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ボロボロの蔵書

最近は、ほとんど本を読まなくなってしまいましたが、かつては私にも、本を片っ端から読んでいた時期があって、そのころはかなり頻繁に本を買い、部屋には既読・未読の本が積み上がっていました。

 

そうした本の大部分はすでに処分してしまい、いま残っているのは、どうしても手放せなかった数十冊だけです。といっても、それらを大事にしまってあるわけではなく、いい保管場所がなくて、高温多湿の場所にそのまま放置してあるので、かなり本が傷んでしまっています。

 

単行本など、比較的いい紙を使っている本はまだマシなのですが、高校生の頃に買った古い文庫本などは、黄ばみどころか、汚いシミが大量についてしまっているし、コーティングのされていない昔の表紙カバーは、汚れた上に劣化してボロボロになっています。

 

もともと手放すつもりはなかったとはいえ、さすがにそこまで汚くなると、とても古本屋に売れるレベルではないし、親しい人にタダであげようとしても嫌がられるだけでしょう。この先、私が死んだときには、これらの本はリサイクルにさえ回らず、そのまま燃えるゴミとして処分されることになりそうです。

 

とはいえ、私は大切な本がボロボロになってしまったことを、別に後悔しているわけではありません。

 

高温多湿の日本で、紙の本をきれいに保存しようと思うなら、それなりの手間をかけるなり、きちんとした設備を用意しなければなりませんが、初めからそうする意思などなかったし、実際、そのために手間もカネも一切かけていない以上、こうなったのは当然の結果です。

 

それに、本にとって一番大切なのは、書かれている中身だと思います。それをデータとしてどうしても残しておきたいなら、今では簡単に効率よくスキャンする方法があるし、いったんデータを取り込んでしまえば、もう、保管場所やメンテナンスのことで悩むこともありません。そして、そういう作業は、出版社や図書館などの専門の機関なり、熱心な蔵書家の方々が、どこかできちんとやってくれているはずです。それを私たちが自由に閲覧できるようになるかどうかはまた別の問題ですが、少なくとも、私ごときがボロボロの本を後生大事に抱え込まなくても、本の中身がこの世から失われてしまうという心配はないでしょう。

 

むしろ、蔵書の劣化がとことん進み、持ち主以外の人間ならとても手に取りたくないと思うような、ひどい状態になってしまったことで、かえってそれらの本が、これで初めて本当に自分だけのものになったような、ちょっと倒錯した思い入れのようなものさえ感じます。

 

それは、同じように朽ち果てていく運命である自分自身の姿を、そこに重ねてしまうからなのかもしれません。

 

何十年も歳を重ね、身体のあちこちにガタが出てきて、まわりからはよれよれのオッサンにしか見えなくても、そうやってよれよれになるまでのさまざまな出来事を乗り越え、何とか生き抜いてきた自分自身の姿に、むしろより一層の愛着が湧いてくるように、部屋の片隅でゆっくりと朽ちていく本たちもまた、自分と一緒に時間の荒波をくぐり抜けてきた仲間のような気がして、その傷だらけの姿に、深い思いを寄せてしまうのでしょう。

 

すべての人がそう思うわけではないかもしれませんが、少なくとも私は、死んだ後に、自分の身体を保存してほしいとは全く思いません。骨だって、できれば墓になど入れずに、山なり海なりに撒いてもらえるなら、その方がいいと思っています。自分が死ぬ時点で、肉体は生命力を使い果たしてボロボロになっているはずで、それを無理やり残しておく意味はないと思うからです。

 

それと同じで、ボロボロになった蔵書を、誰かに大事に保存してほしいなどとも思いません。だからそれらは、私の死と同時に、ゴミとして処分されることになるか、あるいは、人の手をわずらわせるまでもなく、その前に自分で処分しておく、ということになるのでしょう。

 

もちろんこれは、それぞれの本の内容が、時代を超えて生き残っていくかどうかということとは、まったく関係のない話で、あくまでも、個人の手元にある、印刷されたコピーの一つが消えていく、というだけのことです。

 

大量に印刷されたモノとしての本は、そうやって少しずつ失われていくのが自然なあり方だと思うし、むしろ、一つひとつのコピーが、不自然に保存されたりすることなく、それを愛読した人々と一緒に、あちこちで時間とともに朽ち果てていく方が、いろいろな意味でおさまりがいいような気がします。

 

 

JUGEMテーマ:読書

at 20:35, 浪人, 本の旅〜本と読書

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