このブログ内を検索
新しい記事
記事のカテゴリー
            
過去の記事
プロフィール
            
コメント
トラックバック
sponsored links
その他
無料ブログ作成サービス JUGEM
<< 「何もしない」という非日常 | main | 恥ずかしい記憶とともに生きる >>

東南アジアの国境をめぐる旅

旅行作家の下川裕治氏とカメラマンの阿部稔哉氏がウェブ上で連載していた、東南アジアの国境をめぐる旅の記事が、先日完結しました。

『裏国境を越えて東南アジア大周遊』(全20回)

2人は、バンコクを起点に、ここ数年で外国人旅行者にも開かれ始めた、主に地元民向けのマイナーな国境を越えながら、タイ、カンボジア、ベトナム、ラオス、ミャンマーを旅しています。

途中、有名な観光地や大都市も通過するものの、メインテーマはあくまで国境越えなので、かなり地味でマニアックな旅が続くのですが、簡潔な文章や写真・動画を通じて現地の雰囲気が伝わってくるので、旅の好きな人なら、けっこう楽しめるのではないかと思います。

また、旅の詳細については、下川氏のブログでも読むことができます。

【裏国境の旅がはじまった】 たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

私も十年以上前に、全くの別ルートですが、そのころ開かれていた数少ない国境を抜けながら東南アジア各国を周遊したことがあるので、読んでいたら、当時の体験がいろいろとよみがえってきたし、2人の旅の詳細についても、とても興味をひかれるものがありました。

例えば、カンボジアのプノンペンからベトナム南部のチャドックまで、メコン川をスピードボートで下るルートとか、ベトナム北部のディエンビエンフーからラオス北部に入り、ルアンパバーンへ抜ける山岳ルートなどはけっこう面白そうだし、特に、ミャンマー南部のメルギー諸島については、昔からの憧れでもあり、いつか旅してみたいと改めて思いました。

新しい国境がいくつもオープンしたおかげで、個人旅行者がより自由にルートを描けるようになったのは素晴らしいことだと思います。2人のように東南アジアを大周遊するような時間と気力のある人は少ないでしょうが、彼らのたどったルートの一部を取り入れるだけでも、旅がかなり変化に富んだものになるのではないでしょうか。

ただ、少し残念なのは、最近タイの当局が、ノービザ・陸路での国境の出入りを制限する動きに出ていることで、今後の成り行き次第では、バンコクを起点にした、こうした周遊旅行がやりにくくなる可能性があるということです。
記事 「ビザ・ラン」

それにしても、2人の旅は、(仕事のスケジュールの関係なのか)途中何度か中断をはさんでいるとはいえ、現地ではひたすら先を急いでいて、ほとんど休む間もなくバスや船を乗り継いでいくのは、相当ハードだったのではないかと思います。特に下川氏は、けっこうお年も召しているし、途中、ミャンマーでは予想外のアクシデントにも巻き込まれ、ボロボロになりながらも旅をまっとうする姿には、読んでいて頭が下がります。

それと、こういうタイプの旅というのは、もしかすると、今の若い人たちには、あまりピンとこないのかもしれないな、とも思いました。

私も、最近の旅のトレンドを把握しているわけではないのですが、ふつうに考えるなら、個人旅行者の大多数は、たぶん、ネット上の豊富な情報をうまく取り入れつつ、安く快適で、しかも中身の濃い旅を楽しみたいという思いが強いだろうという気がするし、さらに、今の旅行者は、旅の目的や意義のようなものを、とても重視するのではないかと思うからです。

東南アジアでは、いま、都市部が急速に発展しつつあり、交通機関や宿やレストランなど、旅のインフラも年々便利で快適になっているし、物価も日本と比べればまだまだ安いので、あまり苦労せずに効率よく旅を楽しみたいなら、そうした大都市や人気のあるツーリスト・スポットをまわるのがベストでしょう。

実際、そういう場所では業者同士の競争もあるので、ネット上の評判などをきちんと調べれば、かなり安くて質の高いサービスを得られる可能性が高いし、観光や娯楽などの機会には事欠かないし、旅人とも多く出会えるので、淋しい思いをする必要もありません。

