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「非対称戦争」

10月18日深夜のNHKスペシャル「貧者の兵器とロボット兵器〜自爆将軍ハッカーニの戦争〜」(再放送)を見ました。

この番組は、現在アフガニスタンで続いている戦争について、それぞれの陣営の持つ兵器の物量とテクノロジーの圧倒的な差に着目して、その戦争の一面を描こうとするものですが、それは一般向けのTV番組とは思えないほどの、戦慄するような内容でした。

かつて、アフガニスタンに侵攻したソ連軍に対抗する勢力として、アメリカ自身が育成したゲリラ部隊が、皮肉なことに、今はタリバン側の武装勢力に加わり、アメリカを中心とする多国籍軍にとっての脅威になっています。

相次ぐゲリラ攻撃による兵士の犠牲を防ごうと、米軍はロボット兵器を次々に戦場に投入してきました。番組ではその一つの例として、アメリカ本土から操作する無人攻撃機が、タリバンの拠点や車両などをピンポイントで攻撃する様子が示されます。

映像を見るかぎり、無人機の操作は、まるで精巧なテレビゲームでもやっているような感じです。操作訓練中の兵士たちのあっけらかんとしたコメントからも、それが生きた人間をリアルタイムで標的にしているという緊迫感や重々しさは感じられません。

理屈の上では、そこはまさに戦場であるはずなのですが、「敵」は地球の裏側にいて、無人機の操作という「戦闘」を行う兵士たちに命の危険がない以上、そうなるのは当然なのかもしれません。

旧式の銃や手製爆弾など「貧者の兵器」しかもたない武装勢力に、無人のハイテク兵器を含めた強力な正規軍で対峙するアメリカ軍。客観的に見て、その圧倒的な兵力差も、戦略・戦術の違いも、明らかに「非対称」です。
ウィキペディア 「非対称戦争」

ただ、考えてみれば、数千年前に国家というものが生まれて以来、多くの戦争は、やはり一方的な力の差のもとに行われた「非対称戦争」だったのではないかという気がします。戦争の多くは侵略であり、戦争する者は、その大義名分はともかく、自分たちが一方的に勝てると思うからこそ戦争を始めるはずだからです。

それはともかく、この番組を見ていて戦慄したのは、両者の物理的な兵力差に対してではありません。アメリカ軍が、敵を掃討するのに、生身の人間ではないロボット兵器を使っていることに対してでした。

もちろん、アフガン戦争では実際にアメリカ人兵士も血を流しています。ロボット兵器だけで戦争が行われているわけではありません。しかし、一部の兵士がテクノロジーの恩恵で安全な場所に身を置きながら、一方的に敵を攻撃している映像を見ていると、私の胸の中に、何ともいえないモヤモヤとした嫌な気分が、止めようもなく湧き上がってきました。

いくら味方の犠牲を防ぐためと称しても、無人のロボット兵器で敵に向き合うことは、卑怯な感じがしてならないのです。いや、卑怯である以上に、それは敵に対するこれ以上ないほどの差別と侮蔑の表現であり、敵が、自分にとって命を懸けて真剣に向き合うには到底値しない相手だと見做すことになるのではないでしょうか。

それに対して、タリバン側はやり場のない屈辱と無力感、その裏返しとしての激しい怒りを感じるだろうし、だからこそ、あらゆる手段を使ってでも、その侮辱に対する仕返しをしようとするのではないかという気がするのです。

番組の最後は、「自爆将軍」ハッカーニの率いる武装勢力が、無人機攻撃への報復として、自爆攻撃をさらにエスカレートさせているというナレーションで終わっています。

ロボット兵器を使ったアメリカ軍の攻撃がタリバンへの侮辱だとするなら、タリバンも相手かまわぬ悲惨な自爆テロで応酬しているわけで、それはもう、どちらが正しいとか、どちらが善だとか言っていられるレベルではなくなっています。互いへの憎悪と軽蔑が際限なくエスカレートし、それは、事態の収拾をより一層困難にしています。

ただ、こうした戦争の実態を垣間見て、それが卑怯だとか侮辱だとか、感情的な言葉で語ってしまうのは、私が単に、戦争に対して無知だからなのかもしれません。私は、現代の戦争という壮絶な殺し合いの中に、中世の騎士道とか武士道みたいなものを期待している、時代錯誤な人間に過ぎないのでしょうか。

あるいは、おどろおどろしいナレーターの声も含め、見る人の感情を必要以上に煽ろうとする、少々悪趣味な番組の演出に、私も乗せられてしまったのでしょうか。

いずれにせよ、アフガニスタンで起きている戦争について、その全体像を把握し、ましてやその本質を理解することなど、ジャーナリストでも研究者でもなく、戦争体験すらない私には到底不可能なことだし、だからこそ、この50分弱のTV番組を1本見ただけで、何か分かったような気になってしまうのは、大変危険で、傲慢なことでもあると思います。

そういった点は自覚しているつもりですが、それでもこの番組は、アフガン戦争が垣間見せる、寒気のするような一面を、ロボット兵器と自爆テロとの「非対称戦争」という切り口で、生々しく描き出しているように思うのです。

それにしても、言葉ではうまく表現しきれない、このやり場のない感じは、番組を見終わったあとも、行き場のないまま残っています。

アフガン戦争については、私も日本人の一人として、すでに微妙な立場で関わりをもっていることになるわけで、このモヤモヤした感情を、都合よく忘れてしまうわけにはいかないのですが、では、実際問題として私自身に何ができるのか、考え始めれば出口のないドロ沼にはまり込んでいきそうな気もします。

見ないわけにはいかないけれど、かといって、見れば非常に後味の悪い思いにさいなまれる、恐ろしい番組でした。


JUGEMテーマ:今日見たテレビの話

at 19:02, 浪人, テレビの旅

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