このブログ内を検索
新しい記事
記事のカテゴリー
            
過去の記事
プロフィール
            
コメント
トラックバック
sponsored links
その他
無料ブログ作成サービス JUGEM
<< 若者の海外旅行離れ? | main | 旅の名言 「それでもこの国では……」 >>

『ネットカフェ難民 ― ドキュメント「最底辺生活」 』

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

昨年の1月に「NNNドキュメント'07 ネットカフェ難民 漂流する貧困者たち」というTV番組で取り上げられて以来、ネットカフェ難民の存在は広く世に知られるようになりました。
記事 「ネットカフェ難民」

今では、格差社会を語る上で欠かせない、いわば「象徴」のような存在になっていますが、この本は、ネットカフェ難民を経済的な弱者としてクローズアップするTVなどの報道とは少し違う観点から、その生活のディテールを描いています。

著者の川崎昌平氏は、数年の「ヒキコモリ兼ニート生活」を経て、2007年にネットカフェで寝泊まりする生活を始めました。ネットカフェ難民という言葉が流行していた頃のことです。

この本は、彼が実家からネットカフェに居を移してから1カ月の生活を、日記形式で綴ったものです。ネットカフェ難民がどんな生活を送っているのか、あまりよく知らない人にとっては、それが具体的にどういうものなのかを知る上で、この本は一つの参考になるでしょう。

ただ、この日記はあくまでも、「考える難民」である川崎氏の個人的な考えや体験を綴ったもので、それがネットカフェ難民全ての内面や生活のあり方を代表するものではないでしょう。

考えてみれば当たり前のことですが、ネットカフェ難民と一口に言っても、彼らは年齢も仕事も、そうした生活を始めた事情もさまざまです。ネットカフェに寝泊まりしている点が同じなだけで、皆が同じことを考え、同じ生活をしているわけではありません。

また、本のサブタイトルには「最底辺生活」のドキュメントとありますが、いわゆる「社会派ジャーナリストが格差社会を告発する怒りのルポ!」みたいな内容を期待すると裏切られると思います。

そもそも、著者の川崎氏は、経済的な事情でネットカフェ難民に「転落」したというより、一つの生き方として、自らの意志でネットカフェ暮らしを選んだようなところがあります。自らの体験をこうして執筆し、新書で出版するという主体的な行動自体も、TVなどのマスコミが描く「かわいそうな」ネットカフェ難民のイメージからはズレています。

それと、彼自身の複雑な内面を反映しているかのようなクセのある文章も、人によって好き嫌いが分かれるかもしれません。

ただ、私が面白いと思ったのは、彼がネットカフェ難民という生き方に、何か、新しい時代の予感のようなものを感じているところです。

ネットカフェ難民は、日雇い労働のために生きているわけではない。少なくとも僕は、ネットカフェ難民をやりながら「思考」している。就労問題や社会経済の理論を振りかざしてネットカフェ難民を語るのはいかにも実態に適うように見えるし、また事実意味のある切り口なのだろうが、それですべてを見通せると思ったら間違いである。人間はお金の計算だけをする動物ではない。ネットカフェ難民を考えるキーワードは、むしろもっと形而上的な部分にあるような予感がする。簡単に言えば、合理主義の終焉、あるいは新しい合理哲学の実践の兆候、気配、漠とした予感が、ネットカフェ難民の勃興と展開とに顕在化しつつあるのではないか。 (中略) いやいや、誇大妄想はわかったから少しは具体的な話をしてみろよ、と言われるとお手上げなのだが。


ネットカフェ難民を、格差社会の被害者として取り上げるマスコミは(もちろんそれは重要な視点ではあるものの)、ネットカフェに暮らす人々がその生活スタイルを通じて表現している他の側面を、うまくすくい取れていないのかもしれません。

ネットカフェ難民は、その経済的地位においても、社会的地位においても、社会の周縁に位置していますが、彼らを受け入れる場所であるネットカフェも、つい最近になって都市に出現し、その中心部に急速に広がりつつある見慣れない存在です。ネットカフェも、そこに暮らす人たちも、今はまだ、私たちの社会のメインストリームから遠く離れた、奇妙で怪しげな存在に過ぎません。

しかし彼らは、近代社会の極限のようなその環境の中にひっそりと棲息しながら、私たちの社会にとって何かまったく新しいものを、自らそれと気づかずに、すでに表現し始めているのではないでしょうか。

もっともそれは、川崎氏も言うように、まだはっきりとつかみようのない「漠とした予感」に過ぎません。それが何であるのか、私たちにとって良いものなのか、それとも悪いものなのか、「少しは具体的な話をしてみろよ」と言われたら、私もお手上げなのですが……。


記事 「ネットカフェ「難民」というけれど……」


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書

at 19:09, 浪人, 本の旅〜住まい

comments(0), trackbacks(0)

スポンサーサイト

at 19:09, スポンサードリンク, -

-, -

comment









trackback
url:http://ronin.jugem.jp/trackback/455