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『インドの大道商人』

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

この本の「大道商人」とは、店舗を持たず、わずかな商品や素朴な技術だけを売り物に、人通りの多い路上に座り込んで、ささやかな商売をしつつ日々を暮らす庶民のことです。

野菜売り、果物売り、揚げ物屋、お茶売り、ジュース売り、水売り、薬売り、装身具売り、笛売り、仕立屋、洗濯屋、床屋、耳掻き、靴磨き、歯医者、両替商、代書屋、辻写真師、占い師、曲芸師、蛇つかい、力車夫、工事人夫……。

どこにでも見られるようなポピュラーな商売に始まって、各種のサービス、エンターテインメントや医療行為まで、庶民の日常生活に関わるあらゆるニーズが、路上の超零細商人・職人たちによって担われています。

インドを旅する人なら、彼らの姿を毎日飽きるほど目にするはずですが、大道商人たちの姿に注目し、ここまで徹底して取材した本は、これまで存在しなかったのではないでしょうか。

著者の山田和氏は、インド北西部のラジャスタン州や首都デリーを中心に、十年以上にわたって約300人の大道商人に取材をしたといいます。この本では、その中から100あまりの商人の姿が、美しい写真とともに紹介されています。

めずらしいところでは、体重計一つで商売する体重測定屋とか、歯ブラシになる木の枝を売る商人、ゴムぞうりの鼻緒だけを売っている鼻緒売り、持ち運び式の子供用観覧車を人力で回す遊覧車屋、なんていうものまであります。

写真を見ていると、インドの街の喧騒と混沌を生み出している人々が、一人ひとりスポットライトを当てられ、クローズアップされていくような感じがします。そして、現地を歩く旅人でさえつい見逃してしまうような彼らの姿を改めて眺めていると、一人ひとりの大道商人がつくり上げ、支えているささやかな小宇宙の数々が見えてくるような気がします。

写真の中の大道商人たちは、もちろん、埃や汚れにまみれています。豊かで潔癖になった日本人の中には、彼らの姿に、みすぼらしさや不潔さしか見出せない人もいるかもしれません。

しかし、最初のそうした表面的な感覚をやり過ごし、黙って写真を眺めているうちに、彼らの中にある、したたかな逞しさ、素朴で力強い美しさのようなものが伝わってくるのではないでしょうか。

大道商人たちと真剣に向き合い、丁寧な取材を続けた山田氏の姿勢には、「大地の民」である彼らの存在に対する深い敬意が感じられます。

ちなみに、山田氏の取材にあたってのポリシーや取材方法、旅の装備などについては、「第三章 インタヴュー事始」で詳しく触れられています。また、大道商人たちの心を体験的に理解するために、自ら路上に座り、日本から持参したある商品を売ってみたという、楽しいエピソードも描かれています。

ところで、この本のための取材は今から20〜30年前のことで、本文中に書かれているインドの物価水準やルピーの対円レートは、現在では大きく異なっています。また、インドの社会自体も、世界全体を巻き込むグローバリゼーションの中で激しく変化しつつあります。

近代化と経済発展をなしとげた日本において、大道商人が激減してしまったように、山田氏が写し取った人々の姿も、近い将来、もしかすると、インドに関する歴史的な資料になってしまう日がくるのかもしれません。

もちろん、少なくとも当分の間は、インドの街角に満ちている喧騒と混沌のパワーは健在のはずだし、人なつっこいというより、しつこいインドの商売人たちと旅人との激しいバトルも、当面なくなることはないのでしょうが……。

ただ、この本の中に写し取られている、ウソのない自然そのもののような、ありのままのインドの人々の姿を目に焼きつけておきたいという人は、できるだけ早いうちにインドを旅しておいたほうがいいのかもしれません。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書 

at 18:35, 浪人, 本の旅〜インド・南アジア

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