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旅の名言 「ほとんど全てのアメリカ人が……」

 サグ・ハーバーの私の庭で、大きなオークの木々の下に完全装備のロシナンテ号が堂々と鎮座すると、ご近所からは面識のない人たちまで集まってきた。彼らの瞳の中には、ここから飛び出したい、どこでもいいから旅立ちたいという熱望があった。その後国じゅうで出会うことになった目つきだ。
 いつか旅に出たいとどれほど願っているか、彼らは無言のうちに語っていた。自由で束縛されず、解き放たれてあてもなくさすらいたいのだと。私が訪れた全ての州でそんな眼差しと出合ったし、切なる声を耳にした。ほとんど全てのアメリカ人が、さすらうことに飢えているのだ。


『チャーリーとの旅』 ジョン スタインベック ポプラ社 より
この本の紹介記事

ノーベル賞作家ジョン・スタインベック氏のアメリカ一周旅行記、『チャーリーとの旅』からの引用です。

旅立ちを前に、彼が特注したキャンピングカー「ロシナンテ号」が家に届けられたとき、その新車をひと目見ようと、近所からたくさんの人が集まってきました。

キャンピングカーを熱いまなざしで見つめる彼らの瞳の中に、スタインベック氏は「ここから飛び出したい、どこでもいいから旅立ちたいという熱望」を感じるのですが、彼はその後、旅先でも同じまなざしに何度も出合うことになったのでした。

彼によれば、「ほとんど全てのアメリカ人が、さすらうことに飢えている」のであり、その機会さえ与えられるなら、彼らは「自由で束縛されず、解き放たれてあてもなくさすらいたい」のです。

とはいえ、ほとんどの場合、彼らには他にしなければならない日常の義務があり、守らなければならない人やモノがあり、現在手にしている安定した生活を失いたくないという思いがあるはずです。あるいは、いっときの気まぐれで、先の見えない放浪に人生を賭けてしまうことへの恐れもあるでしょう。

いくら旅に憧れていても、スタインベック氏のように心の衝動に従い、さすらいの旅を実行に移す人はほとんどいないはずです。しかし、だからこそ彼らは、自分たちの心の奥に疼く切なる思いを実現させたヒーローとして、彼とそのキャンピングカーに熱いまなざしを向けるのでしょう。

考えてみれば、現代のアメリカという国を作り上げたのは、大航海時代以降に、さまざまな国から夢を抱いてやってきた移民たちです。そしてアメリカの先住民もまた、はるか昔、新天地をめざしてアジアからの長い旅を続けた人々の末裔であると言われています。もしかすると、アメリカ人の心の中には、他の国の人々以上に、未知の土地に対する憧れのようなものが強く息づいているのかもしれません。

もっとも、旅への衝動自体は、アメリカ人の専売特許ではありません。スタインベック氏も、同じ本の中で、人類はもともと「移動する種族」であり、土地に対する執着よりも、「ここではないどこかに行きたいという衝動の方がより大きくて古くて深いものだ」と書いています。
旅の名言 「ここではないどこかに行きたいという……」

駅の構内を行きかう人々の群れに、あるいはテレビに映し出されるエキゾチックな風景に、つい旅心をくすぐられてしまうとき、私たち人類のすべてが心の奥底に抱え持っている、古くて深い衝動が、目を覚ましかけているのかもしれません。


JUGEMテーマ:旅行

at 19:09, 浪人, 旅の名言〜旅の予感・旅立ち

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