また、最近では、旅先でボランティア活動に参加したり、語学学校に通うなど、明確な目的意識をもって旅に出る人も多いのではないかと思います。

逆に、陸路でマイナーな国境を越えていくような旅では、個人旅行者向けの安い交通手段がなくて、かなりの出費を強いられたり、不便な思いをすることも多いだろうし、バックパッカー向けの宿や食堂は少なく、ネット上の情報も限られています。また、何もない田舎なので、静かに過ごせるのはいいのですが、人によっては退屈を持て余すだろうし、他の旅人ともなかなか出会えないかもしれません。それに、東南アジアの僻地を旅しても、残念ながら、その思い出話に興味をもって耳を傾けてくれるような人はなかなか見つからないでしょう。

しかも、そうまでして辺境を旅する目的というか、張り合いのようなものも、最近では失われつつあるのではないかという気がするのです。

ネットが普及する前は、信頼できる現地情報といえばガイドブックと旅行者のクチコミくらいだったので、ガイドブックに載っていないような場所を旅すれば、ちょっとした冒険気分に浸れたし、自分の体験したことが、他の旅人の役に立つかもしれないという実感をもつこともできました。

しかし、今や、ネット上には、誰も情報をアップしていないような空白の場所などほとんどないし、秘境といわれる場所でも、その映像を見るだけなら簡単です。そのために、誰も行ったことのない場所へ行きたいとか、誰もしたことのないような旅がしてみたいという思いは、ほとんどかなえられなくなってしまいました。他の人とは違う、自分だけのオリジナルな旅を求めてみたところで、どうしても誰かの旅の二番煎じみたいになってしまいます。

そうなると、変にオリジナリティに走ろうとして苦労するよりも、他の人と同じような旅で満足できるなら、その方がコストパフォーマンスはずっと高いということになるし、逆に、それでもあえて人と違う旅を追求するのなら、その苦労や高いコストに見合うだけの個人的な意味や必然性があるのか、自分がその旅に心から満足できるのかという点が、常に問われることになるのです。

もちろんそれは、昔の旅人の方が、今よりもずっとオリジナリティがあった、という意味ではありません。昔は情報がなさすぎたおかげで、他の人と同じような旅をしていても、それに気づかなかっただろうし、そのおかげで、多くの人が、旅の開拓者のような気分を味わえたのだろうと思います。そして今は、他の旅人たちの行為がネット上で可視化されたために、どこに行っても、どんな旅をしていても、何だか、他の誰かのマネをしているような気分になってしまうということなのだと思います。

それはともかく、旅に快適さとか、娯楽とか、日頃のストレスの解消みたいなものを求めているかぎりは、旅の動機や目的を真剣に考える必要性はないのでしょうが、辺境にあえて足を伸ばすような旅だと、その苦労に見合うだけの強烈な個人的動機がないと、とても旅を続けられないような気がします。

私も、上の旅行記を読んでいて、とても面白いとは思ったのですが、では実際に、今、自分に同じ旅ができるのかと自問してみると、ちょっと無理だろうなと思います。

ずっと以前には、陸路で国境を越えるという行為自体にワクワクしたものだし、バックパッカーとはそういう旅をするものだという思い込みみたいなものもあったのですが、そうした旅を続けているうちに、いつしか感動は薄れてしまったし、今の自分には、もう、そういう旅をせずにはいられないような、情熱のようなものが湧いてきません。

少なくとも、今の私には、陸路での国境越えとか、「裏」ルートを攻略するような旅というのは、心に響くテーマではないのでしょう。もし長い旅に出るのだとしたら、たぶん、自分にとって、もっと切実なテーマが必要なのだと思います。

まあ、これについては、自分が歳をとって、気力・体力ともに衰えたというのも大きいのでしょう。それに加えて、還暦に近い下川氏が、今回の旅でさんざん痛めつけられている描写を読んで、すっかり怖気づいてしまったせいもあるのかもしれません……。


JUGEMテーマ:旅行

at 18:40, 浪人, 地上の旅〜東南アジア

comments(0), trackbacks(0)

スポンサーサイト

at 18:40, スポンサードリンク, -

-, -

comment









trackback
url:http://ronin.jugem.jp/trackback/772