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2010.07.30 Friday
旅の名言 「外国人に食べ物を……」
フランス人を徳島駅まで案内してやり、そこでロッテリアのアップルパイ100円を奢って別れた。外国人に食べ物を奢るときのコツは、後でひとりのときに食べられるものをあげることである。今食べないと悪いという気持ちにさせてはいけない。相手は睡眠薬強盗などを疑っている可能性があるからだ。って、なんでこんなことに一家言持っているのであるか私は。
『スットコランド日記』 宮田 珠己 本の雑誌社 より
この本の紹介記事
紀行エッセイストの宮田珠己氏が、自らの日常を独特の文体で綴った脱力エッセイ、『スットコランド日記』からの一節です。
ある日、思い立って四国遍路に出発した宮田氏は、東京から徳島へ向かうフェリーで、フランス人の若者と一緒になります。彼はその若者に対して、押しつけがましくならないように気を使いつつ、いろいろと世話を焼くのですが、翌朝、徳島で別れるときに、ちょっとした食べ物を奢りました。
しかし、そこは旅慣れた宮田氏、心得たものです。旅人が、見知らぬ人から食べ物をもらったら対応に困るだろうことを見越して、「後でひとりのときに食べられるもの」をわざわざ選ぶ気配りを見せるのです。
とはいえ、ここは安全な日本です。そのフランス人は別に、睡眠薬強盗のことなんか気にしてなかったんじゃないかという気がするし、たぶん多くの読者は、宮田氏が変なところまで気を回しすぎだと感じ、その感覚のズレに思わず笑ってしまうのではないでしょうか。
ただ、私自身がバックパッカーとして旅をしていたときの経験からすれば、実はこういう配慮は、決してやりすぎではないし、むしろありがたい心遣いなのです。そしてまた、安全とされている国に住む私たちこそ、安全でない国を旅する人間の常識や、旅人の抱く不安について、もっとこういうデリカシーを持つべきなのかもしれないという気がします。
旅人は、旅先で会った見知らぬ人から食べ物や飲み物を勧められたとき、いつもジレンマに陥ります。その親切心をありがたく感じ、相手の気持ちに応えて、その場でそれをおいしそうに食べたいと思うものの、一方で、もしも相手が親切を装った悪人で、その中に睡眠薬でも入っていたら、そのまま意識を失ってゲーム・オーバーになるかもしれない、そんな疑いを拭い去ることができないのです。
その疑いは、旅先の国が安全だからといって、完全に消えるものではありません。睡眠薬強盗などまず考えられないような国でも、それはゲーム・オーバーになる可能性が低いというだけであって、危険がゼロになるわけではありません。
もちろん、旅人は自らの経験とカンを働かせ、ここは大丈夫そうだとか、ここは断った方がよさそうだとか、いろいろと判断をするわけですが、その見極めがつかないときが辛いのです。そういうときでも、相手の気持ちを傷つけるのを承知で親切を断るか、リスクを覚悟でそれを受け入れるか、一瞬のうちに選択しなければならず、それが心の負担になるのです。
たぶん宮田氏は、旅人として、自分自身でそういうジレンマを何度も経験しているのでしょう。だから、自分がもてなす側に立ったときでも、旅人の気持ちにまで気が回り、彼らがそういうジレンマを味わわなくても済むような、さりげない配慮ができるのだと思います。
といっても、その配慮は、別に難しいことではありません。旅人がジレンマを感じるのは、相手の目の前で食べ物や飲み物を口に入れなくてはならない場合だけなので、そういう状況を作らないようにすればいいだけなのです。
何か食べ物や飲み物をあげるときには、(できれば別れ際に)あとで食べてくれといって渡せば、旅人の方は、そこに睡眠薬が入っている可能性はまずないと判断できるし、最終的にそれを口にするか否かも、一人になったときにゆっくりと決められます。
外人さんが、自分のあげた食べ物をおいしそうに食べている姿を見てみたいというのは、自然な人情ですが、その親切が、場合によっては彼らを苦しいジレンマに追い込んでいるかもしれないということは、知っておいた方がいいのかもしれません……。
JUGEMテーマ:旅行
2010.07.24 Saturday
『わけいっても、わけいっても、インド』
評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
この本は、バックパッカー向けの旅行専門誌『旅行人』の主宰者で、作家・グラフィックデザイナーの蔵前仁一氏によるインド旅行記です。
