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旅の名言 「僕の旅なんて……」

 僕の旅なんて、しょせん貧乏ごっこに過ぎない。いつでも元の生活に戻ることができるという保証をしっかり手に持ちながらの、架空の貧乏体験だ。だからこそ我慢もできるし、今日まで旅を続けることができた。


『僕が遍路になった理由(わけ) ― 野宿で行く四国霊場巡りの旅』 早坂 隆 連合出版 より
この本の紹介記事

野宿をしながら四国八十八カ所を巡礼した旅の記録、『僕が遍路になった理由』からの引用です。

著者の早坂隆氏は、大学四年の夏、就職活動を中断して歩き遍路の旅に出ますが、テントも寝袋も持たず、野宿をしながらひたすら歩き続ける旅は、予想どおりつらいものでした。

彼は巡礼の旅を続けながら、挫けそうになる自分自身とひたすら内面の対話を繰り返すのですが、そんなとき、自分を説得する理由のひとつとして浮かんできたのが、冒頭の言葉でした。

今は野宿の貧乏旅行をしているけれど、それは自分の意志でそうしているだけであって、やめようと思いさえすれば、いつでも元の快適な生活に戻ることができる。いつでも戻れるのだから、もうちょっとだけ頑張ってみよう……。

それにそもそも、バイトをすればそれなりのお金を稼げる日本で、野宿の旅をしなければならない必然性はありません。それは、自分の意志であえてそうしているのであり、ある意味では、ウケ狙いの酔狂な試みに過ぎないのだとも言えます。「僕の旅なんて、しょせん貧乏ごっこに過ぎない」というのは、ミもフタもない言い方ですが、確かにその通りかもしれません。

そして同じことは、アジアなどの開発途上国を旅するバックパッカーについても言えることです。

沢木耕太郎氏の名作『深夜特急』に、同じようなニュアンスの言葉が出てきます。

旅の名言 「金がないなどと……」

バックパッカーは一日でも長く旅を続けようと、現地では経費を切り詰め、金のない貧乏人のようにふるまうことが多いのですが、彼らが飛行機に乗ってそこまでやって来たという事実は、現地の人の目からすれば、彼らがフライト・チケットを買えるだけの金持ちであるということを意味します。

開発途上国の若者たちが、わずかな給料や失業の苦しみの中で毎日の生活に追われている一方で、同年代のバックパッカーは働かずしてのんびりとした旅の日々を楽しみ、その懐にはトラベラーズチェックの束やクレジットカードを忍ばせています。

貧乏旅行といってみたところで、その気になればいつでも「先進国」に生まれた特権を行使することができるし、嫌になればいつでも旅をやめて自分の国に帰り、便利で快適な暮らしに戻ることができるのです。

もし現地の人たちから、それは所詮「貧乏ごっこ」ではないのか、と言われれば、私たちには返す言葉がないのではないでしょうか。

『深夜特急』の沢木青年をはじめ、バックパッカーの中には、ときにこうした問いに襲われ、自分がなぜ旅を続けているのか、こんなことをしているのは自己欺瞞ではないのかと、深く悩む人もいるはずです。

しかしそれでも、私たちは旅を続けます。「貧乏ごっこ」だと思っていても、現地の人から批判的な目で見られても、やはり旅の日々の経験を通じて、それ以上の「何か」を感じているからこそ、バックパッカーは旅をやめられないのです。

それに、昨今のグローバリゼーションの進展によって、「先進国の人は金持ちで、開発途上国の人は貧乏」という単純なステレオタイプは通用しなくなりつつあります。

開発途上国の人でも、昔からの大金持ちというのは存在するし、うまく時流に乗って事業で財をなす人もいます。バックパッカー相手のゲストハウスやツーリスト・カフェなどを経営する人たちは、そうした企業家の一部です。

また、現地の多国籍企業や新興企業に勤めるホワイトカラーは、アルバイトや派遣の仕事で旅行資金を稼ぐ先進国のバックパッカーたちに較べたら、ずっと社会的に安定し、よい暮らしをしていると言えるかもしれません。

バックパッカーの格言に「豊かな青春、悲惨な老後」というのがあります。旅に青春を賭けた筋金入りのバックパッカーたちは、たとえ先進国の国籍を持っていたとしても、将来の豊かな暮らしを保障されているわけではありません。

「いつでも元の生活に戻ることができるという保証」があるかぎり、バックパッカーの旅は「貧乏ごっこ」かもしれませんが、もしもそこから抜け出せなくなるとしたら、それはもう、「架空の貧乏体験」ではありません……。

at 18:36, 浪人, 旅の名言〜旅について

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