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旅の名言 「カオサンは……」

 カオサンのゲストハウスのあるオーナーにいわせると、春休みや夏休みといった学生が多い時期がすぎると、ここに集まってくる日本人の年齢が急に上がるのだという。平均年齢にすると、十歳近く高くなるらしい。ここ数年の傾向で、その人数は日本の景気を反映している気がするという。景気がよくなると増えるのではなく、その逆の傾向らしい。会社が潰れたり、リストラに遭った二十代後半から三十代の男がカオサンにやってくる。その意味では、カオサンという土地は、日本の合わせ鏡のような役割を担っているのかもしれない。日本人の後ろ姿をいつも映し出している鏡ということだろうか。
 そのなかには、かなり追い詰められている日本人がいる。そしてそのうちの何人かが、この街で蘇生する。カオサンは日本人のあるグループにしたらリハビリセンターのようなものなのだろうか。聖域といった人がいたが、たしかにそんな要素を兼ね備えている。


『日本を降りる若者たち』 下川 裕治 講談社現代新書 より
この本の紹介記事

ここ数年、日本人の間に増えているといわれる「外こもり」(派遣やアルバイトで集中的に金を稼ぎ、東南アジアなど物価の安い国で金がなくなるまでのんびりと生活するライフスタイル)の実態を取材した、旅行作家の下川裕治氏の著作『日本を降りる若者たち』からの一節です。

東南アジアを旅する人にとって、バンコクのカオサン通りは特別の場所です。欧米人バックパッカー向けの安宿街だった一角が、ここ20年ほどの間に急速な発展を遂げ、今ではタイの若者も集まる一大観光スポットにまでなっています。

ある意味、有名になりすぎて、物価が上がったり騒がし過ぎたりとマイナス要素も出てきたため、中には敬遠する人もいるようですが、それでもほとんどの旅人にとっては、今でも便利で快適なスポットであることは確かです。

別の国への格安航空券を手に入れるために、日本を出発してまずはカオサンを目指すという人は多いし、東南アジアの辺境を旅した後、カオサンにしばし「沈没」して旅の疲れを癒すという旅人も多いでしょう。

あるいは、個人旅行の初心者にとっては、日本を出てカオサン通りで数日を過ごすだけでもちょっとした冒険気分を味わえるだろうし、カオサンの醸し出す無国籍な雰囲気が気に入ってしまい、バンコクというよりカオサンへのリピーターになってしまった人もいるかもしれません。

旅行者には、一人ひとり違う目的や嗜好があるものですが、カオサン通りには、そんな旅人の多様な要求をそれなりに(あくまでも「それなりに」ですが)受け入れてしまう懐の深さがあるように思います。

冒頭の引用にあるように、日本でリストラされた男たちが流れ着き、再び立ち上がるまでの間リハビリできる場所というのも、カオサンの持つもう一つの顔なのでしょう。

もちろん、カオサンでリハビリといっても、何か特別なサービスが受けられるというわけではありません。多国籍のバックパッカーとバンコクの人々が醸し出す解放的な雰囲気に浸り、何をするともなくボーッと毎日を過ごしているうちに、自然にリラックスし、いつの間にか前向きな力が甦ってくるような気がするのではないでしょうか。

会社を辞めたり、放り出されたりした後にカオサンに流れ着く人間は、きっと、それ以前の旅行などを通じてカオサン通りの存在を知っていた人たちなのでしょう。自分にとって隠れ家なり「リハビリセンター」になり得る場所をあらかじめ知っていたという意味では、彼らは他のリストラ組に比べれば、少しだけ恵まれているのだと言えなくもないかもしれません。

ただ、『日本を降りる若者たち』の中でも指摘されていることですが、彼らがバンコクで癒され、「蘇生」したつもりになっても、問題が根本的に解決するわけではありません。

かなりの貯えがあるとか、定年を過ぎていて海外で年金暮らしができるとかいうなら話は別ですが、そうではない大多数の人は、いずれは日本に戻って、日本で稼ぎながら生きていくことを考えるしかありません。

カオサンが提供してくれる癒しはあくまでも一時的なもので、元気になって日本に帰れば、再び辛い現実に直面することになるでしょう。癒され、リラックスした分、その辛さはより一層心身にこたえるのではないでしょうか。

日本での辛い現実と、南の国でのつかの間の解放感――。

日本と東南アジアとの間を往き来して暮らす「外こもり」の人々は、ある意味、この解きがたいジレンマに囚われ、出口が見つからないまま、永遠の往復運動を繰り返しているということなのかもしれません……。


JUGEMテーマ:旅行

at 19:16, 浪人, 旅の名言〜土地の印象

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