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2007.10.07 Sunday
旅の名言 「アフリカにいるあいだ……」
どういうわけかアフリカにいるあいだ、ぼくはよく涙を流した。とくに理由があるわけじゃない。ただ、この地に生きる人々や、この大地から、何か、言葉にならない感動を覚えるのである。
彼らは心を許し合った旧知の友のような笑顔をぼくに向けた。子どもたちは本当に子どもらしく、裸足で力いっぱい大地を駆け回っていた。サバンナの草原は海のように雄大で、風が吹くと草原全体が生きているように揺れた。そこを歩いていくキリンには崇高な美しさがあった。
すべてが独特の透明感に溢れていた。涙が誘われるのは、そこに「郷愁」があったからではないか。遠い遠い昔の故郷、人間の故郷――。
それに涙することで、ひょっとするとぼく自身も、ほんの少し透明になれたのではないだろうか……。いつか元の生活に戻り、自分の中に透明さのカケラも見出せなくなったら、ぼくはまたアフリカに戻って来ようと思う。
『行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅』 石田 ゆうすけ 実業之日本社 より
この本の紹介記事
7年半かかって自転車で世界を一周した石田ゆうすけ氏の痛快な旅行記、『行かずに死ねるか!』からの引用です。
自らの足でペダルをこぎ、地を這うようにして世界中を旅した石田氏ですが、やはりアフリカ大陸の印象が、もっとも深く心に刻まれたようです。
アフリカの大地やそこで生きる人々の姿に、口では言い表せない何かを感じ、その圧倒的な感動に思わず涙してしまう……。
私はアフリカに行ったことがないのですが、石田氏の文章を読んでいると、私も一度でいいからアフリカに行ってみたいという気持をかきたてられます。
石田氏はその感動の理由を「郷愁」と表現しています。それはきっと、個人的な想いを超えて、人類的なスケールで迫ってくる懐かしさなのでしょう。
バックパッカーの間で有名な心の病(?)に「インド病」というのがあります。インドの混沌に直面し、強烈なショックに襲われて「インド病」にかかってしまった旅人は、それを治すためにはインドに通い詰めるしかないと言われています。
ただし、「俺はインド病にかかってしまった」と語る旅人たちは、なぜかみんなうれしそうなのですが……。
アフリカへ行った旅人も、やはり深い感動のあまり「アフリカ病」に取り憑かれ、アフリカに通い詰めるしかなくなってしまうのでしょうか……。
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