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『フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略』

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評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

 

ネット上では、もはや当たり前となった感のあるフリー(無料)の商品やサービス。人間、タダという言葉の響きには逆らえないもので、私も無料と知るとつい手を出してしまうのですが、一方で、いつかどこかでこのツケを払わされるんじゃないかとか、このままいろんなものがタダになったら世界の経済はどうなるんだろうとか、心のどこかで一抹の不安を感じるのも確かです。

いま、インターネットを席巻している無料化の流れに乗っかることは、果たしていいことなのか、それとも、長い目で見れば良くないことなのか……。これはたぶん、けっこう重大な問題だと思うし、見かけの損得にはとらわれずに、できるだけ広い視野で自分なりに考えてみる必要があるように思います。

まあ、私の場合、そうやって偉そうなことを言うわりには、この本が出版されて1年以上経った今頃になって、ようやく手にとっていたりするわけですが……。

それはともかく、この本では、IT技術の革新が生んだ新たなフリーの形を中心に、無料経済に関するさまざまなトピックが取り上げられています。

著者のクリス・アンダーソン氏によれば、ネットの世界では、コンピュータの情報処理能力、デジタル記憶容量、通信帯域幅の三つが、今や安すぎて気にならないレベルに達しつつあります。

そうした環境では、デジタル化された商品なら、ほとんど限界費用ゼロで大量に複製・供給できるため、そこに新たなフリーの形が生まれています。

彼は、いま存在しているフリーのパターンを、以下の四つに分類しています。

1.直接的内部相互補助(すでにおなじみのマーケティング手法で、何かを無料にすることで客の気を引き、他の商品で利益を出す)
2.三者間市場(テレビ局とスポンサーと視聴者の関係に相当)
3.フリーミアム(基本版や基本利用料を無料にし、少数のユーザー向けのプレミアム版やプラスアルファのサービスで利益を出す)
4.非貨幣市場(贈与や無償の労働、不正コピーなど、貨幣市場の外にあるもの)

インターネットにおける2の例としてもっとも有名なのは、オンライン広告の利益でさまざまな無料サービスを展開するグーグルでしょう。また、2については、20世紀に生まれたマスメディアのビジネスモデルが、ネットの出現によって、他の産業に拡大しつつあるともいえます。3に関しては、フリー化が急速に進むオンラインゲーム市場などの例が紹介されています。
ウィキペディア 「フリーミアム」

ただ、2も3も、見かけこそ目新しいものの、フリーの訴求力で潜在的な顧客を集め、そこから何らかの形で収益を上げるという点では、決してこれまでの資本主義のルールを逸脱しているわけでもなく、1のような従来型のフリーと、本質的な違いはないのかもしれません。

こうして、ウェブの世界では、フリーを中心とする新たな経済生態系が出来上がりつつあり、すでに無視できない規模になっています。アンダーソン氏によれば、それは控え目に見積もっても 3,000億ドルに達するといいます。

しかし一方で、ネット上で無料で読めるニュースが新聞社の経営を悪化させたり、ウィキペディアが百科事典の市場をまたたく間に縮小させたりと、急速なフリー化が猛威をふるっているように見えるのも確かです。そうした例を見ていると、その進行を手放しでは喜べない気がします。それは、やがて数多くの産業に壊滅的な打撃を与え、多くの人から仕事を奪う結果になるのではないでしょうか?

アンダーソン氏によれば、フリー化は、従来の市場における売り上げなど、見かけ上の価値を縮小させているように見えるものの、無料化によって多くの利用者にメリットがもたらされるなど、富が、計測しにくい形で再配分されているのだといいます。

また、興味深いことに、インターネットの出現で、「評判」や「注目」という、これまでは計量できなかった漠然とした概念が、目に見える量として扱えるようになりつつあります。例えば、ウェブ上では、リンクをされた数は「評判」、トラフィックの量は「注目」と見なすことができるのです。

評判や注目を数値として扱えるなら、やがて、それを貨幣的な価値に変換することも可能になるかもしれません。つまり、フリーを効果的に用いるなどして高められた評判や注目などの非貨幣的な価値が、何らかの形で経済的な収益に結びつく可能性があるわけです。

もっともそれは、本来カネとは無関係だった世界のものごとが、資本主義経済の枠組みの中に、次々と飲み込まれていくということなのかもしれませんが……。

この本は、単純なフリー礼賛論というわけではありませんが、読んでいるとやはり、ウェブを中心としたフリー化の流れは止めようがないのだというメッセージが伝わってきます。また、デジタル化されたものは遅かれ早かれ無料になる運命なのだし、フリーの周辺でお金を生みだす方法はあるのだから、今後もこの世界で生き延びようとするなら、フリーを前提とした新たなしくみに適応するしかない、という気がしてきます。

ただ、それはそうなのでしょうが、その一方で、近い将来、ホワイトカラーの仕事がどうなっていくのか、ちょっと不安になります。

アンダーソン氏は、「無料のモノやサービスが有料のものと釣り合って発展する必要がある」と言ってはいるものの、無料で有用な商品が次々に供給されるようになり、人々の生活やビジネスがそれを前提とするようになれば、20世紀型の高コスト体質の巨大企業がこれまでのようにサバイバルするのはどんどん難しくなっていくだろうし、現在人間の手によって行なわれている膨大な事務作業の多くも、仕事としての意味や価値を失っていくのではないでしょうか。

そうなると、いわゆる先進諸国の人口の多くを占め、新興国では新たに続々と生まれつつある中産階級というものは、これからどうなるのでしょうか? グローバル化によって世界レベルの競争が激化し、フリー化も進んだ世界において、彼らすべてを十分に養っていけるだけの仕事は残されているのでしょうか?

かつての工業化社会のような、稀少な資源を管理するための論理と倫理で今なお動いているリアル世界の経済と、インターネットから広がりつつある、21世紀的な潤沢さの論理と倫理によって動くフリー経済とを、どのような形で共存させ、バランスをとればいいのか、そして私たちの社会の将来像がどんなものになるのか、この本では明確な見通しは示されていません。

とにかく、フリーに関しては考えるべきことが多すぎて、この本をひととおり読んでみても、頭の中がスッキリするというよりは、むしろ混沌とした未来を垣間見ているようなモヤモヤ感に襲われます。

まあ、未来のことなど誰にだって分からないわけで、それをあれこれ先走って心配しても仕方がないのでしょうが……。


本の評価基準

以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書 

at 19:08, 浪人, 本の旅〜インターネット

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