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『深夜特急〈1〉香港・マカオ』

深夜特急〈1〉香港・マカオ
深夜特急〈1〉香港・マカオ
沢木 耕太郎

 

Kindle版はこちら

評価 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です

読む読まないは別にして、バックパッカーならたぶん知らぬ者はいない、超有名な『深夜特急』です。私も文庫版が出た1994年に読みました。『深夜特急』を読んだからというわけではありませんが、数年後に私も長い旅に出ました。

今になって、この本を読みつつ当時の自分の心境などを思うと、自分ではそのつもりはなくても実は結構大きく影響されていた、少なくとも旅立とうという気持ちを高めるための強力な一押しになっていたことは間違いないと思います。

『深夜特急1』は、旅立ちの瞬間から香港・マカオまでです。沢木氏が一応設定した旅のテーマは、乗り合いバスでデリーからロンドンまで行くことなので、香港の旅はいわば付録というか前座のようなものですが、「毎日が祭り」のような香港の放つ熱気や、マカオのカジノで「大小」というサイコロ博奕にハマっていくエピソードが生き生きと描かれていて、この一冊だけでも香港・マカオの旅行記として充分に楽しめます。

特に、マカオの章「賽の踊り」はすばらしいと思います。博奕について無関心なはずだった沢木氏が、まずは素人らしい単純な張り方で、次にはディーラーの狙いやゲームの本質を鋭く考察しつつロジカルな張り方で「大小」に挑むのですが、勝ったり負けたりを繰り返すうちに賭け金はどんどんつりあがり、ついには引き返せないところまで気持ちが深入りしていきます。その内面、外面のプロセスが的確かつ簡潔に描かれていて、非常にスリリングです。

最後にはちょっと神がかり的な状態にまでなるのですが、それらすべてのプロセスを二日だけのマカオ滞在で体験するというのは、ちょっと出来すぎのような気がしないでもありません。もっとも、私自身はそこまで博奕にのめり込んだことがないので、本当のところは経験してみないとわからないのかもしれません。

旅をしてかなり経ってから書かれたということもあるのか、沢木氏の文章は巧みでバランス感覚があり、若さを描いても傲慢にならず、アジアの影の部分を描いても下品にならず、鋭いコメントやユーモラスなエピソードも程よく埋め込んであって、旅行記や「青春モノ」としてはもちろん、エンターテインメントとしても楽しめるようになっています。

文庫の巻末に山口文憲氏との対談があって、沢木氏が『深夜特急』の旅をした1970年代半ばの時代背景や、沢木氏の旅のスタイルについて具体的に触れられていて、非常に興味深い内容です。

今でこそ、「ユーラシア横断」みたいな旅はそれほどめずらしくなくなりましたが、30年前はほとんど現地の情報もなく、欧米以外に対する日本国内での興味関心もほとんどないような状態だったわけです。そういう状況で旅立つということについては、現在以上の覚悟が必要だろうし、旅も困難なものだっただろうと考えられます。

また一方で、当時アジアといえば政治的、宗教的関心から注目される場合が多かったはずで、いわゆるヒッピーなど、旅もまたそれを反映したものが多かったのではないかと思いますが、『深夜特急』にはそういう色彩があまり感じられません。

これは沢木氏自身の関心がそういった方面に向かなかったのか、本が執筆・出版された時代の要請だったのかよく分かりませんが、いずれにしてもそのおかげでこの本は時代の色に染まることから逃れ、今の私たちが読んでも古さを感じさせないし、多くの人に受け入れられるであろう一種の普遍性を持っているように思います。

『深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール』の紹介記事
『深夜特急〈3〉インド・ネパール』の紹介記事
『深夜特急〈4〉シルクロード』の紹介記事
『深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海』の紹介記事
『深夜特急〈6〉南ヨーロッパ・ロンドン』の紹介記事


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします

at 19:54, 浪人, 本の旅〜中国・東アジア

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