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『伊勢詣と江戸の旅』

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

江戸時代の庶民の旅というと、お伊勢参りが真っ先に頭に浮かびますが、飛行機も鉄道もなかった時代に、彼らはどんな旅をしていたのでしょうか。

例えば江戸の住人にとって、伊勢まで行くことは、往復だけで一カ月近くはかかる辛い長旅でした。人々は毎日、40キロ近くをひたすら歩いたといいます。

本書は、当時の文献や旅人の残したメモを集め、その記述や支払いの記録をもとに、江戸中期以降の庶民の旅を具体的に再現してみようという、ユニークな試みです。

第一章の「伊勢参宮」では、当時の伊勢参拝の実情が、特に伊勢到着後に焦点をあてて詳しく描かれています。

江戸時代に伊勢信仰が日本中に広がった要因として、その信仰を地方に伝え、伊勢講という旅費積み立てのグループを組織し、伊勢詣にやって来る人々を接待した御師の存在が大きいのですが、彼らが伊勢講の団体を接待するその手厚さには驚かされます。

莫大な金額の神楽奉納と引き換えという面はあったにせよ、御師は豪壮な邸宅に団体を招き、伊勢エビや鯛や鮑の豪勢な料理をふるまい、絹の布団に寝かせ、伊勢見物のための駕籠を手配し、重箱に詰めた弁当まで届けるサービスぶり。帰りにはお札の他に、みやげまで持たせています。

金持ちの商人ならともかく、庶民にとっては、こんな接待を受けるのは一生に一度のぜいたくだったはずです。彼らはここぞとばかりにあちこちでご祝儀をはずみ、伊勢の街を歩けば、文字通り金をばら撒いています。そしてそれを目当てに列をなす芸人や物乞いたち……。

読んでいると、当時の伊勢が、人々にとっての一大ワンダーランドであったことがよく分かります。

第二章の「旅の値段」では、旅全体で実際にどれくらいの費用がかかったか、宿泊費、渡し舟や川越し人足への支払い、拝観料、みやげ代などの詳細な金額が挙げられています。

第三章「街道に生きる」では、江戸時代の旅を支えていた、公的・私的なシステムが紹介されています。旅人を管理・保護する幕府の制度やその運用実態に始まって、旅人を相手に生きる茶屋、旅籠屋、遊女、客引き、飛脚屋、雲助、物売り、芸人など、街道筋のさまざまな人々の姿が描かれています。

驚くのは、伊勢・京都間や、東海道などの主要な街道には、旅人向けのかなり便利なサービスが発達していたことです。飛脚屋に頼んで、余分な荷物を必要な場所まで送ってもらうことができたし、為替を利用して旅先で現金を受け取ることもできました。現代でいう宅配便のサービスや、トラベラーズチェックに当たるようなものが当時すでに存在していたわけです。

街道の様子やこまごまとした出費の内容を読んだり、豊富な図版を見たりしていると、江戸時代の旅の具体的なイメージが浮かんできます。まるで江戸時代の日本の旅行ガイドブックを読んでいるような感覚です。

ちなみに、現在の日本ではもうほとんど影を潜めてしまったようですが、アジアの国々では、「雲助」や「護摩の灰」など、お騒がせな人々がまだまだ元気に活躍(?)しています。この本を読んでいて、アジアの旅で出会ったそういう人々を懐かしく思い出しました。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 19:08, 浪人, 本の旅〜日本

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