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『電子書籍の衝撃』

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評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

 

現在アメリカを中心に普及が加速しつつある電子書籍ですが、それは本の流通や消費のあり方を、どのように変えていくことになるのでしょうか? 

著者の佐々木俊尚氏は、この本の中で、自らの思い描く本の将来像を、電子化で先行する音楽業界などの具体例をまじえながら、分かりやすく示そうと試みています。

前半では、キンドルやiPadなど、電子書籍を快適に読めるタブレットの登場と、そうした画期的なデバイスの市場投入によって、電子書籍の流通プラットフォームを押さえようとするアマゾンやアップルなどの熾烈な競争について描かれています。

ただ、こうした話題については、マスメディアで何度も取り上げられているので、詳しく知っておられる方も多いでしょう。

まあ、私個人としては、どの企業がプラットフォームを支配するにしても、とにかく安くて使いやすいデバイスが出回り、日本でも数多くの電子書籍が楽しめるようになるなら、それで充分だと思っています。

この本で興味深いのは、やはり後半部分、電子書籍のプラットフォームが確立したあと、私たちにとって、本を読むという行為がどのように変化していくのか、その将来像を語っている部分でしょう。

これまで、紙の本を印刷し、書店へ配本するという作業には大きなコストと手間がかかっていましたが、電子化された本ではその必要がなくなるため、出版へのハードルが下がります。それによって、書き手自身が本を出版する「セルフパブリッシング」が可能になります。

また、流通コストが実質的にゼロに近づくので、書籍の価格が大きく変わる可能性があります。実際、アメリカではすでに低価格化が始まっています。

さらに、出版社にとっては、在庫を抱えるコストもなくなるので、過去に出版された本を絶版にする必要もなくなります。

その結果、電子書籍の流通プラットフォーム上では、プロとアマチュア、新旧の本が同じように並ぶ「フラット化」が進行します。

当然、それは本の流通・消費のあり方や、出版社のビジネスモデルに大きな変化をもたらさずにはいないでしょう。

それに関連して、佐々木氏は、現在の日本の出版業界の衰退の大きな原因は、日本の若者の活字離れとかインターネットの普及にあるのではなく、その流通プラットフォームの劣化にあるのだと厳しく指摘しています。雑誌の流通網をベースに形成された、日本独特の本の大量流通の仕組みや、取次や書店が本を買い取るリスクを負わない「委託制」が、出版の質の低下を招いてきたというのです。

これまでのような、マスメディアの広告やベストセラー・ランキングを参考に、みんなが同じような本を読むマス流通の仕組みが衰退していく一方で、ブログやレビューサイト、SNSなど、各種のソーシャルメディアが重要な役割を果たすようになり始めています。

電子書籍の流通プラットフォームの確立に合わせて、今後は、ソーシャルメディアに流れる多様な情報を通じて、読者一人ひとりが、それぞれの好みに合った本を見出せるような新しいマッチングの仕組みが形成されていくでしょう。

このあたりのことは、ふだんからソーシャルメディアを使いこなし、その恩恵にあずかっている方なら、改めて説明するまでもなく、実感として理解できることなのではないかと思います。

私も本好きの一人として、電子書籍の普及とともに新しい読書の世界が広がっていくのはすばらしいことだと思います。また、「読者と優秀な書き手にとっての最良の読書空間を作ること」が最も大切だという佐々木氏の主張や、この本で描かれるポジティブな将来像に、強い共感を覚えます。

ただ、現実に目を向けると、これから何年かのあいだは、欧米から広がる急速な電子化の波と、現状維持をはかろうとする日本の出版業界の動きとが、激しいぶつかり合いを演じることになりそうで、その決着がつくまでのあいだ、日本の読者は、さまざまな不便やまわり道を体験させられそうな気がします……。

あと、この本では詳しく触れられていませんが、電子書籍の普及は、本の流通の仕組みだけでなく、本そのものの体裁も大きく変えていきそうな気がします。

例えば、現在、一般的な本は200ページ前後ですが、印刷や流通上の制約からそうなっている側面も大きいと思います。電子書籍なら、数十ページしかないコンテンツを一冊の本として独立させたり、極端な話、短編小説やエッセイ集をバラ売りすることも可能になります。

また、音楽やビジュアルと融合したコンテンツを開発したり、読み手の好みに応じて、縦書きと横書きを切り替えるようなことも可能でしょう。

それともう一つ。これもこの本の内容とは直接関係ありませんが、読書家はこれまで常に書店をチェックし、欲しい本はその場で確保しないと、他人に買われたり絶版になったりして、二度と手に入らなくなるという恐れにさいなまれてきました。

しかし電子書籍化が進めば、本はいつでもどこでも手に入るので、読者は読みたい本のリストだけ作っておいて、それをもとに、読み始めるまさにその瞬間に本を買えばいいということになります。

そうなると、いわゆる「積ん読」をする必要がなくなるわけですが、これまで「積ん読」のために必要以上に本を買っていた人はかなり多いはずで、その分の需要がごっそり減ることになれば、出版業界に意外と大きなインパクトを与えるかもしれません……。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

 

JUGEMテーマ:読書

 

at 18:41, 浪人, 本の旅〜インターネット

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