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不気味ロボット

数日前のニュースで、産業技術総合研究所(産総研)が開発したロボット「HRP−4C」の映像を見ました。

【美女ロボットは体重43キロ、体形=20代の日本人女性】

 若い女性の顔にスリムな体形、動作も滑らかな二足歩行ロボットを、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が開発し、16日、報道陣に公開した。

 今月23日に開幕するファッションショー「東京発 日本ファッション・ウイーク」で一般にお披露目する。

 人間型ロボットの最先端を目指し、2億円かけて開発した「HRP−4C」は、身長158センチ、体重43キロ。体形は、20代の平均的な日本人女性に基づいた。

 42個の高性能モーターやニッケル水素吸蔵合金のバッテリーなどを内蔵しながらも、生身の人間より軽くすることに成功した。

(読売新聞 2009年3月16日)

2000年にホンダのASIMOが発表されたときには、ロボットがバランスをとりながら二足歩行している姿を見てかなりの衝撃を受けたものですが、あれから10年足らずの間に、人間の顔の表情まで模倣したロボット(というより、もはやアンドロイド)が歩き回るようになったという事実に、再び衝撃を覚えました。

TVや新聞では、おおむね、「日本のテクノロジーはすごい!」みたいなノリで報道されているようだし、私もその点に関して異論はないのですが、一方で、ASIMO登場のときとは違う、気味の悪さみたいなものを感じたのも確かです。

もっとも、人間そっくりのロボットに対して不気味さを感じるのは、別に私に限ったことではなく、ロボット工学の分野では、かなり昔から「不気味の谷現象」として知られています。
ウィキペディア 「不気味の谷現象」

それによれば、ロボットの外観や動作が人間に近づくと、人間はより親近感や好感を覚える傾向にあるのですが、ある程度以上までそれが進むと、今度は逆に強い嫌悪感や違和感を覚えるようになるというのです。そして、ロボットがさらに人間そっくりになり、人間と見分けがつかないまでになると、再び人間はロボットに親近感や好感を覚えるようになるとされています。

その理由の一つとして、ロボットが人間とかけ離れた形をしているときには、ロボットの中にある人間的特徴の方が目立って認識されるので、人間はそこに親近感を感じるのですが、ロボットが人間にかなり似てくると、むしろそのロボットの非人間的特徴の方に目が行ってしまい、そこに気味の悪さを感じてしまうのだと考えられています。

そう言われてみると、たしかにそうなのかもしれないな、という気がします。

今回のロボット「HRP−4C」が、他の人の目にどう映っているかは分かりません。人によっては、人間そっくりで愛らしいと感じるかもしれません。でも、少なくとも私の場合は、何か、心がザワザワするような違和感を感じるのです。

ちなみに、この「不気味の谷現象」を、他のさまざまなロボットやCGの映像にあてはめて紹介した面白い映像もあります。
ブログ 「高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」」  「PopSciの「不気味の谷ツアー」動画:日本の技術も多数登場」

ところで、「不気味の谷現象」の説明によれば、ロボットの外見や動作が極限まで人間に似てくると、人間はそれを不気味に感じなくなるとされています。実際、上記の「不気味の谷ツアー」の動画には、非常によくできた人間の顔のCG映像が出てくるのですが、それはあまりにリアルで、ほとんど違和感を感じません。

これまでの技術進化のスピードを考えると、あと10年もしないうちに、人間型ロボットの表情や動作が、現在のCG映像並みにリアルになることも充分に考えられます。そうなると、近い将来、人間はアンドロイドを見ても、もはやそれが不気味だとは思わなくなくなるのでしょうか。

ただ、人間にそっくりすぎて違和感を感じないといっても、人間とロボットの区別自体がなくなるわけではありません。私たちが何も感じなくなるとすれば、それは、私たちの心の中の、人間とそれ以外とを識別する感覚がだまされてしまうということです。

しかし、私たちの日常的で表面的な意識では何も感じなくなるとしても、無意識においては何らかの違和感を感じ続けることになるだろうし、そうなることでかえって人間という存在の確かさに対する、漠然とした、しかし非常に深刻な不安をかきたてることになるのではないでしょうか。

