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寝耳に水

先月、ヨーロッパの大手旅行代理店トーマス・クックが経営破綻し、傘下の航空会社も運航を停止、イギリスを出発した15万人もの利用客が世界各地で立ち往生し、彼らが無事に帰国できるよう、イギリス政府がチャーター機を大量に飛ばすという出来事がありました。
英旅行大手トーマス・クック、破産申請 旅行者15万人の帰国作戦が開始 BBC NEWS JAPAN

 

トーマス・クックといえば、19世紀に世界初の近代的な旅行代理業を始めたとされる、業界の老舗中の老舗ですが、今や、そういうブランドでさえ経営が立ち行かない時代になっているんだな……と、しみじみ思います。
ウィキペディア 「トーマス・クック・グループ」

 

たしかに、今では、ネットで無料の旅行情報がいくらでも手に入るし、航空券や宿の予約も、ネット経由で簡単に手続きができるので、そういう作業を自分でやってしまう人がどんどん増えているのでしょう。

 

もちろん、世の中にはいろいろなタイプの人がいます。自分であれこれ手配するのが苦手な人もいるだろうし、せっかくの休暇なのだから、面倒ごとは誰かに任せて、自分は気楽に旅を楽しみたいという人もいるはずです。そういう人たちがいるかぎり、世の中から旅行代理店というものが消えてしまうことはないでしょう。

 

とはいえ、世界中の旅行代理店は、個人旅行者の増加や、LCC(格安航空会社)やスマホの普及など、旅行をめぐる環境が激変する中で、新たなサービスを必死で模索し、生き残りを図ろうとしています。そうやって、業界全体が激烈な競争を続けている状況では、老舗であることが、むしろ、組織の変化を妨げる重荷になっていたのかもしれません。

 

そういえば、2017年に、日本でも同様の事件がありました。旅行代理店のてるみくらぶの経営破綻で、当時、海外旅行中だった約2500人と、出発前の数万人が被害を受けました。
ウィキペディア 「てるみくらぶ」
 

実際に世界各地で、滞在先のホテルから部屋代の支払いを要求されたり、帰国便がキャンセルされたりと、さまざまなトラブルが起きたようですが、このときは日本政府がチャーター機を飛ばすまでには至りませんでした。添乗員つきのツアーの場合には、現地でそれなりのフォローが受けられたでしょうが、それ以外の場合は、それぞれの旅行者が自力と自腹で問題を解決し、日本に帰ってくるしかありませんでした。

 

ちなみに、海外旅行保険では、このような場合に現地で追加請求されたホテル代や航空券代までは補償されないようです。

 

ただ、そのとき海外にいた2500人全員が、重大なトラブルに巻き込まれたわけではありません。当時の話をネットで探して読んでみると、てるみくらぶのツアーの添乗員をしていたが、大きな問題もなく無事帰国できた、という体験談があるし、ホテル側から宿泊費を要求されたが、うまく交渉して支払いを免れた人もいるようです。

 

むしろ、本当に理不尽な目に遭ったのは、代金を全額払い込み、出発を目前にしていた客で、結局、彼らは出発することもできず、大切な休日や、人生の記念すべきイベントを台無しにされたうえに、ほとんど返金もされないという、大きな被害を受けました。

 

今回、イギリス政府がチャーター機を飛ばしたのは、さすが元大英帝国、という感じですが、実際には、てるみくらぶの事件とはケタが二つ違う、膨大な利用客が影響を受けており、国としても何らかの対策を取らざるを得なかった、という面もあったのでしょう。また、今回のケースでは、宿泊費や帰国費用は、業界の弁済保証金からカバーされるようです。

 

とはいえ、利用客の多くは、旅先でいきなり旅行代理店の破綻を聞かされて、足元が崩れるようなものすごい不安に襲われたことでしょう。

 

トーマス・クックの経営に不安があり、万が一のこともあり得るとあらかじめ知っていたら、ほとんどの人はわざわざ利用しなかったと思うので、今回の被害者は、みな、まさかこんなことになるとは夢にも思わず、旅先で事態を知らされたときには、それこそ「寝耳に水」だったのではないでしょうか。

 

しかも、自分で旅行の手配をする知識や気力がないからこそ、それなりのカネを払って専門家に任せていたはずなのに、結果的にその専門家に裏切られ、見知らぬ土地でいきなり放り出されることになるとは……。

 

まあ、被害に遭ったとはいっても、チャーター機に乗せてもらえたり、さらなる費用負担は回避できたりと、経済的にはそれほどのダメージにはならないのかもしれませんが、それでも、旅先でいったんどん底に落とされたショックは取り消せません。浮かれた旅行気分を台無しにされたことについては、運が悪かったとあきらめるしかないのでしょう。

 

すべてを旅行代理店にお膳立てしてもらい、安心・安全な旅行をしていたはずの人々が、企業の経営破綻という、自分たちのあずかり知らないところで起きた出来事によって翻弄されてしまうというのは、実に気の毒な話です。

 

しかし、この世界には、絶対の安全とか、絶対の安心というものは存在しません。

 

この世では、より多くのカネを積むことによって、他の人よりも快適で楽な思いができるし、安心・安全の度合いを高めていくこともできますが、どこまで安全を追求しても、想定外の出来事が起きる可能性はなくなりません。

 

そしてむしろ、私たちが楽をしていればいるほど、安心だと信じ切っていればいるほど、万が一のことが起きたときには、現実とのギャップが非常に大きくなり、それこそ、「青天の霹靂」のようなことになってしまうのです。

 

ただ、今回のようなトラブルで、いきなり旅先で放り出されたり、帰国のために必死な思いをする羽目になるのは、大きなストレスにはなるでしょうが、現地で天災や事故や政変に巻き込まれ、命に関わる危険にさらされる事態にくらべれば、はるかにマシだと言えなくもないのかもしれません。

 

逆に、今回の事件の被害者の場合、命に関わるほどの危険はないが、めったに起きないめずらしい出来事、見方によっては歴史的な出来事の当事者になることで、普通のツアーだったらあり得ないような、非常に貴重な体験をした、と考えることもできるのではないでしょうか。

 

もっとも、そんなことは、当事者ではないからこそ気軽に言えるのかもしれません。いくらめずらしい出来事に遭遇したといっても、それは本人が期待していた種類の体験とは全く違うでしょう。彼らの多くは、トラブルや面倒な手続きを自分で処理するのがイヤだからこそ旅行代理店を利用していたわけで、自分が巻き込まれたトラブルを、貴重な体験だと解釈して面白がるような心境には、とてもなれないかもしれません。

 

それでも、旅先でのドタバタ劇も、そこで感じていた不安や怒りも、その最中はともかく、帰国後は、いい話のネタにはなるだろうし、数年も経てば、当時のことをあれこれ思い出し、自分が困難な状況をくぐり抜ける中で、いろいろと感じることや学ぶことも確かにあったな……と気づいたりすることもあるのではないでしょうか。

 

ただ、それも、旅に出ていればの話です。

 

てるみくらぶの事件でも、トーマス・クックの事件でも、出発そのものがキャンセルされ、旅立つことすらできなかった数多くの人々にとっては、旅でリフレッシュされる機会を失った、これまで通りの日常が延々と続くだけでなく、そこにさまざまな金銭的損失とか、自分には何の責任もないトラブルの後始末がのしかかってくるわけです。

 

どれだけ屁理屈をこねまわしてみても、それを貴重な体験だと、ポジティブに受け止めるのは非常に難しいのかもしれません。

 

 

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