蔵前氏はこれまでにも、『新ゴーゴー・インド』など、インドの旅を描いた楽しい著作があるのですが、今回の旅は、インドの先住民アディヴァシーの文化がテーマです。蔵前夫妻は、アディヴァシーの素朴で美しい絵画を求めて、観光客のほとんど訪れないインドの僻地へと分け入っていきます。
第1章は、ミティラー画を求めて、ビハール州のマドゥバニ周辺をめぐる旅(2004年)。
ウィキペディア 「ミティラー画」
第2章は、ラトワ族によるピトラ画(チョタ・ウダイプル周辺)を探し、ついでにグジャラート州の見どころをまわる旅(2007年)。
第3章は、ワルリー族の壁画ワルリー画(マハーラーシュトラ州タラサリ)や、ゴンド族のゴンド画(マディア・プラデシュ州など)、ラジワールというカーストの、日本の鏝絵に似たクレイ・ワークの美しい家(チャッティースガル州アンビカプル周辺)などを求めて、西のムンバイから東のプリーまで、インド亜大陸を横断する旅(2009年)。
インドの民俗画のほかにも、二人は各地の織物・刺繍・染物や、真鍮細工・陶芸などの工芸品、さらには古今の建築まで、幅広く目配りしながら旅をしています。非常に盛りだくさんでにぎやかなカラー写真から、そうしたインドの美の世界や、旅先の風景が生き生きと伝わってきます。
また、旅のエピソードとともに、鉄道・バスの便や所要時間、それぞれの街の雰囲気やホテルの質など、バックパッカーの視点に立った簡潔で的確な旅情報も示されているので、実際に旅をしようと思う人にも参考になると思います。
でも、読んでいていちばん面白いのは、やはり、旅先で出会う人々とのやりとりを描いた場面でしょう。この本にも、親切だけれど少々おせっかいで、お茶目なインド人が多数登場します。
さすがに蔵前氏はインドとのつき合いが長いだけあって、彼らへの応対は手慣れたもので、彼らを全面的に信用するわけではなく、かといって疑い深い目で見ているわけでもなく、相手との距離の取り方が絶妙です。そして、そこにはインドやインド人に対する温かいまなざしが感じられます。
また、この本には、自分なりのテーマを見つけ、オリジナルの旅を組み立てていく楽しさがあふれています。ガイドブックやインターネットでは情報が手に入らないような土地を、手探りで旅するのには不安もあるだろうし、さまざまな困難にも遭遇するはずですが、だからこそ筋書きの見えない面白さもあります。
実際、この本を読めば、現地の言葉を流暢に話せなくても、学者や専門家でなくても、個人として可能な限りの準備をし、旅人としての注意やマナーを守った上であれば、地球のどこでも自由に旅することができるのだということに、改めて気づかされるのではないでしょうか。
ただ、多くの人にとっては、インド先住民のアートというこの本のテーマは、かなり地味に感じられるかもしれません。そういう意味では、インドをすでに何度か旅した方や、インドについて、ある程度の予備知識をもった方にお勧めしたいと思います。
本の評価基準
以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。
★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします
JUGEMテーマ:読書
蔵前氏はこれまでにも、『新ゴーゴー・インド』など、インドの旅を描いた楽しい著作があるのですが、今回の旅は、インドの先住民アディヴァシーの文化がテーマです。蔵前夫妻は、アディヴァシーの素朴で美しい絵画を求めて、観光客のほとんど訪れないインドの僻地へと分け入っていきます。
第1章は、ミティラー画を求めて、ビハール州のマドゥバニ周辺をめぐる旅(2004年)。
ウィキペディア 「ミティラー画」
第2章は、ラトワ族によるピトラ画(チョタ・ウダイプル周辺)を探し、ついでにグジャラート州の見どころをまわる旅(2007年)。
第3章は、ワルリー族の壁画ワルリー画(マハーラーシュトラ州タラサリ)や、ゴンド族のゴンド画(マディア・プラデシュ州など)、ラジワールというカーストの、日本の鏝絵に似たクレイ・ワークの美しい家(チャッティースガル州アンビカプル周辺)などを求めて、西のムンバイから東のプリーまで、インド亜大陸を横断する旅(2009年)。
インドの民俗画のほかにも、二人は各地の織物・刺繍・染物や、真鍮細工・陶芸などの工芸品、さらには古今の建築まで、幅広く目配りしながら旅をしています。非常に盛りだくさんでにぎやかなカラー写真から、そうしたインドの美の世界や、旅先の風景が生き生きと伝わってきます。
また、旅のエピソードとともに、鉄道・バスの便や所要時間、それぞれの街の雰囲気やホテルの質など、バックパッカーの視点に立った簡潔で的確な旅情報も示されているので、実際に旅をしようと思う人にも参考になると思います。
