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日常をリセットする旅
「元・日本一のニート」の pha さんが、ネット上で、旅のエッセイの連載を始めました。
移動時間が好きだ 第1回 行くあてはないけど家にはいたくない 幻冬舎plus
pha さんは、日常生活のストレスで感情的に行き詰まると、一人であてもない旅に出かけるのだそうです。
といっても、それは、自分の家から遠く離れた場所までゆっくりと移動して、ネットで調べた適当な場所で夜を明かすというだけの、実にシンプルで地味な旅です。観光名所をまわったり、現地の名物料理を食べたりするわけではないし、山登りやトレッキングのように、自然の中に分け入っていくわけでもありません。
移動・食事・宿泊にあまりカネをかけず、ネットで手に入る情報をうまく使いつつ、自分の行動の自由度は最大にするような旅をしているところは、いわゆるバックパッカーの思考や行動のパターンに似ていますが、pha さんの主な関心は、旅のテクニックを駆使してスマートに行動したりすることよりも、旅に出たいという、自分の中に盛り上がってくる気持ちに素直に付き合いながら、あくまでも自分にとって抵抗のない、自然な成り行きに従って旅をまっとうすることにあるようです。
もちろん、ここではないどこかに行きたいという、ある意味ではありふれた心の衝動に従ってみたところで、ほとんどの場合、私たちの生活や人生に、何らかの劇的な展開が待っているなんてことはないのでしょう。それでも、pha さんが書いているように、日常の場から物理的に距離を置くことによって、これまでの生活をとりあえずリセットし、旅をしている間に、自分自身のことを少しだけ見つめ直すくらいのことはできるのではないでしょうか。
pha さんのシンプルで地味な旅は、予算の制約とか、面倒なこと、やりたくないこと、やっても意味のないことを避けることで行き着いた結果なのだと思いますが、そうやって旅のプロセスから贅肉がはぎ取られたことで、かえって旅の本質みたいなものが浮き彫りになっている気がします。
ふつうの日本人が抱く旅のイメージからすれば、彼のような旅のスタイルは、やや特殊な部類に入るのでしょう。ただ、旅の目的やスタイルは人それぞれだし、旅の正しいやり方みたいなものが存在するわけでもありません。私たちも、ちょっとだけ発想を転換し、実践的な知識やコツをひととおり身につければ、心理的・肉体的・経済的に、もっと気軽に日常生活から飛び出して、pha さんのような風まかせの旅を楽しめるようになるのかもしれません。
JUGEMテーマ:旅行
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