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『ターミナルマン』

サー・アルフレッド・メヘラン,アンドリュー・ドンキン

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

外国旅行中にパスポートを失ったために、空港の入管で自分の身分を証明できなくなり、どこの国からも受け入れを拒否されて、仕方なく空港の待合室に住み着くことになった男……。

2004年に公開されたスピルバーグ監督の映画『ターミナル』は、そんな奇想天外な境遇に陥った男の物語を描いていますが、この話のネタ元になったという人物が実在します。

本書は、イラン生まれのメヘラン・カリミ・ナッセリー、通称アルフレッド・メヘラン氏の自叙伝です。彼は1988年、パリから飛行機でロンドンに渡ろうとしたところ、身分証明書を所持していないためにパリへ強制送還されたのですが、身分証明書がないためフランスに入国することも、第三国に向かうこともできなくなりました。

彼はシャルル・ド・ゴール空港に足止めされ、そのまま18年近くもの間、第1ターミナルの赤いベンチに座って、そこから出発できる日を待ち続けました。

一体どうしてそんなことになってしまったのでしょう? 

アルフレッド・メヘラン氏は、パスポートを再発行してもらい、出身国のイランに帰れないのか? 彼は空港の待合室から出ないまま、所持金もないのにどうやって今まで食いつないできたのか? それにそもそも、身分証明書をもっていないという理由で入国を拒否されたまま、他に何の選択肢も与えられず、十数年も放置されるなどということが現代のヨーロッパであり得るのか? 

この人物の存在を知ったら、どんな人でも、次から次へと疑問が湧いてくるはずです。本書では、彼がド・ゴール空港で足止めされ、動けなくなった複雑な事情が、タマネギの皮を剥くように少しずつ明らかにされていきます。そして、それはやがて彼の出生の秘密にまで及んでいきます……。

実際の文章は作家のアンドリュー・ドンキン氏が執筆していて、本のミステリアスな展開自体は面白いのですが、読み終わって、アルフレッド・メヘラン氏の人生について詳しく知ってしまうと、何か納得できないような、モヤモヤとした後味が残ります。

それは、彼の人生が、まるで得体の知れない不条理さに包まれているように感じるからかもしれません。

彼の人生は(まだすべてが終わったわけではありませんが)、あらゆる国から拒否され続ける人生であり、国籍という問題に一生つきまとわれる人生です。この地球上で合法的に暮らせる場所を誰からも与えてもらえず、空港の待合室という、入管と入管の間のエアポケットにはまり込んだまま、ただひたすら救出を待ち続ける日々。

しかし、物事は一向に解決せず、人々は彼の側を急ぎ足で通り過ぎていくだけです。そしていつしか、彼はその孤独で宙ぶらりんの状態が自分の運命であると受け入れたかのように、ド・ゴール空港第1ターミナルの赤いベンチを自分の家と思い定め、毎日毎日その同じベンチに座り続けるのです。

どこの国の人間でもなくなり、定職もなく、同じ建物の中を行ったり来たりするだけの日々。はた目には普通の外国人旅行者のようにしか見えないし、自分の足でどこにでも歩いていけるはずなのに、国籍という見えない壁があるために、そこから出ることができないのです。彼にとっての全世界とは、ド・ゴール空港第1ターミナルの建物の中だけになってしまったのです。

私には、その何ともいえない「不条理感」を、どうにもうまくお伝えできないのですが、この本を実際に読んでいただければ、その奇妙な感じを分かっていただけると思います。

なお、アルフレッド・メヘラン氏については、ウィキペディアの項目「マーハン・カリミ・ナセリ」でもその略歴等を知ることができます。

現在彼はどうしているのか調べてみたら、ウィキペディアの英文の項目「Mehran Karimi Nasseri」に、アルフレッド・メヘラン氏は2006年に病気で入院し、既にド・ゴール空港第1ターミナルを退去したとありました。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 13:45, 浪人, 本の旅〜住まい

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