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『アースダイバー』

アースダイバー
アースダイバー
中沢 新一

 

増補改訂版(2019年)はこちら(Kindle版もあります)

評価 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です

もう数ヶ月前になると思いますが、深夜のTVでこの『アースダイバー』の内容をなぞった番組を見ました。中沢氏本人も出演して、ママチャリに乗って東京を案内する趣向でしたが、見かけ以上にまじめなつくりの非常に面白い番組で、「原作」の方も読みたいと思いました。

読んでみると、期待どおりのすばらしい作品でした。

この本のテーマは、縄文的な「狩猟採集民の目」を通して、東京の都市空間の隠れた構造を明らかにするというものです。

縄文時代に陸地だったところ、海だったところは、それぞれ洪積層、沖積層という地層の分布によってわかるのですが、この地層分布によって当時の海岸線を再構成した「縄文地図」を現代東京の地図に重ね合わせてみると、面白いことがわかってきます。

例えば、縄文時代は海に突き出た岬で、当時の人々にとっては聖地や墓地とされてきた場所は、後の時代になると寺・神社や墓地となり、現代になっても死や超越性の香りをただよわせています。その地形特有の意味が縄文時代から受け継がれているのです。

中沢氏は、芝公園の東京タワーの建材が朝鮮戦争で使用不能となった戦車の鉄くずで作られたこと、妖しい蝋人形館の存在など、そこに何故か漂いつづける死の香りを指摘した上で、縄文の目で見た東京タワーを、次のように描いています。

 

 

人はいいかげんな場所に、電波塔を建てたりはしないものだ。小高い丘があったから電波塔が建てられたわけではない。そこが洪積台地が海にふれている岬だったから、まずたましいを他界に送るための宗教的な装置が、縄文人たちによってつくられ、しばらくするとこんどはその古い装置の上に神社や寺が建てられた。そしてふしぎなことに、現代人はそのような場所ばかりを選んで、電波塔を建てたのである。正確な理由はさだかではない。しかしひとつだけはっきりしているのは、こんなところにさえ縄文的思考の痕跡が、深い影響をおよぼし続けていることである。

 


このように、中沢氏は東京のあちこちをママチャリでフィールドワークしながら、縄文の目で見た東京の別の顔をあらわにしていきます。経済合理的な思考だけに基づいて建設したと思われていた現代の街並みが、実は縄文時代にまでさかのぼる意味の連続性につながっていることを知るのは、衝撃でもありますが、同時に何か深く納得させられるものもあります。

中沢氏が縄文文化にこだわるのは、彼らの「野生の思考」が、今やあらゆる国々に浸透した「単一文化と経済主義を特徴とするグローバリズム」によって息苦しくなってしまった現代世界に対する「解毒剤」となりうる可能性があると考えているからです。その点で、縄文的思考の痕跡があらわな東京の街並みは、氏にとって宝の山であり、くまなく探査するだけの価値があるのです。

この本を読むと、東京の見方が変わってきます。遠い外国に行かなくても、縄文地図を手にして、ちょっとした見方のコツを知ってさえいれば、東京で縄文文化とはるかな歴史の旅を満喫できるのです。遠い過去とハイテクの現代が同居する不思議の街東京を、私もフィールドワークしたくなりました。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

 

 

 

 

 

 

 

at 20:37, 浪人, 本の旅〜日本

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