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「旅人」しか信用できない

もうずっと前のことですが、あるときふと、これまで自分がどんな本に影響を受けてきたのか知りたくなって、記憶に残っている作家の名前や本のタイトルを書き出してみたことがありました。

 

そしてすぐに、それが「旅人」と、その作品ばかりだということに気がつきました。

 

子供の頃から旅行記を読むのが好きだったので、旅をテーマにした作品とか、その著者の名を思い浮かべるのは、自分にとってはごく自然なことでしたが、旅行記以外のジャンルの作家についても、かつて長い旅をしていたり、しばらく海外で暮らしたりと、その経歴の中に、旅人だった時期があるのです。

 

たぶん、いろいろな本を読んでいるうちに、作者に長い旅の経験があるかどうかを、何となく嗅ぎ分けるコツみたいなものが自然に身についてしまったのでしょう。旅人の書いた本ばかりを、無意識のうちに偏重してしまうこの傾向は、今でも変わっていません。本だけでなく、ブログや twitter などにしても、特に面白く感じ、読むのを楽しみにしている書き手は、やはり旅人であることがほとんどです。

 

彼らの書く文章には、視野の広さや、自由で柔軟な考え方が窺えるだけでなく、現実的で、地に足のついた生活感があり、適度なユーモアも感じられます。

 

彼らは、文化や生活習慣、あるいは価値観が全く違う人たちと長く接したり、一緒に暮らした経験を通じて、この世界が多様な人々によって成り立っていること、そして、一つのルールや考え方で世の中全体を仕切ることなど不可能だということを、骨身にしみて理解しています。だから、基本的に他者には寛容だし、物事が自分の思い通りにならない経験を重ねてきたせいか、いい意味であきらめがよく、肩の力がほどよく抜けています。

 

また、彼らは好奇心旺盛でフットワークが軽く、どんなときも、できるだけ自分の目で現実を確かめ、自分の頭で判断しようとします。 いわゆる公式見解や、世間の常識みたいなものを鵜呑みにはせず、日本の社会についても、自分のルーツとして深い愛情をもちつつ、同時に、突き放した視点からも自由に考え、語ることができます。ちょっと褒めすぎかもしれませんが……。

 

そして、そういうパーソナリティが反映された本ばかりを好んで読んでいるうちに、いつしか、そういう文章でないと、どうも波長が合わないというか、読んでいて居心地が悪く感じたり、書いてある内容を信用することができなくなってしまったような気がします。

 

でも、自由で寛容な感じの文章が大好きだからといって、それ以外のタイプを拒絶するようになれば、逆に自分自身の内面はどんどん不自由で不寛容になっていくわけで、何とも皮肉というか、おかしなことになってしまいます。さすがにそれではまずいので、立場や価値観の違うさまざまな人々の文章に触れるようには心がけているのですが……。

 

それと、誤解のないようにつけ加えておくと、私は、旅人として海外で長く過ごした人を無条件で信頼する、というわけではありません。

 

例えば、海外経験の結果、特定の国に入れ込みすぎて、その国の利益代表みたいになってしまったり、逆に、他のすべての国が嫌いになり、日本至上主義者になってしまう人もいます。そういう人たちも、旅の経験は豊富なのですが、さすがに、こだわりが強すぎて、ついていけないものを感じてしまいます。

 

あるいは、世界各国の表も裏もいろいろ見てきたせいか、普通の人は知らないような事情に精通し、何だかよく分からない仕事でうまく稼ぎながら、この世界のおいしいところをつまみ食いして、楽しくやっているような人もいます。そのスマートな身のこなしに羨ましさを感じるのは事実ですが、やはり、多少のうさん臭さは隠しきれないものがあるし、実際、表に出せない秘密がある人もいるのかもしれません。

 

ただ、彼らがそうなっていった理由なり経緯なりを考えると、現在の姿だけを見て、彼らを一方的に否定することもできない気はします。もしかすると自分だって、どんな経験をしたかによっては、そして、それをどう受け止めたかによっては、彼らのようになっていたかもしれないし、今後、自分がそうならないという保証もないのですから。

 

自由で寛容な精神を培いつつ、つねに現実感や生活感も失わずにいるためには、居心地のいい世界の外に踏み出して、さまざまな見聞を重ねるだけでなく、その体験とどう向き合っていくかも重要なのでしょう。そして、それがうまくいくかどうかは、実際にやってみなければ分からない、賭けみたいなものなのかもしれません。

 

それはともかく、心の自由な旅人たちに、私が憧れを感じ、彼らの文章や発言に強い影響を受け続けているのは確かですが、それは、世の中の一般的な価値観からは、かなりズレているのだろうと思います。

 

自由とか寛容とか言うとそれなりに聞こえはいいかもしれませんが、世間では、そういう腹の足しにならないことにこだわる人よりも、もっと実際的な人間の方がずっと重んじられるものです。お得な情報や面白いネタを教えてくれる人はもちろん、多くの人に受けのいい言葉やストーリーを紡いでみせる人とか、何か大きな目標に向かって突き進む人の方が、ずっと人気があるのではないでしょうか。

 

それでも、今後、世界全体がますます激しく変わっていくことは間違いないので、上に挙げたような「旅人」的なパーソナリティも、変化を受け入れ、この世界を生き抜いていくうえで、多少の役には立ちそうだし、その意味では、彼らのようなモノの見方や考え方に、ふだんから親しんでおくのも悪くはないのかもしれません。

 

 

JUGEMテーマ:旅行

at 20:36, 浪人, 地上の旅〜旅全般

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