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21世紀のスナフキン

アニメ制作会社の創立や、ユニークなダイエット法の普及など、多彩な活動で知られる評論家の岡田斗司夫氏による無料講演が、You Tube にアップされていたので見てみました。




「私たちは生涯、働かないかもしれない」という、なかなか刺激的なタイトルですが、講演は、主に若い世代を対象に、仕事やカネに関する私たちの常識を根底から見直し、大胆な未来予測をふまえた新たな生活スタイルを提案する内容になっています。

といっても、堅苦しい話ではなく、ユニークな喩えやエピソードなど、岡田氏の巧みな話術を楽しんでいるうちに、彼の結論に何となく納得させられてしまうという趣向です。

ちなみに、下のリンク先で講演のほとんどが文字起こしされているので、興味はあるけど時間がないという方は、それを読んでみてもいいかもしれません。
岡田斗司夫公式ブログ 【映像・音声・まとめ】「私たちは生涯、働かないかもしれない」@同志社大学

講演は、以下の三部構成になっています。

第1部 就職はオワコンである
第2部 カネもオワコンである
第3部 勇者という生き方

「オワコン」とは、「終わったコンテンツ」、つまり、一時の役割を終えて、すでに時代遅れになったモノ、というような意味です。

第1部では、IT革命とグローバル化によって、企業の寿命がどんどん短くなり、失業する人間が増え、仕事が極端に忙しい人と仕事のない人との二極化が進みつつあること、そういう環境では、これまでのような就職をしようとしてもしんど過ぎるし、個人の頑張りだけで何とかなる時代でもないのだということが語られます。

そして、それをふまえて、これからは一つの仕事だけに生活を賭けるよりも、個人が(例えば月3万円くらいの収入になる)小さな仕事をいくつも持つような、分散多職をめざすべきだとしています。

次の第2部は、消費とカネに関する、私たちの思い込みについての話です。

私たち人間は、本来、社会的生物として集団で生きるようになっていたのが、いつしか、各自がバラバラに好きなことをすることが幸せで、その欲望をかなえることこそ経済的繁栄であると考えるようになりました。カネさえあれば、人と深く関わる煩わしさから自由になり、豊かな生活を謳歌できると思い込むようになったのです。

ところが、気がつけば、私たちは自分だけでは使い切れないモノに囲まれ、その一方で、カネを稼ぐためにストレスを背負い込むという、不本意な生活をしています。

では、私たちは、今後、どんな生き方を思い描けばいいのでしょう?

そのためには、岡田氏の描く未来社会、つまり「評価経済社会」とはどのようなものなのか、詳しく知っておく必要がありそうですが、この講演では、それについてはほとんど触れられていません。ただ、断片的に語られた内容からすると、それは、人やモノに対する評価が目に見える形で流通し、それがカネ以上に大きな力を持つ社会であるらしいことが分かります。

講演の第3部では、「いい人戦略」というキーワードに沿って、その新しい社会に適応するための具体的な処方箋が示されるのですが、そうやってお互いに良好な人間関係を維持し、小さな仕事を通じてさまざまなノウハウを身につけ、その先はどうするのかというと、岡田氏は、「勇者」になって冒険しながら、困っている人を助ける、たとえば、ムーミンの物語に出てくる旅人スナフキンのように、一生ぶらぶらして暮らすのが楽しいというのです。

それは、別の言葉で言いかえれば、プロフェッショナルとして世界に通用する一握りの人間になるとか、大きな目標を目指してひたすら頑張るよりも、何となく人助けをしながら、気持ちのいい仲間たちとぶらぶら生きる、そのプロセス自体に面白さを見出していこうということです。

人によっては、それは冗談半分の話か、本気だとしても、あまりにも空想めいていると感じられるかもしれません。

たしかに、この講演だけでは、未来の社会についての具体的なイメージがあまり湧いてこないので、彼の話を真面目に受けとめるにしても、著書や他の講演などをあたって、「評価経済社会」についてのもう少し詳しいイメージを共有する必要はありそうです。   

ただ、今後の激しいグローバル競争を勝ち抜ける才能も運もなく、かといって、これまで通りのやり方でひたすら頑張り続ける気力もないと感じている私のような人間にとって、岡田氏の話には希望が見える気がします。

今の世の中には、一握りの成功者の視点からグローバルな競争を礼賛する話とか、逆に、変化を拒み、将来への不安をひたすら煽るような話が満ちあふれていますが、彼の話はそのいずれでもなく、私たちがどうしたら今よりも少しラクに、そして楽しく生きていけるか、未来に対するポジティブな見通しをもって、一歩ずつ進むためのヒントを提示してくれているように思うからです。

ちなみに、個人的には、スナフキンのように生きるという結論にとても心惹かれるのですが、それには、私がバックパッカーとして旅をした経験が大きく影響しているかもしれません。

バックパック一つで旅を続けていると、人ひとりが生きていくうえで、本当に必要なモノなどごくわずかだし、カネを使わなくても、楽しいことはいくらでもあると強く感じるようになります。また、ドミトリーのような大部屋や、ゲストハウスのロビー、安食堂などで、現地の人や各国の旅人たちといろいろなやり取りをしていると、もちろんそれなりの煩わしさはあるものの、旅に思いがけない展開が生まれたり、さまざまな便宜も得られます。

そして、旅の面白さは、目的地にたどりつく喜び以上に、さまざまな課題やトラブルを解決したり、いろいろと寄り道をしながら少しずつ進んでいく、そのプロセスにこそあるということも深く実感するのです。

もっとも、バックパッカーには若い世代が多いし、休暇で旅を楽しむ人がメインなので、現実には、スナフキンのような放浪の旅人はかなりの少数派だし、さらに人助けもしている旅人となると、見かけることはほとんどないでしょう。