でも、読んでいていちばん面白いのは、やはり、旅先で出会う人々とのやりとりを描いた場面でしょう。この本にも、親切だけれど少々おせっかいで、お茶目なインド人が多数登場します。
さすがに蔵前氏はインドとのつき合いが長いだけあって、彼らへの応対は手慣れたもので、彼らを全面的に信用するわけではなく、かといって疑い深い目で見ているわけでもなく、相手との距離の取り方が絶妙です。そして、そこにはインドやインド人に対する温かいまなざしが感じられます。
また、この本には、自分なりのテーマを見つけ、オリジナルの旅を組み立てていく楽しさがあふれています。ガイドブックやインターネットでは情報が手に入らないような土地を、手探りで旅するのには不安もあるだろうし、さまざまな困難にも遭遇するはずですが、だからこそ筋書きの見えない面白さもあります。
実際、この本を読めば、現地の言葉を流暢に話せなくても、学者や専門家でなくても、個人として可能な限りの準備をし、旅人としての注意やマナーを守った上であれば、地球のどこでも自由に旅することができるのだということに、改めて気づかされるのではないでしょうか。
ただ、多くの人にとっては、インド先住民のアートというこの本のテーマは、かなり地味に感じられるかもしれません。そういう意味では、インドをすでに何度か旅した方や、インドについて、ある程度の予備知識をもった方にお勧めしたいと思います。
本の評価基準
以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。
★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
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2010.07.18 Sunday
旅の名言 「私はもう、……」
もはや見るものも聞くものもないとばかりに、私はひたすら車を走らせてきた。私はもう、見聞して吸収する限界を越えてしまったのだ。満腹した後になってもひたすら食べ物を詰め込み続ける男のようなものである。
目に入ってくるものがみんな同じように見え、戸惑いを覚えていた。どの丘も、みんな一度通ったように見えるのだ。マドリード のプラド美術館で百枚もの絵画を見た後にもこんな風に感じた。――視覚が満腹したどうしようもない状態で、これ以上見ることはできそうもなかった。
『チャーリーとの旅』 ジョン スタインベック ポプラ社 より
この本の紹介記事
ノーベル賞作家のスタインベック氏によるアメリカ旅行記、『チャーリーとの旅』からの引用です。
彼はキャンピングカーに愛犬チャーリーを乗せて東海岸を出発し、反時計回りにアメリカをぐるりと一周する長い旅に出るのですが、西海岸に達して再び東をめざし、南西部の大分水嶺に至って、旅もいよいよ大詰めにさしかかろうというところで、ついに彼の好奇心はすり切れてしまいます。
美術館で膨大な絵画を見ているうちに感覚が麻痺して、せっかくの名画がどうでもよくなってしまうように、彼の視覚は飽和状態になって、車窓から眺めるものすべてが同じに見えてしまうのです。
旅が一度こんな状態になってしまうと、あとはただ機械的に移動を続けているだけで、そこにはもう、新鮮な驚きや喜びはありません。スタインベック氏は、旅の感動を失った状態で、ただひたすらゴールに向かって車を進めるしかありませんでした。
そして、これは彼だけが体験した特別な状態ではなく、状況次第でどんな旅人にも起こり得ることです。特に、何か月、あるいは何年という長い旅をしたことのある人なら、その多くが、似たような経験をしているのではないでしょうか。
旅への倦怠というか、精神の飽和状態というか、こういう無感動状態は、旅先の風景に対してだけでなく、旅のあらゆる体験を不毛なものにしてしまいます。旅に出た当初なら間違いなく感動したはずの素晴らしい景色や、面白い人物に出会っても、以前にどこかで同じ経験をしたような感覚が、旅人をしらけさせてしまうのです。
こんなとき、失われた感受性を取り戻そうとして、さまざまな試みをする旅人もいます。目先を変えるために、気候や風土の異なる別の国や地方に足を向けてみるとか、新しい旅のテーマを探すとか、あるいは逆に、ひとつの場所に腰を落ち着けてアルバイトでもしながら、旅への好奇心が再び高まってくるのを待つとか……。
そして、それでもどうにもならないとき、旅人に残された道は、スタインベック氏のように、ただひたすら家路へと急ぎ、旅を早く終わらせることだけです。
ひとつの旅で人間が受け入れることのできる経験に一定の限界があるのだとすれば、それが、旅の終わりを決める一つの要因になるのかもしれません。
