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旅の名言 「成長というよりは……」

 うーん……。
 苦難を乗り越え、自分を変えるためにオレはインドに行ったはずだ。だが、成長というよりは明らかに以前より原始的な人間になっているように感じるのは、オレの気のせいだろうか。


『インドなんて二度と行くか!ボケ!! …でもまた行きたいかも』 さくら 剛 アルファポリス より
この本の紹介記事

さくら剛氏のお笑いインド旅行記、『インドなんて二度と行くか!ボケ!! …でもまた行きたいかも』からの一節です。

自称ひきこもりのさくら氏は、自分の情けない現状を憂い、一念発起してインドへと旅立ちます。彼はバックパッカーとして北インドの観光地を巡り、旅行者に群がる「不良インド人」たちとのバトルを繰り広げ、激しいカルチャーショックを乗り越えながら、たくましく旅を続けていきます。

しかし、旅も終わりに近づいた頃、彼はふと自らの旅を振り返り、何か人間的な成長のようなものを求めてインドへと旅立ったはずが、右手を使ってメシを喰い、トイレでは左手を使い、わずかな金をめぐってインド人と怒鳴り合う暮らしにすっかりなじんでしまった自分を発見します。

これはどう見ても、人間として成長しているというより、退化なのではないか……。

言うまでもなく、ここはギャグとして笑うところなのですが、インドを旅したことのある人には、これを単なるギャグとして、笑ってそのままスルーできない人もいるかもしれません。

インドでさくら氏と全く同じような経験をし、インド人の暮らしにすっかり同化してしまった自分の姿を思い出して苦笑いしつつも、同時に、それを単なる退化だとは思えない、思いたくないという旅人もいるのではないでしょうか。

「神秘の国インド」というイメージに憧れたり、「インドに行って人生観が変わった」という旅人のみやげ話に影響されてインドを目指す旅人は多いと思います。

しかし、インドに到着した彼らを待っているのは、インドの幻想的でスピリチュアルなイメージ以前の、非常にショッキングな現実です。

快適で安全な日本の暮らしに慣れきった旅人は、目の前の貧困や不潔や差別や喧騒や混乱にたじろぎ、強烈なカルチャーショックに襲われながら、とにかくインドでのワイルドな暮らしに適応することを余儀なくされるのです。

それは、何か高尚な学びを得るというよりは、インドの放つ圧倒的なパワーに巻き込まれ、インドの人々の暮らしに同化していくだけのことで、一見したところ、人間的な成長や進歩とはほど遠いものです。

ただ、私は思うのですが、自分の育った文化とは全く異質な世界に巻き込まれ、そこで生き延びていくすべを身につけるというのは、どんな人にとっても、すばらしい学習の機会なのではないでしょうか。

そして、さまざまな生活スタイルや、ものの見方や考え方を学ぶことによって、人はより自由になり、行動の選択の幅も広がると思うのです。

例えば、右手でメシを喰うようになるということは、箸やスプーンという道具にとらわれずに食事ができるようになるということでもあります。また、食材に手でじかに触れることで、これまでにない新たな感覚の世界が開けるという面白さもあります。

同様に、トイレで左手を使うようになるということは、トイレットペーパーが手に入らないところでも生きていけるようになるということであり、旅人は、より大きな行動の自由を得ることになるわけです。

こうした行為は、現代の日本の暮らしの中では下品とか不潔という理由でタブーになってしまっていますが、所変われば何の問題もなく通用する立派な文化です。

旅という実践を通じて、私たちは、生まれ育った日本の文化を別の角度から見つめ直せるだけでなく、別の文化を通して学ぶさまざまなことが、この地球上でたくましく生きていくための知恵となるのです。

つまり、インドへの旅によって、旅人は一見「原始的」になったような気がするかもしれませんが、それは単なる退化ではなく、むしろ、自分にとって異質な文化を学ぶことによって、自らの経験と行動の幅を広げ、より大きな自由を得ていると考えることもできるのです。

しかしまあ、こんなことを言ってみても、インドの庶民の生活を自分たちと対等な文化として認めない人に対しては、こういう理屈は通じないのかもしれません。

文明の直線的な進化を信じ、「先進国」と「後進国」のランク付けをし、新しいテクノロジーや快適な生活に至上の価値を見出す人にとっては、トイレで左手が使えるようになることを「成長」とは言わないのでしょう。

そういう人々にとっては、そもそもインドへ行くことが人間的な成長につながるという発想すらあり得ないだろうし、インドの生活に慣れることはすなわち「インドぼけ」や「インド病」であって、全力で防がなければいけない災厄なのかもしれません。

もっとも、そういうステレオタイプな考え方が日本の社会に浸透しているからこそ、冒頭のさくら氏の言葉がギャグとして成立するのですが……。


JUGEMテーマ:旅行

at 18:46, 浪人, 旅の名言〜旅人

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