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『若者はなぜ3年で辞めるのか?  年功序列が奪う日本の未来』

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評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

厚生労働省の統計によれば、いま、大学卒の新入社員のうち、3人に1人が3年以内に会社を辞めているそうです。

世間には、これをわがままで忍耐力のない若者のせいだとする見方は多いし、確かにある程度は、若者にもそうした傾向があるのかもしれません。

しかし、果たしてそれだけが理由なのでしょうか?

就職し、日本の企業の実態を始めて内側から眺めた若者は、その硬直した組織のあり方に、耐えがたい閉塞感を感じるからなのではないでしょうか。

企業の人事制度に詳しい城繁幸氏は、この本で、若者たちを覆っているこの「閉塞感の正体」を、年功序列という制度を切り口に解き明かしてくれます。

年功序列制度の本質は、「若い頃の頑張りに対する報酬を将来の出世で支払う」という点にあります。いわば先憂後楽のシステムです。若い社員は滅私奉公で会社に尽くすことを要求されるのですが、その頑張りは、中高年になってから、高い賃金や退職金、権限のあるポストという形で報われることになります。

しかし、城氏によれば、今の若者たちが身を粉にして会社に尽くしたとしても、彼らの半数以上は将来その見返りを得ることはなく、「働き損」のまま終わる可能性が高いというのです。

バブル崩壊によって年功序列制度はすでに崩壊し、現在では多くの企業が成果主義的な人事制度に移行したとよく言われますが、実際の状況はそう簡単ではありません。

現在日本で導入されている成果主義のほとんどは、実は年功序列制度を延命させるためのものなのです。それはイメージされるような欧米流の実力主義とはほど遠く、若手と中堅社員の総人件費を下げることで、中高年社員の高賃金を維持する仕組みでしかありません。

身も蓋もない言い方をすれば、年功序列制度が崩壊しているのは30代より下の若手の社員だけで、彼らはその上の逃げ切り世代の中高年を支えるために、将来報われることのない過重な労働を強いられているのです。

城氏は、年功序列制度のそんな現状を、「ねずみ講」だとまで言い切ります。

年功序列制度は、右肩上がりの経済成長が続き、組織が拡大し続けることを前提としたシステムです。それは、そうした特殊な社会的条件のもとでのみ成り立つもので、いったんその前提が崩れると、若い世代を縛りつける恐るべき重荷になってしまうのです。

もちろん、年功序列制度が、1980年代までの日本社会の繁栄に多大な貢献をしてきたことは確かです。欧米の先進国にフルスピードで追いつくという点では、実に効率的なシステムだったのでしょう。しかし、それがうまくいきすぎたことが、逆に現在の災いになっているような気がします。

日本の場合、企業に限らず、学校教育を含めた社会全体のシステムが、年功序列を前提として完璧に組織化されてしまい、それが「昭和的価値観」として人々の心にがっちりと根づいてしまったために、いざそれが機能しなくなり、大きな問題を引き起こしていても、長年そのシステムの中で生きてきた人には、どこから手をつけたらいいのか分からず、途方に暮れてしまうのではないでしょうか。

やっかいなのは、企業だけでなく、役所、組合、政党、マスメディアも同じ「昭和的価値観」にどっぷりと浸かり切っているため、若者は、自らを救うために、そうした組織をあてにはできないということです。

では、若い世代はどうすればいいのでしょうか?

この本は、日本の年功序列社会の現状を示すことが目的で、問題の解決策を示すものではないのですが、それでも城氏は若者に対して、まず年長者が押しつけてくる「昭和的価値観」から自由になり、自分たちの置かれた現状を見つめること、そして働く動機を自ら問い直し、主体的な行動を起こすように勧めています。

それにしても、若い人がこの本を読んだら愕然とするだろうし、これまで問題の解決を先送りにし、次世代に負担を押しつけてきた年長者世代に対しては怒りを感じるのではないでしょうか。

しかしもちろん、この本の趣旨は、別に世代間の闘争を煽ろうというものではないはずです。

若者がただ黙って古いやり方に従うのをやめ、声を上げるのは大事なことですが、誰かに感情的な怒りをぶつけるだけでは問題は解決しないし、限られたパイの取り分を世代間で奪い合ったとしても、かつての高度成長時代のようなバラ色の幻想がよみがえるわけではありません。

必要なのは、自分の行く末を組織や他人任せにせず、自ら真剣に考え、リスクを覚悟した上で、自分にとって最もふさわしい生き方を模索していくことなのではないでしょうか。


城繁幸著 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか ― アウトサイダーの時代』 の紹介記事
堀井憲一郎著 『若者殺しの時代』 の紹介記事
上田紀行著 『日本型システムの終焉』 の紹介記事


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

 

 

 

JUGEMテーマ:読書

 

 

 

at 19:07, 浪人, 本の旅〜人間と社会

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ジョブディスクリプション万歳, 2008/06/14 6:00 PM

成果主義は誤解されています。
城氏の富士通は失敗例ですが、武田薬品工業が成功例として挙げられています。米国の成果主義を真似し納得性を重視したためです。
成果主義、武田薬品工業で検索してみてください。

浪人, 2008/06/15 6:04 PM

ジョブディスクリプション万歳さん、コメントありがとうございました。

確かに、思い切って欧米流の成果主義を導入し、うまくいっている企業もあるようですね。

城氏も、成果主義そのものを批判しているのではなく、日本の多くの企業が成果主義の名のもとに、実質的には年功序列制度を延命させるような中途半端な形の制度を導入してしまい、それが若い世代の閉塞感を生んでいることを批判しているのだと思います。

ただ個人的には、日本企業の人事システムが欧米流の成果主義に一本化されてしまうと、それはそれでまた別の問題が生じてくるような気がします。

年功序列制度にせよ、欧米流の成果主義にせよ、それぞれのシステムには一長一短があって、それらがうまく機能する条件も違うと思います。

問題は、どちらが正しいかということよりも、それぞれの企業がおかれた状況に最もふさわしい制度を、利害関係者の誰かに負担を押しつけることなく、タイミングよく導入していくことなのだと思います。すごく難しいことですが……。










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