もっとも、新鮮な感受性が失われたからといって、必ずしも旅をやめる必要はないかもしれません。旅人にとってあまり現実的な判断ではありませんが、理屈のうえでは、感受性をすり切らしたまま、あえて苦しい旅を続け、そういう状態を突き抜けた先に何が見えてくるか、自分の目で確かめてみる、という道もあります。
しかし、さすがに私も、そこまで無理して旅を続けた経験はありません。だから、その先に何が起こるのかについては何ともコメントしようがないし、他の旅人にそれを勧めようとも思いません。
そして実際、その先には何もなく、どこまでも不毛な旅が続くばかりで、それはきっと、単なる孤独な我慢大会になってしまうような気がします……。
JUGEMテーマ:旅行
2010.07.12 Monday
『ショットガンと女』
評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
この本は、インド旅行記の名作『印度放浪』などで知られる写真家の藤原新也氏による旅のエッセイ集です。
今回の作品は、藤原氏の他の旅行記とは趣向が異なり、彼がこれまでの旅の中で体験してきた「実に単純で即物的な」エピソードのいくつかを、モノクロの写真とともに語るというものです。
たとえば、ショットガンを携えてインドの女郎屋に乗り込んだ話とか、バリ島で花を餌にして魚を釣った話とか、アテネでしつこくつきまとう詐欺師をやりこめた話とか、あるいは、アメリカで奇妙な墓参りに同行した話など、少々荒っぽい話から、しみじみと心に残るような話まで、全部で32の多彩なエピソードが収められています。
ショットガンの話などは、本当なのかどうか、にわかには信じがたいところがあるし、トルコで手に入れたというその銃をどうやってインドまで持ち込んだのかなど、具体的にいろいろと疑念も湧くのですが、まあ、何十年も昔のことではあるし、他の人にはともかく、藤原氏ならそういうことができてもおかしくないかな、という気はします。
それにしても、多くは若い頃のエピソードとはいえ、藤原氏もずいぶん荒っぽい旅をしてきたんだな、と思います。トラブルが旅を活性化するという彼の主張は、それなりに理解できるのですが、それは当然かなりのリスクを伴うものだし、あまり人にオススメできる旅のスタイルではありません。
それに、今はそういう危なっかしい旅というのは、あまり流行らないような気がします。
もっともそれは、ひとむかし前よりも私たちが賢くなったからというより、現地の情報が簡単に手に入るようになり、旅先で未知の危険や異質な出来事に遭遇する機会が減ったために、旅人がささやかな武勇伝を打ち立てるチャンスが減ってしまったということなのかもしれません。
あるいはまた、それは、私たちが安心・安全と引き換えに、退屈な管理社会の内側で生きることに慣れ切ってしまい、あえて旅の苦労やトラブルを覚悟してまで、その外部に躍り出ようとする意欲を失ってしまったせいなのかもしれません……。
本の評価基準
以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。
★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします
JUGEMテーマ:読書
この本は、インド旅行記の名作『印度放浪』などで知られる写真家の藤原新也氏による旅のエッセイ集です。
今回の作品は、藤原氏の他の旅行記とは趣向が異なり、彼がこれまでの旅の中で体験してきた「実に単純で即物的な」エピソードのいくつかを、モノクロの写真とともに語るというものです。
たとえば、ショットガンを携えてインドの女郎屋に乗り込んだ話とか、バリ島で花を餌にして魚を釣った話とか、アテネでしつこくつきまとう詐欺師をやりこめた話とか、あるいは、アメリカで奇妙な墓参りに同行した話など、少々荒っぽい話から、しみじみと心に残るような話まで、全部で32の多彩なエピソードが収められています。
ショットガンの話などは、本当なのかどうか、にわかには信じがたいところがあるし、トルコで手に入れたというその銃をどうやってインドまで持ち込んだのかなど、具体的にいろいろと疑念も湧くのですが、まあ、何十年も昔のことではあるし、他の人にはともかく、藤原氏ならそういうことができてもおかしくないかな、という気はします。
それにしても、多くは若い頃のエピソードとはいえ、藤原氏もずいぶん荒っぽい旅をしてきたんだな、と思います。トラブルが旅を活性化するという彼の主張は、それなりに理解できるのですが、それは当然かなりのリスクを伴うものだし、あまり人にオススメできる旅のスタイルではありません。
それに、今はそういう危なっかしい旅というのは、あまり流行らないような気がします。
