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『アジア・旅の五十音』

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

この本は、東南アジア庶民の食文化を網羅した『東南アジアの日常茶飯』などで知られるライターの前川健一氏が、アジアの旅にまつわるさまざまな言葉を、「あ」から「ん」まで50音順に配列したユニークな作品です。

「ガイドブック」「ドミトリー」「ひとり旅」「旅費」など、個人旅行に関するさまざまな用語から、「警官」「下痢」「怖い」「詐欺」といった旅のトラブル、「孤独」「ささやかなぜいたく」「旅の自慢」「ぬけ殻」「値切る」など、旅人の生態についての文章、また、「自己責任」「旅行と旅」など、旅についてちょっと考えさせられる項目もあれば、「雨」「ロウソク」「ワッパー」のように、心に残る旅先でのエピソードが描かれていたりします。

50音順に言葉を並べてあるといっても、辞典のように無味乾燥な用語集ではなく、どの項目にも前川氏の膨大な旅の体験がにじみ出ていて、しかもちょっとひねりが効いていて、読んでいて飽きません。

そして、読んでいるうちに、断片的な文章の堆積の向こうに、前川氏の独特の旅のスタイルや、価値観や世界観までもが浮かび上がってきます。

予定を決めず、片道だけの切符を手にし、観光地を避け、気の向くままにひとり旅を繰り返す彼のスタイルに憧れる読者は多いと思いますが、一方で、それは今の日本社会の主流である忙しい生き方とは相容れないところもあります。

彼のような旅をしたいと思っても、実際のところ、行動に踏み切れない人の方がずっと多いのではないでしょうか。そしてそれは、自分の好きなように旅を続けながら、どうやってメシを食っていけばいいのか、つまり、どうやって仕事と両立させるのかという、旅好きの人間にとっての一大難問が立ちはだかっているためかもしれません……。

ところで、この本の中でも触れられていますが、ひとり旅には、いろいろな物思いや、思考や、過去の記憶を誘うところがあります。

そして、そうした思考は、腰を落ち着け、何か一つのテーマについてじっくり探究していくというより、旅先の多彩な風物に触発されるせいか、関心がありとあらゆるテーマに広がっていくような気がします。あるいは、車窓の風景が次々と流れ去っていくように、ある記憶や思いがとりとめもなく心に浮かび、しばしのあいだ旅人の心をとらえ、やがて静かに消えていくような感じになるのではないでしょうか。

そう考えると、一見脈絡のない、さまざまなテーマの断片的な文章を集めたこの本の形式自体が、旅、とくにひとり旅を続ける旅人の内面そのものをリアルに表現したモデルであるような気もしてきます。

この本を読んでいると、旅行記やエッセイというより、もっと生々しい印象を受けるのは、そのせいなのかもしれません。もっとも、それは私にとって決して不快なものではなく、どこかアジアの安宿でくつろぎながら、あるいは屋台で料理をつつきながら、年季の入った旅人のよもやま話に耳を傾けているような楽しさを感じるということなのですが……。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書
 

at 19:10, 浪人, 本の旅〜東南アジア

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