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『幻獣ムベンベを追え』

 

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります


この本は、謎の怪獣の正体を突き止めるべく、アフリカのジャングル探検に挑んだ早大探検部の遠征「コンゴ・ドラゴン・プロジェクト」の一部始終を記録したもので、「辺境専門のライター」高野秀行氏のデビュー作でもあります。

アフリカ大陸中央部に位置するコンゴのテレ湖に、太古の昔より棲息するといわれる巨大な怪獣モケーレ・ムベンベ、通称コンゴ・ドラゴンは、未確認生物(UMA)の探索を続ける人々の間では、ネス湖のネッシーに並ぶほどの重要ターゲットであるともいわれます。
ウィキペディア 「モケーレ・ムベンベ」

早稲田大学の探検部員だった高野氏は、駒大探検部がムベンベ探しに行ったのを聞きつけると、自らも現地に乗り込んで謎の怪獣をめぐる真実を確かめようと、プロジェクトを立ち上げ、アフリカ遠征のための隊員を募ります。

しかし、当時のコンゴ人民共和国(現在のコンゴ共和国)は社会主義の軍事独裁政権で、外国人が旅行をすることすら容易ではありませんでした。

高野氏は、公用語のフランス語、さらには現地の日常語であるリンガラ語まで学び、予備調査のためにコンゴに飛んで、現地の人々や政府の役人と人間関係を築きます。帰国後、手紙のやりとりによる長い交渉を経て、ようやくコンゴ政府からテレ湖探索の許可をとりつけることに成功します。

準備開始から2年、ついに1988年の春、高野氏をリーダーとして、探検部員9名に社会人2名を加えた11名の遠征隊がコンゴに乗り込みます。そして……。

怪獣+ジャングル+探検隊という、ある意味、脱力してしまうほどベタなその方向性に、これはウケ狙いの探検ゴッコではないかと思ってしまう人もいるかもしれませんが、彼らは真剣そのものです。

メンバーのほとんどが学生で、専門知識や機材・資金の面でも万全とはいえず、手作り感あふれる素人の探検隊であるとはいえ、怪獣探査にかける情熱は生半可なものではなく、テレ湖にキャンプを設置して1カ月以上滞在し、その間、3交代で昼夜を問わずムベンベの出現を待ち構えるという徹底ぶりです。

しかも、神聖な湖への立ち入りを快く思わない村人との度重なるもめごとや、執拗な虫の襲撃、マラリアに倒れる隊員、機材の故障、食糧不足など、遠征隊には次から次へとトラブルが襲いかかり、彼らのテレ湖滞在は、探査というより、ほとんどサバイバルの様相を呈し始めます。

それでも、リーダーの高野氏とメンバーたちは、「何とかなると思えば、たいてい何とかなる」という「非論理的な強い信念」で、迫り来る危機にしたたかに対処していくのです。

もちろん、大方の予想どおり、結果的に怪獣を発見することはできないわけですが……。

でも、きっとこの本を読む人は、怪獣が見つかるかどうかなんてことよりも、高野氏の語る生き生きとしたアフリカ冒険物語にワクワクし、また、社会のメインストリームからはバカバカしいとして一蹴されそうなテーマに真剣に打ち込み、青春を賭ける彼らの突き抜けた生き方に、胸のすくような思いをするのではないでしょうか。

日本全体がバブルに舞い上がっていたころ、彼らはアフリカのジャングルで飢えに苦しみながら、現れるかどうかもわからない怪獣を、24時間態勢でひたすら待ち続けていたのです。個人的には、こういうユニークな人たちこそ、現在の日本にとって貴重な人材ではないかとすら思います。

また、この本には、大人数の探検隊の引き起こすドタバタ劇が、高野氏の簡潔でツボを押さえた文章でうまく表現されていて、探検の記録という以上に、エンターテインメントとしても楽しめる内容になっています。

もっとも、私たちが笑いながらこの本を読めるのも、彼ら全員が生きて帰国できたからこそで、現地でマラリアを発病してしまったメンバーへの対応など、グループでのリスクを伴う旅には、それ特有の難しさやジレンマがあるということも、この本を通じて見えてくるのですが……。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書

at 17:48, 浪人, 本の旅〜アフリカ

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