それでも、世界をぶらぶらしながら、生きるプロセスを楽しみ、人助けもする、というのは、実際はともかく、バックパッカー的な生き方を愛する人々にとっては、ひとつの理想像なのではないかという気はします。

ひとむかし前までは、放浪生活を長く続けたいと思っても、カネがなくなればどうにもならず、旅を中断してアルバイトをするか、旅をあきらめて就職口を探すしかありませんでした。放浪の人生を歩みつづけるというのは、かつては社会的に超マイナーな生き方であり、それに伴うあらゆる困難を自力で乗り越える力をもった、筋金入りの旅人だけに可能なことだったのです。

しかし、今、世界中で起きつつある巨大な変化によって、人間はこれまで以上に、住んでいる土地や所属する組織に縛られなくなり、また、インターネットのおかげで、移動生活をしながらでもある程度の人間関係を維持し、仕事のできる可能性が広がりつつあるようです。

それは、現在は、まだごく一部の旅人が試行錯誤を続けている段階のようですが、やがて岡田氏のいうように、スナフキンのように生きることが、単なるマイノリティの生活スタイルではなく、多くの人に選択可能な新しい生き方の一つとして、広く受け入れられる日がやってくるのかもしれません。

まあ、それで世の中がスナフキンだらけになるとしたら、それはそれで、少々うっとうしい気がしないでもないですが……。


記事 「旅と生業(なりわい)のジレンマ(1)」


JUGEMテーマ:日記・一般

at 18:48, 浪人, つれづれの記

comments(0), trackbacks(0)

『茶馬古道の旅 中国のティーロードを訪ねて』

 

評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください

茶馬古道とは、おもに中国南部の雲南省とチベットを結び、中国の茶とチベットの馬の通商に用いられた、かつての交易路のことです。

著者の竹田武史氏は、2006年から2007年に、7か月をかけて交易路の跡をたどり、各地の古老を訪ね、さまざまな民族の伝統的な喫茶文化や、馬帮(マーバン)と呼ばれたキャラバンの旅の記憶を取材しました。

この本には、その旅の簡潔なエッセイと、美しい写真の数々が収められています。

個人的には、茶の原産地といわれるシーサンパンナの森の中にたたずむ、樹齢数千年の「茶樹王」の迫力ある写真や、雪の峠からサボテンの群生する「暑い谷」まで、気候がめまぐるしく変化する梅里雪山の巡礼路に、特に興味をそそられました。

取材ルート上の大理、麗江などは、日本人にも名を知られた美しい街だし、チベット文化圏の香格里拉(シャングリラ、2001年以前の旧名は中甸)や徳欽(デチェン)も、今は観光開発が進みつつあるようです。現地で特産のマツタケを腹いっぱい食べたという人もいるかもしれません。

私も写真を眺めながら、雲南省やチベットを旅した頃のことを思い出しましたが、一方で、この本全体から感じる懐かしさのようなものは、そうした個人的な記憶とはまた別のようです。

雲南省を含め、東アジアから南アジアにまで広がる照葉樹の森とともに育まれてきた独特の文化は、日本の生活文化の一つのルーツともいわれているし、さまざまな少数民族の穏やかで慎ましい暮らしぶりのなかに、私たち日本人にとっての原風景のようなものを感じてしまうからでしょうか。
ウィキペディア 「照葉樹林文化論」

もっとも、かつての茶馬古道も、中国の経済発展と急速な開発によって激しい変貌を遂げつつあるし、また、各地のユニークな喫茶文化も、グローバル化の波に洗われ、やがては観光客向けのエンターテインメントとして、辛うじて消滅をまぬがれる運命にあるのかもしれません。

また、ルート上の東チベットは、2008年のチベット騒乱以来、政治的な緊張がさらに高まっており、外国人の立ち入りも厳しく制限されています。

この本から感じる、何ともいえない懐かしさの感覚と、それとは裏腹の厳しい現実。似たようなパターンは、辺境と呼ばれるような場所のあちこちで見られます。

19世紀まで世界の辺境だった日本も、奇跡的な経済発展と開発によって、多くのものを手に入れ、同時に、多くのものを失いました。そうした世界的規模のプロセスは、これからも多くの人々を巻き込みながら、とどまることなく続いていくのでしょう。


本の評価基準

 以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。

 ★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
 ★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
 ★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
 ★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
 ☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします



JUGEMテーマ:読書

 

at 18:27, 浪人, 本の旅〜中国・東アジア

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謹んで新年のごあいさつを申し上げます

年が明け、2012年がやってきました。

年越しから新年へと盛り上がる、いつもの儀式を繰り返しながら、でもやっぱり、例年とは明らかに違う気分で正月を迎えています。

昨年起きたいろいろなことが頭をよぎり、何か、無邪気でまっさらな気持ちでは新しい年に向き合えないという感じでしょうか。

でも、こういうときは、あえて意識して、気持ちを前向きにしていくことも必要かもしれないですね。

それに、身近な世界を注意深く見つめれば、美しいものや、心をワクワクさせたり、笑わせたり、和ませてくれるものが消えてしまったわけではありません。

今年も、世界はめまぐるしく変化していくでしょうが、それがもたらす興奮の渦に巻き込まれすぎないよう、冷静な視点を忘れずにいられれば、と思います。

2012年が、皆様にとって、有意義な一年でありますよう、お祈り申しあげます。

そして、気が向いたときには、また、このブログを訪ねてくださいますよう、よろしくお願いいたします。

2012年 元旦


JUGEMテーマ:日記・一般

at 09:41, 浪人, つれづれの記

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