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『狩猟サバイバル』

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります


この本は、「サバイバル登山家」として知られる服部文祥氏の、サバイバル・シリーズ第3作です。

 

 サバイバル登山とは簡単に定義すると「電池で動くものはいっさい携帯しない。テントもなし。燃料もストーブ(コンロ)もなし。食料は米と基本調味料のみで、道のない大きな山塊を長期間歩く」という登山である。岩魚や山菜、ときにはカエルやヘビまで食べながら、ひとりで大きな山脈を縦断する。私がサバイバル登山と名前をつけた。

服部氏は、学生時代からさまざまなタイプの登山の経験を積み重ねていくうちに、「自分の力で山に登っているという強い実感」を求めて、そしてまた、生きている手ごたえや、自由の感覚を得るために、山の中で自ら食料を調達し、最低限の装備だけで登山をなし遂げるというスタイルにたどり着き、1999年から10年にわたって実践してきました。

ただし、これまでに行われたのは、主なタンパク源として岩魚を釣り歩くことができる、夏山でのサバイバルです。夏のサバイバルに成功したら、自然な流れとして、次は冬ということになるわけですが、服部氏は、やはり着々と手を打っていました。

彼は2005年から、山梨県の山村の狩猟チームに加わり、そこで狩猟のノウハウやケモノの解体などを学びつつ、平行して単独猟の実践も試みてきました。狩りを初めて3シーズン目に、ひとりで鹿を仕留めることに成功した彼は、2008年の2月、テントもコンロももたず、米と簡単な装備、そして猟銃を携えて、冬の南アルプスに分け入っていきます。

夏はともかく、厳冬期に不十分な食料・装備で山に入るのが、いかに危険なチャレンジであるかは、登山については全くの素人の私でさえ分かります。それにもちろん、いくら猟銃を持っているといっても、必ずしも獲物に遭遇し、仕留められるという保証はありません。

それがどのような山行になったのか、その詳細は、ぜひ本文を読んでいただきたいと思います。彼の登山のスタイルへの賛否はともかく、そのユニークな登山の記録は、充分読むに値します。

ちなみに、彼は自分の能力の限界をわきまえて行動しているし、状況次第では廃屋や山小屋にも泊まっています。ただ、もしも好天に恵まれていなかったら、もしも獲物を仕留めることができなかったら、彼は冬山から無事に帰還できたのだろうかと、読んでいて不安を覚えるのも確かです。

また、大型哺乳類を狩るという行為は、私の中に、さまざまな居心地の悪い感情を引き起こします。そもそも銃や狩猟の世界になじみがないために、そこに心理的な抵抗を覚えてしまうという理由が大きいのでしょうが、それだけではなく、個人の精神的な満足のために山の頂をめざす登山者が、そのための食料として鹿の命を奪うことは、はたして正当で必要な行為なのだろうかとも思うのです。

しかし、そんなことを言っている私も、ふだん平気で哺乳類の肉を食べているわけです。登山のために野生の鹿を殺すのがダメなら、ただ日々を生きるために、誰かに家畜の殺生をまかせるのはどうなのか、ということになるでしょう。

この本を読んでいて居心地の悪さを感じるのは、結局のところ、私が都市的で頭でっかちな生活にすっかり慣れきっているためで、これまで都合よく視野の外に置いてきた、生きることに伴うさまざまな根源的な問題と、改めて向き合わざるを得なくなるからなのかもしれません。

それでも私自身は、服部氏が実践するサバイバル登山そのものについては、そういう山登りのスタイルがあってもいいと思うし、彼のユニークな山行記を通じて、そのワイルドな山旅を楽しませてもらっています。

事の是非はともかく、一般的な登山よりもはるかにハプニングの多いサバイバル登山のプロセスや鹿狩りの描写は、読んでいてとてもスリリングだし、それは自ら体験した者でなければ書けない、優れたノンフィクションになっていると思います。

ただ、サバイバル登山は、誰にでも許されるものではないという気はします。危険で難易度が高いからだけでなく、環境への負荷を考えると、多くの人間が実行できる性質のものでもないからです。もしも大勢の登山者が中途半端に彼のマネをして、あちこちで焚き火をしたり野生動物を狩るようになったら、すぐに山が荒れてしまうでしょう。

服部氏の場合は、山の中で自由に振る舞うことと引き換えに、食料・装備・行動について、自らに厳しい制約を課しています。しかし、自然保護に関して次第に厳格になっていく昨今の風潮を考えると、サバイバル登山というスタイルは、実践者がほとんどいない今だからこそ黙認されている、ある意味では特権的な行為なのかもしれません。

というわけで、この本を読んでいると、心の中にさまざまなジレンマが浮かび上がってくるし、そして、それは自分自身の現在の生活を批判的に照らし出すものでもあるために、けっこう居心地の悪い思いもするのですが、むしろだからこそ、 服部氏の本は、ユニークな登山の方法論を通じて、私たちの社会がいつの間にか覆い隠してしまった、この地上で人間が生きることの生々しさを垣間見せてくれる、貴重な存在なのだと思います。


服部文祥著 『サバイバル登山家』の紹介記事
服部文祥著 『サバイバル! ― 人はズルなしで生きられるのか』の紹介記事


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書 

 

at 19:20, 浪人, 本の旅〜日本

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