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旅の名言 「インドに初めて行ったとき……」

 インドに初めて行ったとき、有名人とはこういうものかと感じた。路地裏を歩いていて振り向くと、二〇人くらいの子供が私のあとをつきまとい、店員は私に手を振る。乞食が手を出してくる。
 それで思い出したのだが、ある有名芸能人の話だ。時と場所をわきまえず騒がれたり、サインを求められたり、写真を撮られたりすると頭にくるが、無視されると淋しくなり、「有名人がここにいるんだぞ」と周りの人に叫びたくなるのだそうだ。このあたりの感情は、アジアやアフリカを旅行する者にもいくらか通じるような気がする。


『アジア・旅の五十音』 前川健一 講談社文庫 より
この本の紹介記事

アジアの旅にまつわる前川健一氏のエッセイ、『アジア・旅の五十音』の「無視」の項からの引用です。

インドやバングラデシュのような国を旅した人ならきっと、前川氏と同じような体験をしているはずです。外を歩けば大勢の人間に取り巻かれ、後をつけられ、お茶を飲んでいれば周囲の熱い視線にさらされ、話しかけられ、同じような質問を何度も浴びせられた経験があるのではないでしょうか。

旅人にしてみれば、どこへ行っても現地の人々に監視されているみたいで、鬱陶しいことこの上ないし、彼らのワンパターンな質問につき合っていると、何とも言えない徒労感を感じます。疲れているときなどは、お願いだからそっとしておいてくれと大声で叫びたくなります。

しかし、そんな状況を避けるうまい方法があるわけでもないので、現地にいる間は、とにかくそれに慣れるしかありません。

そんなとき、有名人というのはきっと、こういう経験を毎日繰り返しているんだろうな、と思うのです。

それでも、インドのような国をしばらく旅しているうちに、気がつけば、いつのまにか現地の人たちと、漫才のようなしょうもないやりとりを繰り返すのが日課になっていたりします。それに、街に出れば必ず誰かが相手をしてくれるので、少なくとも時間をつぶすのに困ることはありません。

そして、そんな生活にすっかり慣れてから日本に帰ると、街を歩いていても誰も話しかけてこないことや、何のハプニングも起こらない日常に、むしろ淋しさを覚えてしまったりするのです。

どこへ行っても注目され、ちょっかいをかけられるというのは、鬱陶しくて仕方がないけれど、かと言って、誰にもかまってもらえないのもやっぱり淋しい……。インドに行くと、芸能人のその複雑な気持ちがちょっとは分かるような気がします。

ただ、旅人の場合は、現地での鬱陶しさに嫌気がさしたらいつでも日本に帰れますが、芸能人の場合、そういう選択の余地はないわけで、同じような体験を、日本にいる限り、たぶん一生し続けなければならないのだと思うと、同情を禁じえません。たしかに、みんなに無視されれば淋しいかもしれませんが、やはり四六時中追っかけまわされ、必要以上の注目を浴び続けるのは、彼らとしても苦痛だろうと思います。

海外で、彼らの気持ちを少しだけ疑似体験した旅人としては、だから、街で芸能人を見かけても、無礼なことは決してしないようにしよう、そして、できれば彼らをそっとしておいてあげたいと思うのです……。


JUGEMテーマ:旅行

at 19:01, 浪人, 旅の名言〜旅人

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