もっともそれは、ひとむかし前よりも私たちが賢くなったからというより、現地の情報が簡単に手に入るようになり、旅先で未知の危険や異質な出来事に遭遇する機会が減ったために、旅人がささやかな武勇伝を打ち立てるチャンスが減ってしまったということなのかもしれません。
あるいはまた、それは、私たちが安心・安全と引き換えに、退屈な管理社会の内側で生きることに慣れ切ってしまい、あえて旅の苦労やトラブルを覚悟してまで、その外部に躍り出ようとする意欲を失ってしまったせいなのかもしれません……。
本の評価基準
以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。
★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします
JUGEMテーマ:読書
2010.07.06 Tuesday
『スットコランド日記』
評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
この本は、紀行エッセイストの宮田珠己氏が、2008年4月から「WEB本の雑誌」上で連載した日記のうち、最初の1年分をまとめたものです。
彼の作品を読んだことのある方ならおなじみの、どこまでが本気で、どこからが冗談か分からないような独特の文体で、「いつも前向きに後ろ向き」な彼の日常がユーモラスに綴られています。
日記を読むと、宮田氏はさすがに旅行作家らしく、日本各地へ頻繁に取材の旅に出ているのですが、その帰りには寄り道をして別の場所を旅し、さらにプライベートでも家族を連れて、あるいは一人で、しょっちゅうあちこちに出かけています。それどころか、仕事場で原稿を書いているときも、天気がいいと机に向かっていられなくなり、ついふらふらと外出してしまうほどです。
ここまでくると本人も書いているように、まさに「外出依存症」で、宮田氏の旅好きは筋金入りです。
それにしても、読んでいてうらやましいのは、彼が、フリーならではの時間的な自由を享受しながら、さまざまな分野に好奇心のアンテナを張りめぐらし、自分自身の興味関心の方向性にも忠実に従って、自分にとって未知な風景・未体験の世界を探求し続けていることです。
仕事をきちんと仕上げ、家族を養い、子供たちともしっかり遊びつつ、そういう生き方を貫くのはかなり大変なはずで、実際、この日記からは経済的・精神的な厳しさも垣間見えますが、それでも何とか生活が成り立っていて、その生活ぶりをユーモラスに語る余裕があるというのは、やはり宮田氏の才能なのでしょう。
本の評価基準
以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。
★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします
JUGEMテーマ:読書
彼の作品を読んだことのある方ならおなじみの、どこまでが本気で、どこからが冗談か分からないような独特の文体で、「いつも前向きに後ろ向き」な彼の日常がユーモラスに綴られています。
日記を読むと、宮田氏はさすがに旅行作家らしく、日本各地へ頻繁に取材の旅に出ているのですが、その帰りには寄り道をして別の場所を旅し、さらにプライベートでも家族を連れて、あるいは一人で、しょっちゅうあちこちに出かけています。それどころか、仕事場で原稿を書いているときも、天気がいいと机に向かっていられなくなり、ついふらふらと外出してしまうほどです。
ここまでくると本人も書いているように、まさに「外出依存症」で、宮田氏の旅好きは筋金入りです。
それにしても、読んでいてうらやましいのは、彼が、フリーならではの時間的な自由を享受しながら、さまざまな分野に好奇心のアンテナを張りめぐらし、自分自身の興味関心の方向性にも忠実に従って、自分にとって未知な風景・未体験の世界を探求し続けていることです。
仕事をきちんと仕上げ、家族を養い、子供たちともしっかり遊びつつ、そういう生き方を貫くのはかなり大変なはずで、実際、この日記からは経済的・精神的な厳しさも垣間見えますが、それでも何とか生活が成り立っていて、その生活ぶりをユーモラスに語る余裕があるというのは、やはり宮田氏の才能なのでしょう。
本の評価基準
以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。
★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします
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