このブログ内を検索
新しい記事
記事のカテゴリー
            
過去の記事
プロフィール
            
コメント
トラックバック
sponsored links
その他
無料ブログ作成サービス JUGEM
<< 旅の名言 「このような危うさを……」 | main | 旅の名言 「東南アジアの空気の中には……」 >>

『魂のライフサイクル―ユング・ウィルバー・シュタイナー』

増補新版(2010年)はこちら

 

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

発達心理学の世界に、ライフサイクルという言葉があります。人間の一生、その誕生から死までの間には、人々に共通する、いくつかの心理的な発達段階というべきものがあって、それぞれの段階に特有の発達課題があるという考え方です。

しかし、そのライフサイクルの理論は「死」で終わっており、その先はありません。アカデミズムの世界で議論できるのはそこまでで、例えば「死」の後に、俗に「死後の世界」といわれているような、生から連続する何かがあるのかという点になると、アカデミズムは沈黙してしまいます。

それは、科学によっては検証のできない領域であり、「死」はともかく、「死後」の問題を提示することは、オカルトに首を突っ込むこととほとんど同義になってしまうのです。

本書の著者、西平直氏は、あえてその領域に踏み込んでいきます。

仏教の「四有」の説をヒントに、誕生から死まではもちろん、「死後」あるいは「再生」といった段階を組み入れた円環的なライフサイクルを想定した上で、従来の発達研究における<死後などまるで念頭にないパラダイム>と、<死後まで含めた円環的パラダイム>とで、ライフサイクルの全体と、それぞれの段階のもつ意味が、どのように違って見えてくるかを探ろうとしています。

そして、その円環的なライフサイクルをどのように解釈しうるかという観点から、ユング、ケン・ウィルバー、シュタイナーという三人の思想家の理論を整理しています。

西平氏によれば、ユングの理論では、「自我と無意識エネルギーとの関係の変容」として、ウィルバーの理論では、「意識の変容」として、シュタイナーの理論では、「超感覚的構成要素の組み合わせの変容」として、生と死のライフサイクルを説明できることになります。

しかし、一見してわかるとおり、同じ生と死のテーマを扱っていながら、彼らの「理論地平」が全くといっていいほど異なっているため、三者の説明が互いに噛み合わない部分もあり、これらを乱暴につなぎ合わせたり、一つにまとめてしまうことはできません。

不必要な批判や混乱を避けるためか、西平氏は非常に注意深くそれぞれの理論を整理し、ライフサイクルというテーマに沿った形で、「精神世界」の理論について簡単な見取り図を提示していますが、この本では、とりあえずそこまでです。

アカデミズムの立場から「精神世界」を検討しようとするとき、現時点では、そこまで踏み込むのがギリギリの線ということなのかもしれません。

 

 

 精神世界と名前のつけられたゆるやかな領域。心理学でも哲学でも宗教でもない、むしろ、それらが<そこ>から誕生してきた、より生活実感に近い、より原初的な、より未分化な領域。それは、いつの時代にも形を変えて蠢いていた魑魅魍魎。
 結果的にこの本は、その現代版の理論をいくつか並べた、おおまかな理論地図となった。「外」から見ると、この領域への分岐点はどこなのか。同じこの領域といっても、いかに異なるものの見方があるか。そして、それぞれの地平から見ると、「同じ事柄」でもどれほど違って語られるか。そうしたことを、ひとつひとつ確認しながら、太くザックリ描いた見取り図。
 それは、しかし、単なる道案内のためではなかった。
 そうではなくて、この領域も、学問的な吟味に耐えること。地道な思想研究に値すること。もしくは逆に、この領域から順に発想してゆくことによって、知の枠組みそのものが組み変わる可能性を、慎重に示すこと。つまり、この領域に足を踏み入れた途端、学問を放棄したかのような誤解に対して、何らかの異議を申し立てたいということである。
 しかし、他方では、神秘・超越・自分探しと、多彩に飛びかう言葉の束に対しては、地味な慎重さを求めるということでもある。

 


現在、いわゆるスピリチュアルなテーマに関しては、膨大な数の書籍が出版されており、まさに玉石混交の状態です。

多かれ少なかれ「あちら」の世界に親しみ、その世界に心を開いている人にとっては、それがアカデミズムの世界で受け容れられていようがいまいが、あまり関係ないのかもしれません。

そういう意味では、「精神世界」に関する話題に既に慣れ親しんでいる人にとっては、本書のような「地味な慎重さ」は物足りなく感じるだろうと思います。

しかし、スピリチュアル・ブームの中で、「あちら」の世界でしか通用しない言葉がいくら豊かに飛び交っても、結局「こちら」側の人々には届かないし、逆に「こちら」の人々が「あちら」を全否定して、「こちら」の言葉だけに固執していても、二つの世界の間にはコミュニケーションが成立しないでしょう。

この本は、「こちら」側を代表するアカデミズムの中から、「あちら」へと慎重に橋を架けようとする試みの一つだと思います。こうした地道な努力が積み重ねられることによって、やがて二つの世界の間には、少しずつ正確な理解が広まっていくことになるかもしれません。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

 

 

at 21:30, 浪人, 本の旅〜魂の旅

comments(0), trackbacks(0)

スポンサーサイト

at 21:30, スポンサードリンク, -

-, -

comment









trackback
url:http://ronin.jugem.jp/trackback/279