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『未知の贈りもの』

評価 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です

久しぶりに、ライアル・ワトソン氏の作品を読み返してみました。

この『未知の贈りもの』は、ニューエイジ・サイエンスの書であり、オカルトであり、南洋の自然に関するエッセイであり、ファンタジーであり、旅行記でもあるような、つまりは、「科学者と夢想家が同居している(訳者あとがき)」ワトソン氏の知識と思想と行動の集大成のような作品です。

インドネシア東部の島々に興味をもった「私」(ワトソン氏)は、現地でチャーターした小舟で東部列島を旅していているうちに嵐に遭遇し、数日後、ヌス・タリアンという小さな火山島に流れ着きます。

島の人々に客人として迎えられた彼は、学校の先生としてそこにしばらく滞在することになり、ティアという不思議な少女に出会います。彼女は不幸な生い立ちをもつ孤独な少女でしたが、踊り手としてのたぐいまれな能力に恵まれていたばかりか、共感覚や予知など、いわゆる超感覚的な力をも持ち合わせていました。

ラマダンの最中、海岸に打ち上げられた若いクジラの死を看取ったことをきっかけに、ティアは驚くべき癒しの能力に目覚めます。しかし、彼女の起こした奇跡は、正統派イスラムの教えを根づかせようとする人々と、伝統的なアニミズムの名残りを守り続ける人々との間に深刻な対立を招くことになったのでした。

対立は緊張の度を強め、やがて……。

ワトソン氏は、自らを一連の出来事の観察者という立場に置き、サンゴ礁の島の豊かな自然や、島の生き物たち、古い伝統の色濃く残る村の暮らしの生き生きとした描写を交えながら、ティアをめぐる不思議な物語を語っていきます。

そして同時に、生命体としての地球、聖なる場所の意味、超感覚的知覚や心霊治療に見られるサイキックな力、量子力学がもたらした古くて新しい宇宙観と人間の意識の問題など、いかにもワトソン氏らしいテーマがこれでもかというくらいに盛り込まれています。

ティアの物語を縦糸とすれば、ワトソン氏のニューエイジ的で饒舌なコメントが横糸の役割を果たしているといえるかもしれません。本書の緻密な構成とあいまって、この本全体が、まるできらびやかで謎めいた文様の織物のようです。

彼は、アカデミックな自然科学者が禁欲し、決して踏み込もうとはしない薄闇の領域に軽々と足を踏み入れる一方で、オカルト的なものを全て肯定してしまうような過ちに陥ることもありません。彼は見える世界と見えない世界の微妙な境界を自在に往来しながら、「意識と現実の縁のみに存在する無形の神秘に実質を与え」ようと試みているように見えます。

それはまさに、本書のテーマでもある「踊り」そのものであり、彼もまたこの世界の存在と同調し、この本という舞台で、知的なダンスを繰り広げているのかもしれません。

ただ、ワトソン氏はこの物語について、「島の名以外はすべて変らない事実」であると書いてはいるのですが、それがいわゆるノンフィクションという意味での「事実」かどうかについては、私も多少の疑問を感じます。また、彼は、一部の世界では「トンデモ科学」の親玉みたいに言われているし、それでなくても、人によっては、オカルトっぽさの漂うこの本の内容に抵抗を感じる人もいるのではないかと思います。

しかし、物事の真偽や白黒をハッキリさせようとするような読み方では、この本の魅力を十分に味わうことはできないでしょう。この本の魅力は、一見したところ堅固に見える私たちの日常世界の周縁部に垣間見える、不思議で何とも説明のつかないもの、人間にとって未知の領域に、あえて分け入っていく冒険的な面白さやワクワク感にあるからです。

残念ながら、現在この本は絶版になっているようです。興味のある方は図書館や古書店で探してみてください。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書 

at 18:47, 浪人, 本の旅〜旅の物語

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