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旅の名言 「人を疑うことで……」

 私の周りでも、彼らの笑顔と親切を真に受けて被害に遭った人は多い。したがってインドを旅するとき、「人を見たら泥棒と思え」という諺を意識しないわけにはいかなかった。笑顔を疑い、親切を辞退することによって私は被害に遭わずにすんだが、そのかわりリスクも大きかった。人を疑うことで自分が傷ついたのである。
 私は、貧しい人たちから手間賃さえ出ない値段で物を買おうとして周囲のインド人に諌められたことがあったし、心からの親切を下心のある行為にちがいないと疑って相手を邪慳に扱ったこともあった。あとで事実を知って自己嫌悪に陥ったこともあった。それらは私の悪意だけで生み出されたものであり、したがって鉛を飲んだように重苦しい慚愧の思いが澱のように残ったが、そのような体験をとおして私は、インドには高潔な人々が日本よりもたくさんおり、清らかな人生を求める文化が今なお息づいていることを知ったのである。

『21世紀のインド人 ― カーストvs世界経済』 山田 和 平凡社 より
この本の紹介記事

インドという異文化と付き合っていくことの難しさを、歯に衣着せず正面から描いた、山田和氏の著作からの一節です。

この本には、海千山千のインド商人と取引するビジネスマンや、インドで暮らす外国人駐在員、そして山田氏自身が旅先で体験した、仰天するようなエピソードが満載されていますが、それらは私たちが気軽にカルチャー・ショックと呼ぶようなレベルを超えています。

インドを旅したことがあり、インド的世界にはそれなりに慣れているつもりの私でも、この本を読んだときには何度もため息が出ました。人によっては、この本を読み進めるうちに、インドでのビジネスはおろか、旅することすら恐ろしくなってしまうかもしれません。

ただ、山田氏は決してインドを貶めるためにこの本を書いたのではありません。これまで何十年にもわたってインドと付き合ってきて、インドを心から愛する山田氏が、後に続くであろう多くの日本人に向けて、無用な誤解や苦労を少しでも減らすことができるよう、親切で得がたいアドバイスをしてくれているのだととらえるべきなのでしょう。

また、この本に書かれている内容は、仕事でインドと関わるビジネスマンだけでなく、インドを旅する人にとっても有益だと思います。

ただ、インドについて、そのネガティブな側面や、「不良インド人」の行動パターンをあらかじめ知っておくことは、旅人の危機管理上、非常に役立つことは間違いないのですが、一方で、そうした知識が頭の中にあると、インド人に対して始めから身構えてしまいがちになるし、実際に旅先で似たような事例に遭遇すれば、なおさら警戒心を強めてしまうのも確かです。

もっとも、これはインドに限った話ではなく、自分にとって見知らぬ土地を旅するときには、多かれ少なかれあてはまることなのでしょうが……。

安全に旅をすることは、旅人として何よりも優先されるべきポイントですが、その一方で、必要以上に警戒しすぎれば、思いがけない出会いや、旅の面白い展開から自分を遠ざけてしまうことにもなります。旅の無事ばかりを考えて、24時間危機管理に専念していたのでは、何のために旅をするのか分からなくなってしまいます。

旅人がどこまで自分をオープンにし、どこまで慎重になるか、そのちょうどいいバランスは、山田氏のように何度も傷つき、苦い経験をしながら、少しずつ体得していくしかないような気がします。現実問題として、すべての人を信じることなどできないし、信じて被害に遭うリスクの大きさを考えれば、見知らぬ人の笑顔と親切が、心からの親切なのか、それとも下心なのか、自信をもって判断できないときには、それを敬遠するしかないからです。

しかし、そういう判断力を磨いていく経験は、なかなか日本ではできないことだし、そうした判断力をしっかり培うことで、初めて見えてくる世界もあるのだろうと思います。そう思えば、インドのような混沌とした異世界に飛び込んで行くことにも、それなりの意味があるのではないでしょうか。

でもまあ、インドと長い付き合いを続けられるかどうかは、結局のところ、理屈を超えた好き嫌いの問題なのでしょう。インドの「何か」にとり憑かれてしまった旅人は、周りが何と言おうと、どんなにインドに苦労させられようと、嬉々としてインドに通いつめるものです……。


JUGEMテーマ:旅行 

at 18:42, 浪人, 旅の名言〜危機と直感

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