このブログ内を検索
新しい記事
記事のカテゴリー
            
過去の記事
プロフィール
            
コメント
トラックバック
sponsored links
その他
無料ブログ作成サービス JUGEM
<< 「生き神」の解任 | main | 『僕が遍路になった理由(わけ) ― 野宿で行く四国霊場巡りの旅』 >>

『村上春樹はくせになる』

文庫増補版(2015年)はこちら(Kindle版もあります)

 

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

私はかつて、村上春樹氏の小説やエッセイが好きで、手当たり次第に読んでいたことがあります。

その後、長い旅に出たりして、しばらく本から遠ざかっている間に、その習慣は途絶えてしまいましたが、最近、村上氏の作品が世界中で読まれているという話や、ノーベル文学賞の候補にもなったらしいという話を聞き、かつて抱いていた関心が甦ってきました。

実は、正直に言うと、私は村上作品のどこが魅力的なのか、自分ではうまく説明することができません。物語の展開自体は「凄い!」と感じるほど劇的ではないし、よく出来たエンターテインメントのようにスッキリ爽快な読後感があるわけでもありません。

読み終わるといつも、何か分かったような分からないような、何か重大なことが語り残されているような、モヤモヤとした感じが残るのです。それでも、小説全体に何とも表現しようのない独特の魅力があって、やがてまた別の作品を読みたくなるのです。

本書の『村上春樹はくせになる』というタイトルは、まさにこの私の「感じ」にピッタリでした。このタイトルに惹かれ、今まで抱いていたモヤモヤ感に言葉を与えてもらえるかもしれないと思い、早速読んでみることにしました。

私は今までに、村上作品について批評や解説をした本は一切読んだことがないので、他の本との比較はできないのですが、この本はとにかく文章がとても分かりやすく、書かれている内容も大いに納得できるものでした。

本書では、書かれた年代順に長編作品が一つ一つ丁寧に解説され、村上作品に漂う孤独感・喪失感・死の気配、コミュニケーション不全や「生きづらさ」を抱える登場人物たち、謎と迷宮、象徴と寓意の多用など、作品を特徴づけるさまざまなポイントが明かされていきます。

年代順に作品を振り返ることで、デビュー作以来、村上氏の作品が冒険的なモデルチェンジを繰り返しながらも、一貫した主題を追い続けていることが示されるのですが、清水氏によれば、その主題とは、「人間の心には得体の知れない暗闇の部分が隠されているというヴィジョン」です。

 

 

われわれはその闇の力から逃れることができない。われわれの内部の奥深くにそれは存在していて、心を操ったり、自分と他人を損なったりしている。それによって損なわれたものを取りもどそうとすれば、恐ろしいその力と全力で闘わなければならない。何冊か彼の小説を読むと、読者はその主題に自然と馴染んでくる。そして姿かたちを変えて繰りかえし現れる「闇の力」に対する解読力ができてくる。村上春樹の最近の作品で「闇の力」はどんどん入り組んで難解になってきているが、それまでの蓄積があると、けっこう読み解きやすいのである。何だか自分の一部のような懐かしささえ、ふと抱いてしまうのだ。

 


もちろん、村上春樹氏の作品は、象徴と寓意に満たされているということもあって、読者によるさまざまな解釈の余地があり、作品から何を受け取るかは、読者それぞれに任されていると言えます。

また、作品を知的に解読したり、様々な解釈に頭を悩ませなくても、村上氏の小説を読むこと自体が楽しければ、読者としてはそれで充分なのだとも言えます。

ただ、私のようにモヤモヤ感を抱え、村上作品を知的な側面からも理解したいと考えている人がいるとしたら、こうした「解読本」を読んでみるのもいいかもしれません。特に、村上氏の長編を既に何冊か読んだことのある方におすすめしたいと思います。



本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

 

 

 

at 18:48, 浪人, 本の旅〜ことばの世界

comments(0), trackbacks(0)

スポンサーサイト

at 18:48, スポンサードリンク, -

-, -

comment









trackback
url:http://ronin.jugem.jp/trackback/317