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旅してみたら分かる……かも

ずっと昔、長い旅をしていたころ、面白い旅人や、すごい旅人たちに何度も出会いました。

 

すでに数え切れないほどの国々を旅した人、自転車を漕いで、地を這うような旅を続けている人、ほとんど休むことなく、ひたすら移動を繰り返している人、現地に長期滞在して、ほとんど根を下ろしてしまったような人、旅先で身ぐるみ剥がされるなど、大変な経験を生き延びてきた人、などなど……。

 

そういう人たちから旅の話を聞くのは刺激的だったし、たとえとりとめのない会話であっても、その端々に、その人ならではのユニークな視点や考え方が垣間見えて、とても興味深いものがありました。

 

今思えば、そういう貴重な機会をムダにせず、もっといろいろなことを突っ込んで聞いておけばよかったな、という気がしないでもありません。彼らの「武勇伝」はもちろんですが、それ以外にも、旅先でのさまざまな試練によって自分の限界に突き当たり、それを乗り越えていく中で学び取ってきたことなど、体験者にしか分からないことが、たくさんあったはずです。

 

そしてそれらは、私たちのような、ごく普通の生活をしている人間にとっても、耳を傾けるに値するものだったのではないでしょうか。

 

でもまあ、そういうことに関しては、旅先で出会う旅人一人ひとりから地道に聞き取っていくよりも、むしろ、これまでの長い歴史の中で人類が残した膨大な探検記や旅行記の名作から読み取っていく方が、ずっと効率的ではあるのかもしれません。

 

それに、紛争地を駆け回るジャーナリストや、辺境で国際的な援助活動に携わる人たちや、極地への探検家、あるいは、さまざまな分野の第一人者として、世界を駆け回る有名人など、普通の旅先ではほとんど会えないような人々の活動や、彼らの内面も、やはり本とかドキュメンタリー映像などを通じてでないと、なかなか知ることができなかったりします。

 

実際、私自身も、旅に出るずっと前から、そうした旅行記を読むのを楽しみにしてきました。

 

しかし、過去の偉大な旅人たちにどれだけ文才があり、自分の体験や学びの数々を、いかにうまく言葉で表現できたとしても、やはり、彼らの経験したことのすべてを伝えることなど不可能です。

 

それに、それらを受け止める側の私たちも、未知の世界への興味や理解力には限りがあるので、彼らの語るすべての話につき合い、それを隅々まで理解することはできないでしょう。

 

というか、そういう問題よりも、もっと本質的なものとして、そこには、実際に何かを体験した者と、それらを言葉という不完全なものを通して伝えられる者とのあいだの、どうしても越えることのできない、大きくて深い溝があります。

 

偉大な旅人たちが、旅の中で何を目にし、何を感じてきたのか、それによって彼らがどう変わっていったのか、言葉の表面的な意味だけではなく、もっと深いレベルでしっかりと理解したいのなら、結局のところ、彼らと同じようなことをやってみるしかないのかもしれません。

 

だから、もしも、これまですごい旅を重ねてきた旅のマスターみたいな人物が、旅の話を聞きたがる人たちに、「旅してみたら分かるよ」みたいな、一見突き放すような言い方をすることがあったとしても、それは、自分の経験を鼻にかける傲慢さとか、言葉で伝えるのを面倒くさがる怠慢からではなく、きっと、純粋な親切心からなのだと思います。

 

そしてそれは、本を読んだり、テレビやネットで映像を見たり、人から話を聞いたりして、私たちが表面的に理解できる範囲の物事だけで何かが分かったつもりになってしまうと、むしろ、その向こうにある、もっと素晴らしいものや、もっと大事なものを見逃したままで終わってしまうかもしれない、ということを、できるだけシンプルに伝えようとしているのかもしれません。

 

もちろんそれは、旅に限らず、ほかのすべての分野についてもいえることだと思いますが……。

 

しかし、残念ながら、私たちのすべてが、彼らのそういうアドバイスに素直に従って、過酷だけれど実りも多い旅の世界に飛び込み、その世界にどっぷり浸かろうとするわけではありません。

 

ただ、それは、旅の先達者たちの親切心が伝わらなかった、ということではないと思います。メッセージというものがうまく伝わり、それが相手の心境や行動の変化につながるためには、さまざまな条件がピタッとかみ合う必要があるし、そういう適切なタイミングというのは、いつでもどこでも転がっているわけではないし、誰にでも同じようにやってくるわけでもありません。

 

そして、それはそれで仕方ないというか、この世界というのは、そういうふうにできているのでしょう。

 

それに、旅の達人たちだって、別に、すべての人たちが彼らと同じように旅にのめり込むことなんて期待していないと思います。

 

彼らはただ、旅というものには、人生を賭けるに値する何かがあるかもしれないよ、というヒントを、言葉以上に、自分たちの行動それ自体で雄弁に示してくれているだけだし、それは、他の分野のマスターたちにしても同じことなのだと思います。

 

この世界では、そうしたヒントやさりげない誘いが、あちこちにバラ撒かれたり、仕掛けられたりしているわけですが、それらにどう反応するかは、あくまでも私たち自身に任されているし、その自由さこそが、この世の面白さの一つの理由でもあるのでしょう。

 

 

JUGEMテーマ:旅行

at 19:49, 浪人, 地上の旅〜旅全般

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