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旅の名言 「窓の外の風景を……」

 窓の外の風景を眺めている私は、水田や墓や家や木々に眼をやりながら、もしかしたら自分の心の奥を覗き込んでいるのかもしれない。カジノでバカラという博奕をやりながら、伏せられたカードではなく自分の心を読んでいるのと同じように、流れていく風景の向こうにある何かに眼をやっているのかもしれない。だとすれば、窓の向こうに風景があろうとなかろうと、そこが闇であろうがなんであろうが変わりないではないかということになるかもしれない。しかし、やはり、そこには闇ではなく風景があってほしい。


『一号線を北上せよ<ヴェトナム街道編>』 沢木 耕太郎 講談社文庫 より
この本の紹介記事

私は、沢木氏のこの文章に、深い共感を覚えます。

列車やローカルバスに揺られながら、車窓を流れる光景をぼんやり眺めている時間というのは、もしかすると最も「旅らしい」瞬間かもしれません。移動こそ旅の本質だと考えるなら、目まぐるしく移り変わっていく景色こそ、自分が今まさに移動中であることを強く実感させてくれるはずだからです。

しかし、私の個人的な経験から言えば、エキゾチックな風景に目を奪われるのは、列車やバスが動き出してからせいぜい数時間くらいまでです。それが丸一日、あるいは何日も続けば、さすがに感動は薄れます。特にローカルバスで旅していると、一日に移動できる距離が短いために、同じ国、同じ地方の同じような風景を毎日見続けることになりがちです。

それに、時々道端に何か面白そうなものを見つけても、あっという間に視界から流れ去ってしまいます。ビデオのように再生してもう一度見ることもできません。隣の席に地元の人が座っていて、いろいろと親切に教えてくれたりすれば別ですが、たいていの場合、それが何であったのか知ることさえできないうちに、次々に記憶の霧の中へと溶け去っていってしまうのです。

車窓風景には、映画やテレビのようなストーリーや感動の場面はありません。一日中景色を眺め続けたところで、何かがはっきりと分かるわけでもなく、ドラマチックな感動があるわけでもありません。そう考えると、実に無意味で退屈だとも言えます。

それなのに、私にとって、知らない国の田舎の、何の変哲もないような道を走りながら、ただぼんやりと車窓を眺め続けることには不思議な中毒性があるようです。自分ではそれほど楽しいと意識しているわけではないし、肉体的にはしんどい旅であることはわかっているのに、何度も何度も同じような旅を繰り返してしまうのです。

もしかするとそれは、沢木耕太郎氏の言うように、車窓風景を通して「自分の心の奥を覗き込んでいる」からなのかもしれません。

目の前を、あらゆるモノが通り過ぎていきます。初めのうちはその一つ一つがエキゾチックに感じられ、頭の中でいろいろ考えたり、連想を膨らませたりしているのですが、色々なモノが次々にやって来ては去っていくので、だんだんついていけなくなり、思考がパンク状態になります。

歩くスピードではなく、全てが飛ぶように流れていくので、通常の思考モードでは対応し切れないのでしょう。そのうちに、余計なことは考えず、あらゆるモノが目の前に現れては消えていくのに任せるようになります。

そうやって、風景が流れていくに任せ、物思いに耽っているような、そうでもないような状態でボーッと窓の外を見ていると、ふだんとは違う意識モードのスイッチが入るというか、世界が違って見えてくるような気がします。そしてそれは、何か心の非常に繊細な部分に関わっているような感覚があるのです。

沢木氏はそれを、「流れていく風景の向こうにある何かに眼をやっている」と表現していますが、それは意識的に努力してそうしているというよりは、次々に流れ去る風景が半ば自動的に引き起こす、別モードの意識なのかもしれません。

もちろんそれは、私の場合、はっきりと自覚できるほどではなく、あくまでもぼんやりと感じられるだけです。だから、何がどうなのかと、言葉ではうまく説明できないのですが、その状態に一種の中毒性も感じているということは、自分でも無意識のうちに、そこに重要な「何か」があることを感じ取っているからではないでしょうか。

そして、その「何か」こそが、表面的な意識や理屈を超えて、私を何度も旅へと駆り立てているのに違いありません……。

at 19:32, 浪人, 旅の名言〜旅人

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