではないでしょうか。

しかし問題なのは、予定の立たない旅をしている人間にとっては、旅の終わりが一体いつになるのか、自分でも全く予測がつかないということなのです。

収入もなく、資金が一方的に減るだけの状況で、いつまで旅が続くのかも分からないというのは、とても不安なものです。しかも旅のクライマックスで金欠になり、旅の舞台から追い出されることにでもなれば、後々まで後悔することになるでしょう。そういう先の見えない状況で旅人に出来ることは、重要でないと思われることには一切金を使わず、一円でも多くの資金を手許に残しておくことしかありません。

そして、金がなくなっていくという恐怖感は、旅が長くなり、残高が減るにつれて、ますます激しくなるに違いありません。

そんな様子を第三者が見れば、旅ごときに何でそこまで執着するのかと思うかもしれません。いったん日本に帰って、金を稼いで、また出直せばいいのではないかと思うかもしれません。実際に、金がなくなって帰国したものの、納得できずにもう一度資金を貯めて再び旅に出る人も少なくないと思います。

ただ、やはり旅の中断というものは、ないに越したことはないのだと思います。長い旅の場合は特に、出発から帰還までの一連の流れの中に、人それぞれに異なる旅のプロセスがあり、人それぞれの旅への決着のつけ方があるのだと思います。そこでは同じ旅の繰り返しなどあり得ないし、一度中断してしまった旅の流れは、二度と取り戻すことができないのではないでしょうか。

これは私の勝手な想像ですが、沢木氏は、ユーラシア大陸を乗り合いバスで駆け抜けるという「深夜特急」の旅が、その時点の彼にとってはかけがえのない、一回限りのものであるということを強く意識していたのではないでしょうか。そして、だからこそ、つまらない理由でその旅が中断されることを本気で恐れていたのではないでしょうか。

もちろん、有り余るほどの旅の資金があれば、そもそもこんな心配をする必要はありません。しかし、もしかすると、金が多すぎたら多すぎたで旅人の緊張感は薄れるだろうし、お金が一向に減らないために、いつまで経っても気分的に旅の終わりが見えてこないということになるのかもしれません。

まあ、私は有り余るほどの金を手にしたことはないので、そのあたりの事情はよく分かりませんが……。


『深夜特急』の名言

at 19:32, 浪人, 旅の名言〜衣食住と金

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