まあ、私が生きている間には、SFのように、人間とアンドロイドとの区別がつかなくなるというレベルまではいかないと思いますが……。

それと、私は思うのですが、「HRP−4C」のようなロボットに対して感じる不気味さというのは、人間そっくりの外見だけが原因ではないような気がします。

人間がモノを作り出すときには、その裏に必ず何らかの意図や目的があるし、モノの製作プロセスにも、作り手の時間や労力、深い思い入れが注ぎ込まれています。そして、そうした意図や思い入れの深さは、モノの外見やデザインにも色濃く反映されるものです。

言葉ではうまく表現できないのですが、そうした、モノの外見にまでにじみ出てくる、作り手の意図や思い入れの「濃さ」のようなものは、そのモノに一種独特の雰囲気のようなものを与え、それが、見る人の心に不気味さを感じさせることもあるのではないでしょうか。

これは私だけの特異な感じ方なのかもしれませんが、私は「HRP−4C」に、何か、アンバランスでちょっと濃すぎる思い入れのようなものを感じるのです。それは、実際にこれを開発・設計・製作したエンジニアたちの個人的な意図や思い入れというよりは、このリアル世界に、人間そっくりのアンドロイド的な存在を生み出そうとする、人間一般の深い「業」のようなものです。

アンドロイドの外見が細部までリアルであればあるほど、そこには測り知れないほどのエンジニアの熱意と努力が注ぎ込まれていることになるわけで、それはまた、そのようなリアルな存在を必死で物質化しようとする、人間の執念や業の深さを示すバロメーターでもあるような気がするのです。

それにしても、なぜ若い女性のロボットなのでしょう?

ロボットは、大きさにしても、体の構造にしても、機能にしても、人間という種の物理的な制約からは自由でいられるのだから、何もロボットを、人間そのものの姿に限りなく近づけていく必要はないはずなのに……。

その点に関しては、今回の人間型ロボット開発にも一応ちゃんとした目的があるそうで、展示会やファッションショーなどの「エンターテインメント分野への応用」を狙っているんだそうです。
産総研プレスリリース 「人間に近い外観と動作性能を備えたロボットの開発に成功」

でも、ちょっと考えてみても、現在そういう業界にアンドロイドへの強い需要があるようには見えないし、外見や動きが人間そっくりなロボットが量産されたとして、それがすぐにビジネスとして採算に乗るようにも思えません。

そうした、実際のロボットの精密さとは不釣り合いなほど漠然とした開発理由からは、むしろ、理由はともかく、とにかく最先端技術を駆使して、若い女性にそっくりのアンドロイドを作ってみたかったというエンジニアのホンネが垣間見えます。

美しく若い、しかもいつまでも若いままの女性のアンドロイドを製作するというのは、科学技術の発展とか、日本経済への貢献とかいう以前に、時代を超えた、譲れない「男のロマン」なのでしょう。そして、そうであるならば、誰が何と言おうと、エンジニアたちは今後も熱い情熱とともに開発を続けていくことになるのでしょう。

もっとも、その突出した熱意のアンバランスさが、ロボットの不気味さを増幅するのに一役買っているのかもしれませんが……。

ただ、私も、そういう「男のロマン」というものが全く理解できないわけではありません。それに正直な話、近い将来彼らが果たしてどんなアンドロイドを作り出すのか、私もちょっと見てみたい気はします……。


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独善竜, 2009/03/22 10:31 AM

面白い記事の紹介ありがとうございます。
以前、コンピュータゲームで、グラフィックが精緻になって逆にキャラに違和感を感じてしまう記事をどこかで読んだ記憶がありますが、同じ類の話みたいですね。

私は美少女型よりも、産総研プレスリリース の図3の奥にあるタイプがいいですね。
また、より大型化を希望します。^^

浪人, 2009/03/22 6:44 PM

独善竜さん、コメントありがとうございました。

私も、ロボットにはいかにもロボットっぽい姿をしていてほしいと思います。

将来、大勢の人でにぎわう街角で、ふと気がついたら自分以外はみんなアンドロイドだったりしたら、悲しすぎます……。

ただ、一方で、人間の技術がどこまで人間そっくりのロボットを作れるのか、その行く末を見てみたいという気はしますが……。










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