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『池澤夏樹の旅地図』

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

本書は、作家の池澤夏樹氏が、旅というテーマで自らの半生と仕事を振り返った作品です。

1972年、27歳のときにミクロネシアを旅し、初めて海外を知った池澤氏は、「非日本というものと具体的に出会ったことに、とても大きなショックを受け」たといいます。それは、「ミクロネシア体験があったからこそ作家になれた」というほどの人生の大きな転機でした。

それ以来、世界中を旅するだけでなく、ギリシャ、沖縄、フランスと移住を重ね、旅と関わりの深い仕事を続けてきた池澤氏ですが、この本では、いくつかのインタビューや対談、本人によるエッセイなどを通じて、幼年時代の帯広の思い出から現在のフランス暮らしに至るまでの、世界中のさまざまな土地とのかかわりと、その体験が仕事にどのような形で反映されてきたかが明らかにされています。

また、旅に関する本・映画・音楽のミニ・ガイドや、随所にちりばめられた美しい写真など、旅心を誘うさまざまな趣向も凝らされていて、池澤氏のファン必携の本になっています。

ところで、本書後半のエッセイ、「楽園の曖昧な根拠」は、私にとって非常に興味深い内容でした。

池澤氏はオーストラリアのリゾート地で休暇を過ごしながら、ある「居心地の悪さ」を感じています。それはリゾートという、「最も安直な、陳腐な形で具体化された楽園」を目の当たりにした当惑というよりも、もっと根の深いものです。

自分たちにとって未知の土地に楽園のイメージを託し、そこへと駆り立てられるという、人類に共通の行動パターン。それがもたらしてきた歴史を振り返るとき、旅への衝動を肯定しつつ生きてきた者として、何か後ろめたいものを感じないわけにはいかないのです。

 

一方では旅や移動の衝動を全面的に認め、もう一方ではどこかで後ろめたい思いを無視できずにいる。後ろめたさは背を向けた土地に対するものではない。たいていの場合、土地は人を引き留めない。問題は行った先、押しかけた先に対する違和感であり、居心地の悪さだ。リゾートでいえば、リゾート開発をしてしまったことへの、そこを利用することへの、後ろめたさ。他人の土地に楽園を想定する僭越への自己批判。


そしてそれは、旅先で出会った素晴らしいものについて書くという自らの仕事の根底に潜む矛盾に対する、苦い思いともどこかでつながっています。

 

 最初からわかっていたことがある。ある土地に行って、そこについて報告を本国に送る。それは結局は観光開発のお先棒を担ぐことになる。だからぼくが送るメッセージはそれ自体が矛盾の上に成り立っていた――「ここはとてもいいところですから、みなさんは来ないでください」。


池澤氏はこうした「居心地の悪さ」に対し、スッキリとした解決を得られないまま、そこに立ち尽くしています。しかしそれは、作家だけが感じる思いではないはずです。

ここではないどこか別の場所に楽園を思い描き、そこを目指して出かけていく旅人すべては、楽園とされる場所に辿り着いたとき、多かれ少なかれ、同じような現実に直面するのではないでしょうか。

だとすれば、人間にとって旅とは、結局何を意味しているのでしょう?

旅人は、この「居心地の悪さ」を認めるところから始まる、さらなる探究へと足を踏み出さざるを得ないのかもしれません……。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

 

 

JUGEMテーマ:読書

 

at 19:17, 浪人, 本の旅〜世界各国

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