このブログ内を検索
新しい記事
記事のカテゴリー
                
smtwtfs
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< December 2017 >>
過去の記事
プロフィール
            
コメント
トラックバック
sponsored links
携帯
qrcode
その他
無料ブログ作成サービス JUGEM
<< ブッダガヤーで両替屋になった話 | main | インドの「超巨大仏」プロジェクト >>

『悪魔祓い』

悪魔祓い
悪魔祓い
上田 紀行

評価 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります

この本では、悪魔祓いという、私たちにはあまりなじみのない儀礼を中心に、「癒し」をめぐる問題が様々な角度から考察されています。

スリランカには、古くから伝わる悪魔祓いの儀礼があります。著者の上田氏は文化人類学者として、現地でその儀礼を調査するのですが、そこで実際に患者が癒されて元気になっていく姿を目の当たりにします。

「そこで何が起きているのか」を、文化人類学の立場から機能主義的、あるいは記号論的に説明することは可能です。しかし、肝心の「どのようにして癒しが起こるのか」という点については、従来の文化人類学的なアプローチでは説明し切れません。

上田氏は、「サイモントン療法」として有名な、イメージによる癌の治療法にヒントを得て、悪魔祓いも一種のイメージ療法ではないかと考え、考察を進めていきます。

私たちは、言語、分析活動を司る左脳を優先させるような生活をしていますが、それが行き過ぎると、生命力や免疫力を弱めることになります。失われたバランスを回復し、生命力を呼び覚ますためには右脳的な活動を活性化させる必要がありますが、そのカギになるのがイメージで、悪魔祓いは効果的なイメージトレーニングの条件を満たしているのです。

ただ、それは一見すると、現在日本でも流行している「右脳トレーニング」系の様々な試みと同じことのようにも見えます。だとすれば、右脳トレーニングをすれば「癒し」につながるのかというと、上田氏はそうではないといいます。

「癒し」には二つの要素があり、イメージと「つながり」が必要だというのです。愛するものを失ったり、ともに生きている感覚が希薄になるといったような、つながりの喪失が大きなストレスとなり、生命力を低下させます。癒されるためには、つながりを回復する必要があるのですが、つながりを分断する左脳が優位な状態で、他人との「差をつける」ための手段として右脳の能力を高めている限り、それは深い「癒し」にはならないのです。

そしてさらに、その「つながり」が、特定の宗教や国家、民族の範囲にしか広がらないものであれば、それは小さな癒しをもたらしつつ、その範囲に含まれないものに対しては、巨大な暴力と排除の構造を作り出してしまう恐れがあります。それは、歴史が示しているだけではなく、上田氏が滞在していたスリランカで今なお続いている民族紛争にも表れています。

私たちは、昔あったつながりを単に復活させるのではなく、新たな、どこまでも開かれたつながりのイメージを創造していかなければならないのだと上田氏は言います。そして最後に、一つの有名な詩を引用しています。ある意味では、この本全体が、この詩の解説であると言えるのかもしれません。

この本の文章は、極力簡潔でわかりやすくなるよう配慮されていて、出来るだけ多くの人に読んで、考えてもらいたいという著者の熱い思いが伝わってきます。ちょっと単純に割り切りすぎかな、と思う部分もありますが、今私たちに切実に必要とされている「癒し」について、自らの経験に基づいた明快なメッセージを伝えています。



本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 23:05, 浪人, 本の旅〜人間と社会

comments(0), trackbacks(0)

スポンサーサイト

at 23:05, スポンサードリンク, -

-, -

comment









trackback
url:http://ronin.jugem.jp/trackback/77