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『旅する力 ― 深夜特急ノート』

文庫版はこちら

 

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

ノンフィクション作家の沢木耕太郎氏が、20代半ばで仕事を中断して長い旅に出発し、乗り合いバスでユーラシア大陸を駆け抜けたのは1970年代のことでした。

その旅を描いた『深夜特急』は、90年代に「第三便」が出版されることでようやく完結したのですが、作品はさまざまな世代の読者に好評をもって受け入れられただけでなく、自由な旅に憧れる若者たちにとっては旅のバイブルのような存在になったとも言われています。

この『旅する力』と題されたエッセイは、「いわば、『深夜特急』の最終便」(あとがき)ということで、還暦を迎えた沢木氏が、青年時代のユーラシアの旅と『深夜特急』執筆のプロセスを、自らの半生と重ね合わせて振り返る内容になっています。

沢木氏自身の旅の定義に始まって、子供の頃や学生時代の旅のエピソード、ノンフィクション・ライターとして歩み始めたきっかけ、ロンドンまで乗り合いバスで旅する構想が生まれた経緯、旅のルート選択、資金と持ち物リスト、旅先で書いた手紙・撮った写真・読んだ本のこと、『深夜特急』の執筆過程、その後の映像化作品『劇的紀行 深夜特急』と猿岩石ブームのことなど、『深夜特急』をめぐる興味深い裏話が綴られるとともに、旅で得たものと失ったもの、旅の適齢期という問題、そして、本書のタイトルにもなっている「旅する力」についてなど、旅に関する深い考察も随所に織り込まれています。

そして、これらはまた、『深夜特急』の出版以来、読者から寄せられてきたさまざまな疑問や質問に対する解答にもなっています。

また、この本には、『深夜特急』の本文には描かれなかった実際の帰国前後の話など、興味深いエピソードも収められているので、『深夜特急』の熱烈なファンならもちろんおすすめです。

ただ、個人的には、以前に出版された沢木氏の旅の写真集『天涯』の文庫版に収められた文章と、テーマも内容も重なる部分が多かったので、読んでいてそれほど目新しさは感じませんでした。

それと、『深夜特急』の若々しい疾走感に感激した人が、この本にその続編みたいな内容を期待して読むと、やや物足りなさを感じてしまうのではないかと思います。

この本には、旅について、人生について、沢木氏がこれまでの体験から紡ぎ出した深い言葉が詰まっているし、かつての『深夜特急』の旅人の、さらに円熟した境地を垣間見ることができるのですが、自伝的要素の強いこのエッセイは、香港からロンドンまでの実際の旅そのものを描いた『深夜特急』というひとつの作品とは、明らかに別のものだからです。

ところで、『深夜特急』の中には、旅の展開を人生になぞらえる描写がありました。

 

 

 旅がもし本当に人生に似ているものなら、旅には旅の生涯というものがあるのかもしれない。人の一生に幼年期があり、少年期があり、青年期があり、壮年期があり、老年期があるように、長い旅にもそれに似た移り変わりがあるのかもしれない。
     (文庫版 第五巻)


つまり、『深夜特急』の中では、自分が旅をしながら、その旅に人生と同じ移り変わりを見ているのですが、この『旅する力』では逆に、沢木氏自身の人生行路を「旅」という切り口から捉え、これまでのさまざまな旅の記憶と重ね合わせながら回顧しているのです。

別の言い方をすれば、『深夜特急』が、彼の青年期の旅を一つの作品として壮年期に結晶化させたものだとすれば、今回の「最終便」は、少年期・青年期・壮年期と続いてきた人生という旅を、老年期(?)を迎えた彼が、より広い視野から捉え直した「旅行記」だといえるかもしれません。

ちなみに、私も20代で長い旅に出ました。旅をしていた頃は『深夜特急』の細かい内容はほとんど忘れていたし、それに影響されているという自覚もなかったのですが、今改めて思い返してみると、旅のスタイルを含め、いろいろなところで、ずいぶん深い影響を受けていたんだなと思います。

その意味で、今こうして著者から「最終便」が送り出され、『深夜特急』をめぐる一つの大きなプロセスが完結しようとしていることに、深い感慨と、いくばくかの寂しさを感じます。

その割には、出版されて1年近く経った今頃になって、やっと読んでいたりするわけですが……。


沢木耕太郎著 『深夜特急〈1〉香港・マカオ』の紹介記事
沢木耕太郎著 『天涯〈1〉鳥は舞い光は流れ』の紹介記事


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

 

 

 

 

 

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