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「ゆるキャラ」の中の人たち

最近、テレビでもネットでも、「ゆるキャラ」関連のトピックを毎日のように目にしますが、「ゆるキャラ」という言葉自体は、2000年に、みうらじゅん氏が使い始めたとされています。
ウィキペディア 「ゆるキャラ」

そのずっと前から、地域おこしやイベントなどで、マスコットキャラの着ぐるみが使われることはよくありましたが、みうら氏は、そんな中から、いかにも素人がこしらえたような、意味不明でツッコミどころの多いキャラを各地から発掘し、その面白さを紹介したのです。

当初は、その「ゆるさ」を笑われて反発していた自治体側も、2006年の「ひこにゃん」ブームの頃を境に、そのPR効果を期待して、計算された「ゆるさ」を打ち出してくるようになりました。

また、「ふなっしー」のように、自治体とは別に、非公認キャラとして個人的に活動し、芸能人のような成功を収めるケースも出てきています。

ちなみに、先日開催された「ゆるキャラグランプリ2013」には、地方自治体や企業、団体などから、1580体ものキャラがエントリーしたそうです。
ゆるキャラグランプリ オフィシャルウェブサイト

つまり、今、日本には、着ぐるみをかぶってキャラを熱演している「中の人」が、少なくとも千数百人以上いるということになりますが、諸般の事情で、グランプリにエントリーしなかったキャラも結構あるはずなので、「中の人」の総数はもっと多いでしょう。

また、着ぐるみに入る人だけでなく、キャラの企画や維持管理を担当するスタッフとか、それをサポートする業者も、広い意味で「中の人」ととらえるなら、その数は数千人以上になるのではないでしょうか。

それに加えて、地元のキャラを使った商品開発など、関連する事業も含めれば、さらに大勢の人が関与していることになります。

そう考えると、「ゆるキャラ」はすでにひとつの立派な業界になっていて、今後のブームの行方が、多くの人の生活に、直接・間接のインパクトを与える状況になっているのかもしれません。



ところで、「ゆるキャラ」が話題になるといっても、ほとんどの場合、大人気のキャラが注目を浴びているだけで、それ以外の無名キャラが取り上げられることはまずありません。

ごくごく一部の人気者がスポットライトを浴び、それがさらなる人気につながる一方で、それ以外の者が、その他大勢の扱いからなかなか浮かび上がれないのは、別にこの業界に限った話ではなく、芸能界でも、ビジネスの世界でも、みな同じです。

そして、そういう仕組みの中では、つねにメディアへの露出を増やし、人々の注目を浴び続けることが、PR効果に直接影響するだけに、人気キャラの運営は、今や、広告代理店などのプロが関わる大掛かりなものになっているようです。

当然、そのためにはカネもかかるし、失敗も許されません。

その結果、人気キャラの周辺には、何となく必死さが見え隠れして、本来「ゆるキャラ」のはずなのに、あまりゆるさが感じられないという、変なことになりつつあるような気がします。



もちろん、世の中にはいろんな人がいて、さまざまな目的や価値観のもとで仕事をしているわけだし、「ゆるキャラ」ブームの力を借りて、地元を大いに盛り上げよう、そのために最大限の努力をしようと、真剣に頑張っている人々がいるのは当然のことだと思います。

また、人気キャラを心から応援しているファンも、数多くいることでしょう。

ただ、「ゆるキャラ」業界に関わる数千人以上の人々が、みんなノリノリで仕事をしているわけではないだろうし、実際は、むしろその逆ではないかという気がするのです。

隣の自治体もやっているから、とりあえずウチも、みたいな動機で、適当にマスコットキャラを作ってはみたものの、地元で人気が出るわけでもなく、かといって、いったん始めてしまった以上、勝手にやめるわけにもいかず、そのままひっそりと存在し続けているような地味なキャラの方が、現実には圧倒的な多数派であり、「ゆるキャラ」のふつうのあり方なのではないでしょうか。

そして、個人的には、そうした中途半端なキャラを任された「中の人」たちが、日々どんなことを感じ、仕事に取り組んでいるのか、どうやってモチベーションを保っているのかというところに、より興味を覚えます。

スタッフには、しっかりした運営のノウハウもなければ、十分な予算もなく、何となく着ぐるみをかぶって、地元の小さな集まりに、お義理で出演しているようなケースも多いでしょう。

「ふなっしー」のような非公認キャラなら、個人が勝手にやっていることなので、人気が出ようが出まいが、あくまで自分の問題で、嫌になったらいつでもやめられますが、役所や団体のキャラの場合は、公の活動ということで、制約が多くて自由に動けないうえに、どんなに手応えがなく、虚しさを感じたとしても、業務としてやり続けるしかなかったりします。

そもそも、暑苦しい着ぐるみなんて、みんな着たくはないはずです。このあたりは、あくまで私の想像ですが、大方のケースでは、職場の若手とか、新人あたりに仕事が丸投げされて、本人も断れず、次の担当者に引き継ぐまでのガマンだと割り切っているのかもしれません。

考えてみれば、いったん決まってしまったキャラの外観とか設定は、担当者には変えられないし、予算にも活動にも制約があるとなると、「中の人」にとって、自分なりに工夫をしたり、オリジナリティを出せる余地は、ほとんどないのではないでしょうか。

そんな状況で、日々淡々と仕事に取り組んでいる方々の日常を想像すると、なかなか切ないものがありますが、彼らがどう感じているのか、私たちにそれを知るすべはほとんどありません。

中に誰が入っていて、ホンネではどう思っているのかは、あえて言わないのが、着ぐるみキャラとしてのお約束だからです。

まあ、担当者の中には、キャラを演じる面白さに目覚めて、人気があろうがなかろうが、それなりに役目をエンジョイしている人もいるかもしれませんが……。



……と、ここまで書いてきて、こうした構図は「ゆるキャラ」に限った話ではないことに気づきました。

世の中は、ごくわずかの有名ブランド企業や有名人と、それ以外の圧倒的多数の、無名の企業や普通の人々で成り立っています。

ほとんど知られていなかったり、いまひとつ人気の出ない商品を黙々と作り続けているメーカーはいっぱいあるし、サービス業にしても同じです。

一つの会社の中でも、花形部門があれば、地味だったり、お荷物と呼ばれる部門があったりします。

そういう日の当たらないところで仕事をしている人は、充分な予算が与えられることもないし、組織としてのさまざまな制約に阻まれ、発言力もないために、自分なりのアイデアを生かしたり、オリジナリティを発揮することは難しいでしょう。

それでも多くの人は、そんな状況の中でも、何とか自分なりにモチベーションを保ちながら、淡々と日々の仕事に取り組んでいるのだと思います。

私が、地味なキャラの「中の人」につい興味をもってしまうのは、そこに自分自身と同じような状況を見て、その切なさを想像しつつ、勝手に共感しているからなのかもしれません……。


JUGEMテーマ:日記・一般

at 18:17, 浪人, つれづれの記

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